削除
プロフィール
人物
京都地検に勤める若き検事。
ストーリー終盤に登場したが、「メロ&ニアvsキラ」の雌雄を決するキーパーソンとなった。
幼い頃から正義感が強く、ひたむきにいじめっ子や不良のような「悪」と戦い続けてきたが、中学生になると次第にそれが報われなくなっていき、それによって「悪はこの世から完全に「削除」されるべき」だと考えるようになる。
さらには母親からもそうした「正義の行為」を否定されてしまい、魅上本人もそれによって心の中で母親を否定してしまう(もっとも母親はそれによって息子が傷つくことを心配してのことではあったのだが……)。
そんな時、「偶然」当時対立していた4人の「悪」と母親が交通事故で同時に死亡し、それによって結果的に周囲の人達が救われる光景を目の当たりにする。
その後も魅上が時を経て成長していくにつれ、「削除」を願った「悪」たちが「偶然」「削除」されるという出来事が頻発する(一部ではあまりに“タイムリー過ぎる”悪の削除や、デスノートの使用者がその所有権を放棄するとノートに関する記憶を失う決まり、並びにリュークが月に対して語った「(月が使うより前に)デスノートが人間界に幾つか出回った事がある」という発言から、「実は月より以前にデスノートを手にした元所有者によるものなのでは?」と囁かれている)。
これらの出来事はあくまでも「偶然」に過ぎなかったのだが、これによって魅上の「悪はこの世から完全に「削除」されるべき」という思想は過激化していった。
検事になったのも、自身の正義感を自認した上で、悪を裁くことを天職と感じたからである。
そして検事就任時にキラ事件が発生し、自分に起こったこれまでの出来事が「偶然」ではなく「神の裁き」であったと確信する。
以降はキラを「神」と呼んで極端に心酔し、崇拝・信奉すると同時に、自身も検事として出来る限りの時間と労力を費やしていった。
やがてキラである月にそのことを見込まれ、海砂の所有権放棄後にデスノートを与えられ、新たなノートの所有者(ニア曰く「Xキラ(=X-KIRA)」)となる。
キラへの崇拝ぶりは最早「狂信者」とさえ呼べるレベルであり、生来の正義感と先鋭化した思想から、裁きの基準は月以上に厳しく、軽度の犯罪者や社会貢献を怠る者も含め、少しでも秩序を乱すと判断した人間を許さないという旨の言葉を、高田清美を通しキラの言葉として発表するほどだった。月もその意見には同意しているものの、それを実行するにはまだ早過ぎるとし、罪によっては前科すら許さないという発信に対しては、キラの存在は犯罪の抑止力であって恐怖を生むことではないと、魅上の罪を許さないやり方を完全に否定している。
この考えの違いは月がデスノートによって不本意に殺人を行ってしまった結果止まれなくなってしまった人間であるのに対して、魅上は根っこの本心からこういった価値観の持ち主である事が原因なのであろう。『ブレーキが壊れてしまった人間』と『元からブレーキが付いていない人間』の違いともいう。
そもそも、魅上にはキラに対する信奉の更に上に「他者に対する非寛容」が存在しており、『秩序』に異常なまでに拘るのは「不真面目、非生産的なもの」に対する憎悪の裏返しでしかない節がある。また、その一方で人間社会における「脱法」=『無秩序』そのものなデスノートの存在とその使用には何ら躊躇いが無い。
要するに基本の感性が一般社会の『秩序』に則ってこそいるというだけで、ものの判断そのものや見通しについては物凄く自分に甘く、本質的には他人全てを見下している(これがニアにトリックを看破される切っ掛けにもなっている)。
能力の高さ故に錯覚しがちだが、そもそも過去に彼の正義が周囲から否定された直接の原因が「あまりにも考えなしの馬鹿正直な行動」にある点も考えれば、彼もまたニアが高田清美をそう評したのと同様に『頭のいい馬鹿』だったのかもしれない。
