「全員戻れ やり直しだ」
※本記事には単行本最新刊27巻未収録のネタバレが含まれています。 |
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概要
羂索によって術式を覚醒させられた現代人の呪術師で、職業は弁護士。年齢36歳。
人物
外見
極端な三白眼とオールバックが特徴。服装は黒色のスーツに弁護士バッジといったいかにも弁護士らしい姿。
基本的には表情の変化に乏しいが、いざとなれば表情豊か。特に激昂した際の表情には凄みがある。虎杖の前では冗談をとばしながらニヒルな笑みを浮かべる一幕もある。
人物像
59期盛岡修習を経て、現在は岩手弁護士会に所属している弁護士。
T大法学部受験、法科大学院導入前の旧司法試験など、様々な難関試験をストレートで通過しており、「天才」と称されるほど優秀な人物。
どこか冷めた雰囲気を漂わせているが、正義感の強い性格で、法の女神の像が公平さのために目を閉じていることに対し、「私だけは目を開けていたい」と語る、弱者を守ろうとする精神の持ち主。
呪術師としても術式の覚醒から完全な独学で、その上たった12日間で術式の解明から呪力による身体強化を会得して後述の戦闘スタイルを確立した挙げ句、1級呪術師クラスの戦闘能力にまで成長したまぎれもない天才である。覚醒タイプの術師に期待していなかった羂索が唯一の例外として彼を挙げており、後に宿儺にも一目置かれることになる。大学受験から旧司法試験までストレートで合格するなど勉学においても才を発揮した多才な人物であるが、作中では「呪術師としての才能こそが最も輝く才能の原石だった」と評されている。
本人曰く「30半ばを超えてグレてしまった」とのこと。生真面目だった性格から、スーツのまま風呂に浸かる、悪質な弁護士風のジョークを飛ばすなどといった奇妙な言動を繰り返すようになる。
呪術の存在を知り、術式の力を確認したことで、『告訴も公訴も必要とせず、真偽を争うこともしない、総則(ルール)を犯した者が物理法則の様に罰せられる』死滅回游に可能性を感じ、虎杖との交渉を拒否して戦闘に突入する。
過去
強い正義感を持った、弁護士の鑑とも言える人物だった。司法修習生時代には指導教官から裁判官任官を勧められたものの、出世には興味がないという理由で断っていた。(ちなみに現実においても、裁判所での修習時点において裁判所側が「これは」と目をつけた人物に声をかけるという青田買い的リクルートがされることがあり、このことからも日車が飛び抜けて優秀であったことが見て取れる。)
関係者に口裏を合わせられて弁護に失敗したり、それによって被告人に逆恨みされたりした事もあるが、それでも己の信念と正義を貫き続けていた。
そんな中、岩手県盛岡市で発生した強盗殺人事件の容疑者・大江圭太の弁護を担当する事になる。警官の職務質問中での逃亡や自宅で犯行に使われた刃物が見つかりほぼクロの状況だったが、彼が不当に聴取を受けたトラウマや彼の働いていたNPO法人のグレーな状況から自らの信念の元彼の無罪を信じ、一審では無罪を勝ち取っていた。
だが、大江の犯行と決めてかかる世論は日車をバッシング。そればかりか検察も、新たな証拠もなしに控訴審を押し切り、大江の無期懲役が確定してしまう。十分な証拠ではなく、犯人と決めつける意志が優先された結果だった。
(何故私を その目で見る)
自分が勝ち取った無罪に泣いて喜んでいた様子から一転し、かつての被告人のように、「裏切られた」「嘘つき」とも言わんばかりの視線を向ける大江。日車は己の無力さや、保身に走る裁判所に対し、積もり積もった怒りと絶望を爆発させる。これに呼応するように、彼の術式が発現───裁判の「やり直し」を行った。
その後はコロニー侵入前に数多くの呪霊との戦闘を重ねていく。泳者として死滅回游に参加してからは、襲ってきた他の泳者を返り討ちにする中で総計102ポイントまで取得し、全国の結界に2人しかいない100点保持者の1人にまでなる。
能力
後述する領域展開がデフォルトで備わった術式を持つ。最初に領域を展開し、ペナルティによって相手を弱体化させてから日車が直接的に追撃を加えるのが基本戦法。その術式の特性からか、領域展開後の術式の焼き付きはみられず、領域展開直後から自在に術式を発動できる。
