声:慶長佑香(アニメ版)
概要
『逆転裁判3』第2話『盗まれた逆転』に登場。年齢23歳。身長166cm。
「怪人☆仮面マスク」と名乗る人物・天杉優作の妻。夫とは同い年の為か、彼を「優作君」と呼び、優作からは「希華ちゃん」と呼ばれている。当然ながら優作とは夫婦として同居しているが、夫の私室は「仮面マスク&怪盗グッズで溢れ返る怪しさ満点の内装」なのを全然気にしていない。作中では優作の私室の名前が『怪人のアジト』になっているのも、どこ吹く風である。優作の「僕こそが仮面マスクの正体という主張」を全くもって信用せず「優作君は気弱な性格だから、怪盗なんて大それた事が出来る訳ない。本当は只の仮面マスクのファンで、行き過ぎた憧れから自分を仮面マスクだと思い込んでいるだけ」と考えている。前述の夫の私室も「仮面マスクの大ファンで、関連グッズを買い漁った結果」と見て、優作は仮面マスクではない証左の1つとして扱う。
優作自身が「僕は本物の仮面マスクだから有罪にして欲しい」と願い出る反面、希華は夫を一途に信頼するが故に「探偵・星威岳哀牙の陰謀で自分は仮面マスクだと洗脳を受けて、利用されている夫を救ってやって欲しい」と弁護士・成歩堂龍一に優作の弁護を依頼する。当初は有罪判決を欲する余り、成歩堂からの弁護の申し込みも頑なに拒絶していた優作だったが、妻からの手紙で事情を知ると、成歩堂の依頼人となる事を受け入れた。
明朗快活で気さくでサッパリした性格の持ち主。自分から見て問題のある相手でなければ、初対面の相手とも即座に打ち解けられる位、人懐っこい。この為に3歳も年上で、社会的地位も自分より遥かに高い成歩堂を「龍一君」と呼ぶ。希華としては友達感覚だからこその愛称だが「彼女が気安く成歩堂を君付けして、親密になっている様子」を見ていた助手・綾里春美には「なるほど君が人様の奥方に手を出そうとしている」と誤解されてしまう。それ故に今回の事件で成歩堂は、いつにも増して春美からの激しい折檻を受けて苦労する羽目になった。
しばしば「曲がった事や卑怯な事が大嫌い」と口にするが、その言葉に反して「希華の倫理観や価値観」には、どこかズレた面が散見される。「スリルが大好きで怖いもの知らずな性分」を持ち、その厄介な性質を常に優先しての思考や行動に走る余り、一般的な常識や道徳観を逸脱してしまう傾向にある。「目玉が飛び出る程、高い買い物をする&心臓が飛び出す程、高い速度でバイクを飛ばすのが大好き」と公言する程、この2つの趣味に熱中している。これらの描写からも「享楽主義を何よりも優先する余り、他人を省みない希華の本質」が窺える。バイクで速度違反レベルの爆走と平行して、パトカーで追跡して来た警察とのカーチェイスをも楽しんだり、天杉家は一般家庭なのに経済状況が逼迫する程、高級品を買い漁る事まで好む。
極度の愛妻家の優作曰く「僕の動機は妻の願いなら何でも叶えてあげたいから、自分が怪盗をして荒稼ぎした大金を彼女に贈って、心おきなく買い物を楽しんで貰いたかった」との事。この為に優作は仮面マスク事件以前、毒島黒兵衛が社長を務める『KB警備会社』に勤務していた頃、愛妻に貢ぐ大金欲しさに会社の情報を闇ルートで売り捌き、数ヶ月前に悪事が露呈した際に解雇された。「浪費出来ない家庭環境になったと知られたら、妻に見捨てられるのではないか」と危機感を抱く優作は未だに解雇された事も言えずに、今も尚『KB警備会社』に勤務している体を装っている。彼のこうした背景も怪盗活動の一因と化した模様。ちなみに希華本人は「現在の職業に関する描写」が皆無な辺り、数年前に夫と結婚後、退職してからは専業主婦となった様だ。贅沢をしたいなら自分も働いた方が効率が良いのだが、それをしないのは妻を溺愛する余り「少しも苦労をさせたくない」と願う優作が制止しているのかもしれない。
