声:西山宏太朗(アニメ版)
概要
『逆転裁判3』第2話『盗まれた逆転』に登場。年齢23歳。身長172cm。
現在、世間を騒がせる怪盗「怪人☆仮面マスクの正体は自分である」と名乗り上げ、警察に自首して来た青年。霊媒師一族・綾里家の家宝『倉院の壺』が仮面マスクに盗まれた翌日に出頭し、今の壺の在りかについては「失くしてしまった」と語る。優作曰く数ヶ月前までは毒島黒兵衛が経営する『KB警備会社』の社員だったが、訳あって解雇されてしまい、それ以来、怪盗として暗躍する様になったとの事。
見た目通り、極めて内気で消極的な性格をしており、弱々しさや痛々しさすら感じる程。『人物ファイル』の初期情報でも「どこか痛々しい」と記述されている。その姿は「常に大胆不敵な立ち居振る舞いをする仮面マスク」とは乖離している為、周囲の人々からは長い間「本当に優作は仮面マスクの正体なのか」と疑問視される事となる。常に何かに怯えていて、挙動不審かつ情緒不安定気味。後に担当弁護士に着任した成歩堂龍一には「この人、怪しい人という意味では間違いなく怪人だよな‥‥」と胸中でツッコミを入れられていた。普段は気弱だが自己主張は強い方なので、しばしば我慢し切れずに感情を爆発させては本音を叫び散らす。何事に対しても自信が欠落しているせいで「本当に自分の思考、行動は正しいのか」と頻繁に自問自答に陥る。「疑問を抱くと首を傾げて一人言を呟きながら考え込む癖」を持つ。その際、喋っているだけでも段々と声が小さくなって行き、ついには聞こえなくなってしまう。『3』の攻略本では「一番ハッキリしないのは、自分の話し方だという事に全然気付いていない」と指摘されていた。
この小声化はゲーム画面では「白文字がウインドーの濃灰色に近い黒文字へと変わって行く演出」で表現される。脚本家・巧舟は当初、優作の声が小さくなる事を表現する演出としては「メッセージウインドーの文字を大文字から小文字に変化させて行く事」で表現しようと図った。しかし「それではプレイヤーが台詞を読み難くなる」というスタッフからの忠告を受けて現在の形に落ち着いた。
頼りない23歳の青年だが、驚くべき事に新婚で、しかも妻・天杉希華にメロメロの愛妻家である。妻とは同い年だからか互いを「優作君」「希華ちゃん」と呼んでいる。自分とは正反対に常に活発で積極的、物言いがハッキリしている性格の持ち主で、情けない自分の支えとなってくれる妻・希華を溺愛し頼りにしている。彼女も優作にベタ惚れで、それだけに「気弱な夫が仮面マスクの正体なんて有り得ない」と誰よりも強く信じ込んでいる。更に希華には「きっと優作君は本物の仮面マスクの大ファンで、自己同一化願望が強過ぎる余り、自分を仮面マスクだと勘違いしている」とまで思われている。当初の優作は「僕は仮面マスクだから、この先で罪を償う為にも有罪にして欲しい」との主張に徹していたが、夫の自分の無実を願う妻の働きかけによって、弁護士・成歩堂の依頼者となった。家宝『倉院の壺』を盗んだ犯人を手助けする展開を迎えてしまった事に、綾里一族の出身者にして成歩堂の助手・綾里真宵と綾里春美は不満を漏らした。
通常は殺人事件の裁判を担当している成歩堂だが、今回の初日では窃盗事件の裁判を担当した。今回は「仮面マスクの正体は優作にして『倉院の壺』を盗んだ犯人なのか」が争点となる。初対面の強敵・担当検事ゴドー相手に、辛くも勝訴した成歩堂は「仮面マスクの正体は優作ではなく、彼に罪を着せて利用して来た探偵・星威岳哀牙」だと立証した。しかし閉廷直後、優作には「仮面マスクである哀牙が盗みを働いている間、毒島を解雇された恨みから殺害したのではないか」という新たなる疑惑が浮上。優作は今度は殺人容儀で再逮捕される羽目になる。皮肉な事に成歩堂や希華の「優作は仮面マスクではないと証明する行動」が裏目に出る結果となってしまった。それでも成歩堂は優作の担当弁護士を続投し、殺人においても無罪立証を目指す。ちなみに『倉院の壺』は哀牙の探偵事務所に保管されていた所を希華に奪還されて、本来の所有者に当たる真宵と春美に返還される事となった。