- ガベル(仮称)
日車が手に持つ木槌。これ自体が術式の一種であり、領域展開を発動及び終了させるトリガーにもなっている。武器としても使用され、自在に出現させたり消したり巨大化させたりすることができる。
ガベルそのものが持つ効果は単純だが、日車が直接戦う時には、敵対者は誅伏賜死によって術式と呪力操作を奪われていることが多い上、彼の呪術師としてのセンスによって変幻自在な攻撃を行うことができる。
また、ジャッジマンが最も重い罰である「没収」を付加した「死刑」を下すと、斬られた者を例外なく死に至らしめる「処刑人の剣」に変化する。
- 式神「ジャッジマン」
「正義の女神は法の下の平等のために目を塞ぎ 人々は保身のためならあらゆることに目を瞑る」
「そんな中縋り付いてきた手を振り払わない様に 私だけは目を開けていたい」
「正義の女神テミス」を彷彿とさせる、天秤そのものの姿をした式神。日車の台詞とは対照的に、目を閉じて、まぶたを縫い付けられているのが特徴。
この式神は日車にも相手にも味方しない完全な中立であり、「裁判官」または日車の言う「法の女神」を象徴した存在。
それが目を閉じているだけでなく完全に縫い付けられているというところに、日車の裁判に対する絶望した認識を見て取れる。
領域内の相手(被告)に疑いを述べる際も、無表情で感情の起伏を全く見せないが、重罪人に「死刑」を宣告する際には歯を一瞬食いしばって憤怒の表情を見せる。この時は縫い付けられているまぶたを見開くが、その眼窩には何も入っていないように見える。
領域展開
誅伏賜死(ちゅうぶくしし)
敵対者と自分を取り囲む様にギロチン台が立ち並ぶ法廷(領域)。これまで登場した領域のように掌印を結ぶのではなく、日車がガベルを打ち鳴らすことで発動する。
領域に宿る術式効果は、「刑事裁判を簡易的に再現し、その判決によって対象に罰(ペナルティ)を科す」というもの。
法廷内では 一切の暴力行為が禁止され(ただし言葉の暴力を除く)、日車の式神「ジャッジマン」を裁判官として下記の流れで擬似的な裁判を行う。
術式名称のうち「誅伏」とは「罪を責めて服従させること」を意味する。名称全体の意味としては「罪を責めて認めさせることで死を賜る」と言ったところか。尤も、後述の通りこの領域自体には敵を直接死に追いやる効果(いわゆる「必殺」効果)は無い。
- ①式神「ジャッジマン」は、領域内の者の全てを知っている。その中から今まで相手が犯して来た罪状のひとつを両者に提示(あくまでこの罪状は候補であり、実際には無罪となるべき罪状である場合もある)。その罪にかかわる『証拠』(この内容のみ日車は提出された時点で把握)を日車に提出する。
- ②罪状について相手が陳述。「黙秘」、「自白」、虚偽陳述を含む「否認」のうちからいずれかを行う。「自白」により罪を認めた場合は、③の日車の反論はスキップされて④へ移行する。
- ③その後、公表された証拠を踏まえて日車が反論を行う。ガベルを打ち鳴らすことで④に移行。
- ④「ジャッジマン」が2人の主張と六法のみに基づいて判決を下し、「有罪」となればその内容に応じて相手にペナルティが科せられる。
(判例……未成年でありながらパチンコ店に客として入店した虎杖悠仁は建造物侵入罪で有罪判決を下される。その結果、呪力の発動を制限されてしまった)
- ⑤相手は罪を認めない限り、2回まで裁判のやり直しを請求できる。この請求は日車にも「ジャッジマン」にも拒否できず、請求された時点で領域を解除していても自動的に再び展開される。だが、裁判の内容は前回の罪状について再び争うのではなく、全く別の罪状が裁かれることになる。やり直しの回数が2回なのは、現実の裁判でも控訴・上告の2回のやり直しが可能なことに準えているためだろう。
没収のペナルティは「一時的な術式の使用不可」であり、術式を持たない相手に対しては呪力の制限に変わる。裁判対象が呪具を携帯している場合は、呪具が没収される。また術式と呪具の双方を持っている場合は呪具が優先して没収される。(実際の法廷でも凶器は持ち込めないという点を反映しているのだろう)
(日車本人は相手の術式の有無による罰の変化までは把握できず、戦闘の状況から推察している。ちなみに『没収』をくらった術師は勘が鈍ることで基礎的な呪力操作にも支障をきたす模様)