契約してから4年間、毎週日曜と木曜の21時から22時半まで必ずスポーツジムに通っていたり、25日には必ず銀行に行くというように日々のルーティーンが決まっており、仕事で帰宅時間が多少異なることがある程度で、毎日判で押したような生活をしている。
潔癖症なところもあるため、顕微鏡でデスノートをチェックする姿が几帳面な性格の現れであるかのように思われがちだが、これは月からノートのすり替えを確認するように指示されたための行動である。
最期
原作・アニメ・ドラマ版で最期が非常に異なるキャラの一人。
原作
ニアに追い詰められると「そんな奴は知らない」と言ってみせたり、窮地に陥ると手のひらを返すように拘束されている自分に助けを求めたりと、身勝手な行動を取る月の姿に自分の信じていた神=月でないことを悟り、自分をこんな目に遭わせる月は「アンタなんか神じゃない」「クズだ」と罵倒し月と決別する。
その後、投獄され10日後の2010年2月7日に獄中で発狂死したとされている。その不自然な最期に、松田は「(魅上がノートのすり替えを疑いもしなかったことを含め)ニアがデスノートで操って殺害した」疑惑を持ったが、ノートは処分されてしまったため真相は藪の中である。
(この推理に対しては「『松田自身が月に好意を持っているが故に無自覚に月の肩を持つような推理をしている』と伊出に指摘されている」、「元から歪んだ正義観の持ち主である魅上が、罪状不明の罪で留置場に10日間も放り込まれて精神に異常をきたさないとは考えにくい」、「(メタ視点であるが)『DEATH NOTE』において明確にノートを用いて殺人を行った人間はその目的が故意・過失を問わず最終的には例外なく哀れな末路を迎えており、ノートを使っていたのならニアだけが健在なのは作品的にも不自然」と、反証となる指摘も多数存在する。)
アニメ
月を罵倒せず、彼のあまりの無様な姿に泣き崩れた挙句、持っていたペンで心臓を突き刺し自殺。松田の銃撃で深手を負った月は、SPKや捜査本部メンバーが魅上の自殺に気を取られている隙に逃亡を図った(この時、半ば放心状態で、魅上の自殺に一人無関心だった松田は、月の逃亡を最初に目の当たりにした)。
胸から大量出血し叫びながら果てたため、安らかに果てた月とは対照的に衝撃的な最期を遂げた。見方によっては一番残酷な死に方。
実写ドラマ
月への忠誠心を捨てなかったが、捜査本部メンバーを排除しようと「神の邪魔をするなアァ!」と叫んでYB倉庫に放火するという暴挙に及び、あろうことか月に物理的な意味でトドメを刺してしまった。その後、彼自身は警察に拘束されるもノートが燃えたことによりキラとしての記憶を失った。その後については一切語られていないが、おそらく放火の罪だけ立件されたと思われる。
ちなみにシリーズで唯一生還した結末である。
実写映画版
デスノートLNWで初登場。ただし容姿は俳優の都合上、原作と大きく異なっている。
本作の1年前から行方不明となっていたが、終盤でその真相が明かされる。
月の命を受け、月の息子の後見人として彼を育てていたが、月の血を受け継いだ息子の優れた頭脳と冷酷さを、彼の裁きを通して目にするうちに、次は自分が殺されるのではないかと恐怖し、精神的に追い詰められていく。やがてデスノートでその息子を殺害するが、直後に「ある人物」に目撃されてしまう。慌てて死神の目を使い、ノートにその人物の名前を書こうとするが、逆に射殺される。その後、遺体は息子と共に隠滅され、誰にも発見されることはなかった。
自らの全能感に酔った息子の傲慢さと、強い忠誠心をもってしても抑えられなかった魅上の不信が招いた結果ではあるが、二人もまたデスノートを使用したことによって狂わされた被害者と言える。