『3』の攻略本によると「狼の皮を被った羊」がデザインのコンセプトとされており、茶色い髪型の両側は羊の角やシナモンロールを連想させる、独特の外巻きの巻き毛となっている。急に感情が爆発する時、巻き毛がバネの如く大いに伸縮し、弱々しい雰囲気や態度は抜けていないまま大声で叫ぶ。ラフスケッチには顔はそのままで、現在よりも羊の角の様な内巻きの巻き毛を生やしたバージョンもあった。帽子と仮面は取り外した状態で、西洋貴族の様な仮面マスクの衣装を身に纏い、その姿は端正な容姿と相まって「気弱な王子様」にも見える。作中では仮面マスクと自分は同一人物と主張したいからか、ずっと怪盗の衣装を着ている。『3』の攻略本では「出来れば私服姿も見たかった!意外と私服も派手だったりして‥‥?」と執筆者にコメントされた。キャラデザイナーによる「優作&仮面マスクの衣装のデザイン」は難航し、当初はアメコミのヒーローやねずみ小僧を元にしたデザインも描かれた。最終的には「『ベルサイユのばら』の貴族風にすれば、優作の線の細さとも嵌まる」という事で現在のデザインに決定した。
名前の由来は「天杉」は「甘過ぎる」、「優作」は「優しい」から。
関連タグ
以下、ネタバレ
仮面に隠した優しい素顔
元警備員の大怪盗
今回の裁判関係者からは終始、正体を疑問視されていた優作だが、彼こそが正真正銘、怪盗「怪人☆仮面マスク」その人である。とても仮面マスクとは同一人物とは思えない気の弱い性分から『3』の攻略本では「正真正銘の怪人☆仮面マスクなのに、只のコスプレ好きの兄さんに見えてしまう優作」と評価された。
事の始まりは妻・希華の極度の浪費家ぶりにある。元から彼女の趣味は「目玉が飛び出る程、高い買い物をする事」で、それは優作との運命の出会いを果たしてからの結婚後も変わらなかった。希華を溺愛する優作は「彼女に自由気ままに買い物をさせてあげたい」と願う余り、幾つもの過ちを犯してしまい、行き着いた先が「怪盗としての暗躍」であった。
数ヶ月前までは『KB警備会社』の優秀な警備員をしていた優作でも、流石に「希華に好き放題させられるだけの金額」を用意する事は不可能だった。そこで彼は「勤務先の機密情報を盗み出し、闇ルートで売り捌くという悪事」を犯してしまう。すぐに社長の毒島には不正行為を知られた優作は、上司からの怒りを買って懲戒免職となった。「希華に資金援助が出来なくなれば、彼女に捨てられてしまう」と恐れる余り、優作は妻には会社を解雇された事も打ち明けられず、手っ取り早く大金を稼ぐ為にと、子供の頃から憧れていた怪盗になる道を選んだ。
本来は気が小さい優作だが「仮面マスクとしての活動中」はある程度は気が大きくなる模様で、高笑いを上げて現場から飛び去る等の大胆な行動にも出ている。本来は消極的な性格であるが、いざと言う時には凄まじい積極性と行動力を発揮し、それが全5回の窃盗を全て成功に導いて来た。自信こそ欠如しているものの、手先が器用で身体能力も非常に高く、警備員としても怪盗としてもハイスペックな人物と言える。『KB警備会社』の勤務時代は若くして警備隊長に抜擢された程で、希華の務めていた銀行の警備の担当者でもあった。ある日、銀行強盗に人質にされた希華を勇気を振り絞って救出し、強い恩義と恋心を覚えた彼女からのアプローチを受けて結婚にまで至った。