防犯カメラの写真など、現実の裁判に則した形で証拠が提出されるが罪を確定する物ではなく、むしろ重要なのは罪状に対する主張の方。
虎杖のパチンコ店入店の場合は、争点が「マジベガスというパチンコ店に客として入店したかどうか」であり、証拠が「入店したとされる同日に古物商(換金所)で換金しているところの写真」だったため、「そんな店は知らない」と主張すればマジベガスに客として入店したことは証明できず無罪になっている。
通常の裁判であれば、「いやマジベガス以外には入ってるんだろ、どのパチンコ店だって未成年入店禁止だぞ」と結局有罪になったり、再調査が行われるなどして「あの換金所はマジベガスしか使っていない」と判明すれば有罪となるが、"弁論は一度"なので被告を否定しきれなかった時点で関係がない(尤も未成年のパチンコ店への入店、プレイ程度で本当に刑罰を受けることはまずないが)。
下手な陳述は命取りだが、反論する日車は現役の弁護士であり、法律に詳しくなければ圧倒的に不利である。
虎杖もうっかり「トイレを借りに入っただけ」と入ったことは認めてしまったため、前述の証拠と併せて「入ったことを認めており、この証拠がある以上トイレ云々に信憑性はない」として有罪にされている。
現在の領域に見られる「必中必殺」のうち、「必殺」の部分を省いた「必中」のみの古代の領域展開に近い領域である、と虎杖は予想していた。しかし、実際には領域がデフォルトで備わった領域展開ありきの生得術式。
術式そのもので攻撃できないことから「必中」効果のみ・術式自体が殺傷力を持たない・ルールの説明の3つの縛りで成り立っているとも予想できる。
補足
この領域展開は刑事裁判の形式となっているものの、対戦相手(被告人)、証拠を踏まえて反論する日車(検察官)、判決を下すジャッジマン(判事)の三者だけで行われる。これは弁護士だけがいない状態であり、刑事裁判としての形は破綻している。
また、被告人である対戦相手がペナルティを回避するには、提出された証拠が何か分からないまま百戦錬磨の法律家である日車からの反論を許さず、尚且つジャッジマンから無罪を勝ち取らないといけないという無理難題を押し付けられる状態となる。
よほど法律への知識や弁論能力に長けていなければ、領域に引きずり込まれた段階でほぼ事実上の有罪が確定してしまう。
これでは対戦相手が不憫だが、日本の刑事裁判の有罪率99.9%のメタファーとも言えるものである。(国庫から無尽蔵に財と人的リソースを割いて面子をかけて押し切ってくる検察(日車)に対し、限られたリソースでなんとかしなければならない弁護士(被告人=対戦相手)という司法の不平等の表れという考察もある。ただ、日本では「確実に有罪とできる」と判断された場合しか起訴されないので、事件全体の4割しか起訴されていない、それ故の逆転不可能さなのである。)
ただし、虎杖は「これだけの能力なのだから術者にも不利な要素がある」と推測した上で第二審の存在に気づき、実際に第二審では虎杖が無罪を勝ち取ることは(弁論するだけなら)容易だったことから、もしかすると被告に有利な第二審を条件に入れるという縛りで第一審の検察に有利な裁判体系が成り立っているのかもしれない。
また、パチンコ店ならゴト(磁石や画面の殴打などの振動によって玉を操作する不正)行為の防止及び摘発のため、通路にある程度の死角はあれど「プレイ中の全客」が必ず画角に入るように複数監視カメラがセットされているはずなので、そちらを使えば「何と弁明しようが有罪」に出来たことを考えるとそういった「弁明による罪状逃れが不可能な決定的証拠は使用しない」縛りも存在すると考察できる。
弁護士という職業に由来した術式及び領域展開ではあるが、日車自身は相手の陳述を証拠をもって反論するため、検察官に近い立場。司法修習生時代に裁判官への転向を打診されていた過去があり、弁護士や検察官よりも判事向きと思われていたようだ。
人外魔境新宿決戦のネタバレ注意
- 領域展延
かつての姿を取り戻した宿儺によって窮地に立たされる中成功させ、宿儺の斬撃を中和、軽減した。その呪術師としての才能が五条悟に並ぶものである事を宿儺に魅せつけた。