優作の法廷初日で夫に濡れ衣を着せようとする姿を目撃して以来、哀牙を嫌悪しており「夫を騙して、野望実現の手駒として利用する黒幕」と推測している。希華に『探偵パート』で哀牙の『人物ファイル』を突き付けると「私、こういう奴が一番嫌いなんだよ」と一蹴する。哀牙への反応からして、希華の倫理観では「私利私欲の為だけに、他人を騙したり脅したりして利用する、卑怯な奴らが一番許せないタイプの悪人という事」なのだろう。
大のバイク愛好家で、いつもライダースーツ姿という点は『2』に登場した人気俳優・王都楼真悟と同じだが、彼のスーツが紅白なのに対し、希華は襟の白いファーを除いて全身が真紅のスーツとなっている。またプロのレーサーとしても活躍し、バイク趣味を仕事にも有効活用している王都楼とは異なり、希華はあくまでも個人的な趣味に留めており、たまに道路を激走する事が習慣化しているだけである。
健康的な色香を放つ巨乳と脚線美を兼ね備えた美女で、抜群のスタイルが際立つライダースーツに身を包む。バイク趣味を強調するゴーグルを頭に装備し、大型のタイヤのイヤリングで耳を飾る。髪型は緩いウェーブの薄茶色のセミロング。『逆転裁判ファンブック』では「胸元が眩しい美人妻」と美貌を称賛されていた。
夫を愛する美人妻の活躍
天杉夫婦の馴れ初め
妻にメロメロの優作だが、希華の方も夫にベタ惚れである。この正反対の性格ながらも、仲睦まじい夫婦の出会いは何ともドラマチックであった。数年前、希華は銀行員として働いていたが、職場の銀行に強盗コンビが乱入する事件が発生する。誰も彼もが強盗相手に戦々恐々とする中、正義感の強い希華は面と向かって強盗コンビを批判し犯行を食い止めようとする。反抗して来た彼女に怒りを覚えた強盗コンビは、希華に銃を突き付けて人質に取ってしまう。この時ばかりは普段は肝の座った彼女も、本気で恐怖を感じて身動きが取れない状態となった。そこへ唯一人で希華を救出するべく強盗コンビに勇敢に立ち向かったのが、当時は『KB警備会社』から派遣されて、希華の勤務先の警備に当たっていた優作であった。彼は恐怖心から泣きじゃくりながらも、両手を振り回し強盗コンビに特攻を仕掛けた。その結果、希華の救出に成功した優作は彼女の心を掴み、希華からの強烈なアプローチを受けて交際を開始、そして結婚にまで至った。今でも希華は「命の恩人」としても夫を強く慕っており、優作も頼りない自分を常に支えてくれる妻を「心強い味方」としても信頼している。『3』の攻略本では「頼りなさそうな優作には、希華位にハッキリしたタイプの奥さんが合っているのかも」とコメントされていた。
夫を救いに東奔西走する妻
希華は「仮面マスク事件」を通じて、成歩堂と助手の綾里真宵と親しくなった。それに加えて「今度は私が優作君を助ける番なんだから、私にも何か出来る事はないか」と考えた結果、哀牙の探偵事務所から『倉院の壺』を奪還して法廷に乱入。壺を本来の持ち主に当たる真宵に返還し、自分が「この壺は哀牙の事務所にあった」と証言する事で、優作の仮面マスク疑惑を晴らそうとした。この時、今まで仮面マスクに盗まれていた壺は、ようやく綾里家の人々の元へ戻って来た。「言ったでしょ?今度は私が助けてあげるって」と優しく語り掛ける妻に、夫は「希華ちゃーん!最高だー!」と叫んで歓喜した。