前述の通りの経緯で怪盗になるも「優作の単独犯行」は初回のみで、この時に偶然にも事件現場の警備に当たっていた探偵・哀牙に仮面マスクだと知られてからは、彼に犯行計画を教唆されて利用される形で窃盗を重ねて来た。哀牙は「自身を大怪盗との対決を繰り広げる、名探偵に仕立て上げる売名行為&劇場型犯罪」を目的として、優作の犯行に便乗し彼を手駒扱いしていた。犯行は毎回必ず「謎の人物に成り済ました哀牙が、極秘で優作に犯行計画を教授し代行させるという形式」で行われた。盗品は哀牙が闇ルートで売り捌き、売り上げの一部が報酬として優作に譲渡された。そうして犯行を繰り返す内とうとう優作は、その名を世間に轟かす大怪盗になってしまった。警備員時代の知識を活かした天才的なセキュリティ破りの技術、怪盗の衣装からマスク、潜入用の道具まで自作する用意周到さ、如何なる難所にも潜り込む身体能力といった、無駄に高いスペックが思わぬ方向に発揮されてしまった結果であった。
毒島殺害事件の経緯
仮面マスクの2回目の犯行から順風満帆に事を運んでいた哀牙だったが、4回目の犯行で警備を担当していた毒島に「仮面マスク事件の黒幕」だと気付かれてしまう。その上、毒島は「正体を世間に公表されたくなければ、多額の口止め料を支払え」と脅迫にまで及んだ。そこで哀牙は「前述の文章が記述された脅迫状」に宛名が書かれていないのを良い事に、この脅迫状を優作に送り付けて脅迫し、彼を「自分が毒島を殺害する現場」に誘き出して、優作に殺人容儀が掛かる様に仕向ける。
哀牙の計画通り、優作は身を隠す為、帽子と仮面も装着した上で仮面マスクの衣装を着て、殺人現場となった毒島の社長室へと訪れる。この少し前、毒島は既に殺害されて遺体が床に転がっていた。優作は部屋に入った瞬間、哀牙に鈍器で殴打されて気絶し、その隙に哀牙は逃走した。優作曰く「相当なパワー、そしてスピードで殴られたから、仮面マスクの衣装を着ていなかったら死んでいる所だった」との事。数分後に意識を取り戻した優作は、毒島の遺体を発見して錯乱。自分に疑惑が向かない様、衝動的に毒島の遺体を社長室の大型金庫の中に隠して逃亡してしまった。それ故に「毒島の遺体の発見=毒島殺害事件の発覚」には数日間の時間が掛かり、優作は殺害容儀から逃れる為「毒島殺害当時、現場には不在だった」と主張しようと「僕は同時刻『倉院の壺』を盗んでいた仮面マスクの正体」だと自首したのだった。
裁判では優作自身も証人に加わるが、うっかりしていた彼は最終日の尋問に至るまで「事件当時は仮面マスクの衣装だった事実」を言い忘れていた。この時、優作は毒島殺害容儀での裁判に参加し、哀牙は別の法廷で仮面マスク疑惑での裁判に参加していた。真相に辿り着いた成歩堂によって、優作の裁判の証人とされた哀牙は巧妙に立ち回るが、最後は迂闊にも先刻まで誰も知らずにいた「毒島の殺害当時、優作は仮面マスクの格好だった事実」を口にしてしまう。先刻の裁判の参加者を除けば「事件当時の現場に居合わせた者でなければ、知り得ない真実」を知っていた事が露見した為、哀牙の殺人罪は立証されてしまい、彼の「殺人では無罪の窃盗犯として逮捕される事で、刑罰の軽少化を狙う企み」はご破算となった。
無罪放免となった大怪盗
殺人事件の無罪を得る過程で、自首した件について『倉院の壺』窃盗犯ではなく、仮面マスクではないという事で無罪判決を受けた為「一事不再審(現実における一事不再理)」により仮面マスクとして行った過去の窃盗事件は全て無罪扱いとなった。
アニメでは、一事不再審が原因で窃盗罪に問われなくなった説明はカットされており、真宵が「おまけで無罪になった」と言及するのみとなっている。その為、無関与の事件による判決が別の事件にまで影響したことについては遠回しにしか触れられていない。
エンディングの後日談では、希華と2人で新企業『怪人コンサルタント』の起業を話していた。希華が語った活動内容は「街にはびこる怪人たちの大作戦を、華麗にブッ潰す」とのことだが、それに続いて優作が語ったところ「その怪人達に犯行計画を売っている」というマッチポンプであるらしく、社長自ら「一番悪いのって僕達なんじゃ‥‥」と罪悪感に悩まされている旨を吐露した。