領域展延は日下部篤也が「できるわけねー」と称する技術である(後に彼が1級最強候補に挙げられること、その簡易領域の技量の高さが明かされる)。これまで判明している使い手は特級クラスの猛者ばかり。しかも直前の五条対宿儺時に日下部の解説を聞いて初めて展延を知ったような描写がある。つまり彼は、初見の高等技術を知った直後に土壇場で成功させたのだ(聞いた時点で感覚としては理解できたらしい)。
特に宿儺の目を引いたのが、展延を挿んだ後に術式効果を再開して処刑人の剣の消滅を回避した点である。宿儺も同じことをした際には細心の注意を払っており、「限りなく俺に近いレベルで術式を運用している」と評した。
こちらも宿儺に追い詰められる中習得し、切断された右腕を修復した。
人間の場合反転術式の使い手でも欠損した四肢を修復することは困難であり、これまで描写があった者は特殊な例を含めても一握りである。
- 空気の面を捉える技術(習得目前)
単行本28巻の補足で判明。
完全なフィジカルギフテッドや宿儺は空気の面を捉えることにより空中での移動を可能としており、特に宿儺は一瞬の呪力放出と併用している。
日車は木槌を鳴らす際に空気の面に呪力を当てており、空中での移動を習得する目前だった。
余談
- 点数の端数(102ポイント)は非術師を2人殺しているため(術師は5ポイント、非術師は1ポイント)。大江の二審を担当した裁判官と判事のことだと日車自身は認識しているようだが、日車が主戦場にしていたのは東京第1結界であり(当初のルールでは結界の出入りは自由にできない)、裁判が東北にあるいずれかの結界内で行われていたとも考えにくい(裁判官と判事が非術師の泳者とも考えにくい)ため、どのような辻褄で2点が追加されたのかは実際のところ不明である。
- スーツ姿のオールバックから、あの逆転弁護士を連想する読者もいた(どちらも顔芸に定評あり)。
- 劇中に登場した、震災の復興金目当てで運営実態が怪しいNPO法人は「大雪りばぁねっと。」事件など実際に現実で発生した事例である。原作者の芥見下々氏が被災地となった岩手出身のため地元エピソードともいえる。
- 登場初期は単なる危険人物と見なされていたが、弁護士としての葛藤など丁寧な掘り下げがあってからは魅力的なキャラクターとして話題になる。領域ありきの術式・超火力ではない結界術など、単なる強キャラとしてだけではなく物語の設定においての幅や解釈を広げ、今後登場するであろう様々な術式・能力の読者にたいしての『慣らし』として重要な役割も担っている。
- リアルな掘り下げによる魅力的な性格、短期間で1級クラスにまで成った呪術師としてのセンス、精神を反映した術式、頭脳戦や肉弾戦でも活躍できるポテンシャルなど、単発キャラにしてはあまりにも恵まれているとして再登場を期待する読者も多い。
- 18巻の幕間に、彼のパラリーガルだった清水が、猫(おそらく大江が飼っていた猫)にエサをやる場面が描かれている。彼女は無事に生還したのだろう。とはいえ、涙を流した跡が顔にはあり、上司である日車が凶行に及んだことに多少なりとも心を痛めているようである。
- 日車が身に付けている弁護士バッジには向日葵と秤がデザインされており、それぞれ正義と自由、公正と平等を意味する。苗字の「日車」も向日葵の別名になっている。
- ちなみに、弁護士と相対する検事にもバッジが存在し、そちらは紅い旭日模様の菊がモチーフ、その見た目が霜と日差しを組み合わせたものに見えることから「秋霜烈日」(秋に降りる霜、夏の厳しい日差しの様に極めて厳かであることを意味する)をも意味するようになっており、この場合「罪に対して厳しい罰を与える存在である」という意味になる。
- 日車の術式における立ち位置や、その罰の厳しさから彼の気質はどちらかといえば虎杖が独白していたように「検事」「検察」の方が近かったのではないかと思われる。
- ちなみに、日本の法廷ではガベルは使用されない。日本においてガベルが使用されるのは参議院である。
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堕ちた弁護士が見た「新たな世界」(ネタバレ注意)