しかし、この裁判の担当検事ゴドーには「犯罪者である夫の共犯者ではないか」「夫・優作を救いたい余り、何かしら裏工作をしているのか」と行動や動機を怪しまれてしまう。この時ばかりは普段は肝っ玉の強い希華も大いに動揺し、成歩堂に救いを求めた。結果的に優作の「仮面マスク疑惑の払拭」に成功し無罪判決が下されるも、毒島の遺体が発見されると事態は急変する。「優作は元上司の毒島を解雇された恨みから殺害した」との容疑が浮上し再逮捕されてしまった。良かれと思っての行いが「不測の事態と更なる不幸」を招いた事に希華は大きなショックを受けた。ちなみに、この時の裁判で「夫に罪を着せようとする動き」を見せた哀牙とゴドーを嫌う様になった。
円満夫婦の相互理解
最終日の法廷には希華も傍聴人として参加し、事件の真相と解決を見届けた。彼女の推測通り、優作は哀牙に脅迫を受けて良い様に利用されていただけに、哀牙こそが黒幕だと立証された事で溜飲を下げた。ここに来て、ようやく夫の優作は本物の仮面マスクであると自覚し、彼が会社を解雇されていた事も初めて知った。閉廷後「僕は怪盗という卑怯な窃盗犯として、妻に嫌われて捨てられるかもしれない」と落胆していた優作だったが、希華からの反応は予想外のものであった。彼女は浪費癖の激しい自分を満足させる為だけに、これまで積み重ねて来た夫の努力を全面的に肯定し、妻の自分を愛するが故に過ちを犯した、優作を労って感謝の言葉を述べた。そして仮面マスクの犯行に対しては「正々堂々と挑戦状まで送り付けた上で、警察とも戦う生活を送っているだなんて格好良い」と称賛した。「自分の全てを受け入れて愛してくれる愛妻の姿」に胸打たれた優作は今まで抱えていた苦悩から解放されて、天杉夫婦は真の和解を迎えたのだった。
新事業『怪人コンサルタント』
『3』のエンディングでは、天杉夫婦が新事業『怪人コンサルタント』を創設し夫・優作は社長、妻・希華は秘書に就任して働いている事が語られた。彼女の話によると「正義の味方に転身した仮面マスクが、街に蔓延る悪の怪人達の計画を華麗にぶっ潰して回る企業」との事。仮面マスクの決め台詞は「やめて下さーーーい!!」らしい。希華はスリリングな毎日が過ごせる上、程良く稼げる様になった新生活にご満悦であった。妻とは対照的に優作の方は若干の罪悪感を覚えている様で、訪問者に「怪人達に計画を売って回っているのも僕達なんですけどね。良いのかな、これ。一番悪いの僕達なんじゃ‥‥」と自己暴露し自問自答に陥った。完全なるマッチポンプ事業なので無理もない。
『逆転検事2』第3話『受け継がれし逆転』には、天杉夫婦がモブとして再登場する。夫婦一緒に『十二星座美術館』の『十二星座の彫刻コーナー』を訪れ、盗めば話題を呼ぶであろう品々を物色していた。こちらでも希華が乗り気なのに対し、優作は罪悪感から戸惑っている様子を見せた。今となっては夫よりも妻の方が遥かに意欲的である。
余談
名前の由来
『3』の攻略本によると希華の名前は、脚本家・巧舟の幼馴染に「まれかという名前の持ち主」がいたので使わせて貰ったとの事。同じく「巧の知人が名前の由来となっているキャラクター」には『タチミ・サーカス』の団長・立見七百人がいる。
キャラクターデザイン
新米弁護士時代の綾里千尋のラフスケッチに「バイクスーツ姿の案」があったので、それを流用してアレンジを加えた事で完成させた。初期設定では「胸のジッパーが喋りながら落ちて来る設定」だったが、時間や用量の都合で無くなった。