術式が裁判を再現した能力である事に気づいた虎杖は、やり直しを宣言して二審に挑む。だが、ジャッジマンが次に提示した罪は渋谷事変における宿儺の大量殺人に対するものだった。
その罪を虎杖は、
「あぁ 俺が殺した これは嘘でも否定でもない」
と真っ直ぐな目で認めた。
驚愕する日車とは裏腹に、ジャッジマンは容赦なく死刑(デスペナルティ)の判決を下す。
ガベルは「処刑人の剣」へと変化し、呪力を奪われたままの虎杖との戦いが再開する。
人は弱く醜い。
そこから目を逸らさなかったが故に、その醜さを目の当たりにし続けて、ついには折れてしまった日車。
しかし、自らの弱さという罪から目を背けない虎杖を前にして、人の弱さや醜さといった「他の生物にはないその穢れ」こそ尊ぶべきだという初心を思い出す。
虎杖の目が宿す眩しさに目を閉ざした日車は、自ら術式を解除。虎杖の拳を喰らい、敗北した。
ジャッジマンの証拠から宿儺の所業、つまりは渋谷事変の大量虐殺の真相を知っていた日車は、あの時の虎杖は自ら制御を手放したわけではない暴走状態であり、心神喪失が成立するとして「君に罪はない」と告げ、少しの間虎杖と対話する。
その後、虎杖の要求の通り、自らの100点を使って「総則10.合意による泳者間での点の移動の許可(総則8の指す「点の移動」に総則10による移動を含む)」を追加。
虎杖に1点を譲渡し、お互いに19日間の猶予を獲得した後、余った2点の出所を自白。結界が開けたら自首する考えを示し、これからの身の振り方を考える事に。
虎杖から死滅回游の平定を手伝ってくれないかと提案されるも、今の自分が虎杖といれば「益々自分を嫌いになりそうだ」という理由から断り、劇場を後にした。
「またな」
※この先、本誌の内容であるため注意。
以降の消息は不明だったが、宿儺・五条復活後は虎杖達と合流したらしく、彼らと共に五条と宿儺の決戦を観戦している。
日下部達の呪術に関する専門的な会話にも、なんとなくついていけるなど相変わらず呪術師としての能力は高い。
五条と鹿紫雲が宿儺に敗れた直後、虎杖と共に参戦。宿儺を裁判にかける事で「没収」を発動させ、術式の剥奪を試みる。
虎杖のアイデアにより、「虎杖を被告人とした第三審」を発動。被告人から再審請求した場合は罪状がランダムに切り替わるが、日車から再審請求した場合は同じ罪状で裁判にかけることが出来る。これを利用して日車が再審請求を行い、宿儺を巻き込む形で虎杖を被告人とした「渋谷事変での虐殺」の裁判を再開。宿儺に「死刑」を突きつける作戦に出る(処刑人の剣の対象は判決を下された者のみであるため、宿儺の内にいる伏黒の魂に影響はない)。
それにより、「先の裁判における虎杖の証言は、自身の体を乗っ取って事件を起こされた事に対する強い罪悪感による偽証であり、証拠能力がない。」として、真犯人は宿儺であると言う結論に持って行こうとするが、それを遮るように宿儺は「早く終わらせろ」と告げ、
その発言が罪を認めた判定となったのか、あっさりと「没収」「死刑」の判決が下される。
しかし、日車自身も把握していなかった対象が呪具を携帯している場合は没収されるのが呪具になるという仕様により、宿儺が持っていた呪具「神武解」のみが没収され、術式はそのままに戦闘に突入してしまう(一応「死刑」自体は発動しており、処刑人の剣も出現した)。
この点については、死滅回游の泳者は大半が過去の呪術師が受肉した存在、或いは術式に目覚めた一般人なので、呪具を持ち込み参加した泳者は外部からの途中参加者を除けば基本的には存在しないため、日車が呪具を持つ術師との交戦経験が無かった事が原因と思われる。
「誅伏賜死」終了後、続々と集った日下部、猪野、脹相の高専術師達のサポートを受けてもなお、処刑人の剣は宿儺には届かず、そのまま宿儺の斬撃によって重傷を負ったと思われたが…
術師として覚醒して2ヶ月弱
異常な成長速度
宿儺は魅せられていた
再び煌々と光を放つ必死剣「処刑人の剣」
そして
五条悟と並ぶほどの才能の原石に
領域展延を成功させ、宿儺の斬撃(術式)を中和・軽減する事に成功させる。さらにこの時展延を挿んだ後に術式効果を再開して処刑人の剣の消滅を回避した。宿儺は「限りなく俺に近いレベルで術式を運用している」と評し、「日車寛見……だったか?」と彼のフルネームを口にした(作中、宿儺がフルネームで呼んだ現代術師は「伏黒恵」「五条悟」に続いて三人目)。
才能を魅せた日車に対し斬撃を浴びせ、両腕を斬り飛ばした宿儺。またもやぶっつけ本番で反転術式を習得した日車は片腕を治し、宿儺の不意を突いて掌に処刑人の剣を刺した。
しかし宿儺は、刺される寸前に自分の手を切り落としており、隙だらけとなった日車は腹部を中心に胴体を切られて致命傷を負う。
「俺はここで役割を全うして死ぬべきだと思っている」
「法を見限り、また見限られた人間」として日車は自身が罰される必要を感じており、だからこそ宿儺との決戦に臨んだ。
残念ながら宿儺の術式は奪えなかったが、「処刑人の剣」は発動した。一般的な呪いのイメージからすれば、術師の死後に呪いが強まる可能性はある(自らの死後も、「死刑」の効果は持続するかもしれない)。
故に日車は、今際の際で剣を虎杖に託す。
最後の最後で、ようやく虎杖の目を真っ直ぐ見られた日車は、後を任せて倒れた。
虎杖が手にした「処刑人の剣」は宿儺に当たりはしたものの、術師の日車が倒れてしまった影響なのか宿儺を絶命させるには至らず、その瞬間剣自体も消えてしまった。
だが、宿儺から没収した「神武解」は戻る事なく、結果的に宿儺の武器を一つ奪う事には成功した。
※この先、269話、270話のネタバレあり。
どうにかこうにか自身の肉体に戻れた乙骨やしれっと生き残った日下部をはじめとする生存した高専メンバーが宿儺及び羂索戦における感想・反省点について話し合っている中、左腕に三角巾をつけた状態で登場。「死後強まる呪い」についての言及があった割に「処刑人の剣」が不発に終わったのは、むしろ日車が生きていたから、ということのようだ。
(これ以外にも、宿儺にとどめを刺された瞬間にはまだ復元しきっていなかった左腕が身体を回収しにきた綺羅羅に担がれた場面では復元しているなど、生存の可能性を示す伏線はあった)
そんな自身を「生き残ってしまった」と、斜め下を向いて目を合わせず語る日車に、虎杖は複雑そうな表情を浮かべていた。
しかし(おそらく同年代の)日下部からは「術師始めて2ヶ月かそこらの奴が生き残ってんだから末恐ろしいよ」と評され、呪術師として新たな道を歩むことに含みが持たせられた。
エピローグとなる270話では、裁判所での殺人罪について不起訴となったことが明らかになった。日車自身は「俺を術師としてこき使いたい」総監部の司法への圧力によるものだと推測している(ただでさえ呪術師は慢性的に人手不足であり、さらに渋谷事変以降の混乱も考えれば非常に高い能力、才能と真っ当な人格を持つ日車という人材を欲しがるのも無理はない)。
それを受けて日車の部下の女性(清水)は「やり直しですね!!」「遺族の代理人として日車さんをぶちこんでみせます!!」と溌剌と答える。かつて理不尽な法秩序と闘い続けていた日車の姿は、どんな権力が立ちはだかろうとも決して諦めない姿勢を彼女に教えていたのだ(彼女の目尻に浮かんだ涙は、かつて慕っていた日車の信念を自らが貫くことで、司法の内側で裁かれるのを内心望んでいる日車自身の望みを叶えられること、また同時に、日車が呪術界という裏の世界に去ってしまうのを少しでも食い止められることへの思いがこぼれたものだったのかもしれない)。そんな彼女に何事かを言いかけていた日車は、申し訳なさそうな様子で「頼む」と答えるのだった。
もし日車が呪術師として活躍することになるにしても、まだ少し先のことになりそうである。
※仮に清水の二審請求が認められ、さらに三審(最高裁)までもつれ込んだ場合、審理を終えるまでには数年単位の時間がかかる。ただし日本の司法の仕組みでは一つの事件につき裁判は最大で三審までであり、裁判所が審理続行の余地なしと途中で申し立てを棄却することもある。また、最終的に下される判決がどんなに不服でも三審で判決が確定すれば一事不再理の原則に基づき、以後同一事件の再起訴は不可能になる(この原則はたとえば無罪が確定した者が、秘密の暴露などで実は犯人だったことが判明した場合にも適用される)。なお「誅伏賜死」にも備わっている、原則を覆して裁判をやり直す再審請求という制度は基本的に冤罪を防ぐための制度であるため、日車のように「被告人が自ら有罪になりたがっている」ケースにおいては関係のない制度と言える。