概要
1つ、あるいは複数の妄想(事実と異なる誤った思い込み)が、長く(最低でも1ヶ月以上)続いてしまう障害のことである。
妄想の症状がある別の精神疾患、特に妄想が起こりやすい統合失調症と間違われることもあるが、あくまで妄想だけが起こるという特徴がある。高齢者の場合、認知症(に伴う妄想)と併発するケースが確認されている。いずれにせよ、他にどのような症状が起こっているか調べた上で区別する必要がある。
妄想性パーソナリティ障害から発展するケースもままあるが、概して精神障害としては珍しいものであるとされる。
妄想の種類は非常に様々で、「恋人が普段と違う行動を取った、絶対に浮気している」「隣人が挨拶してこなかった、私を恨んでいる」といった身近に起こりうるようなものから「自分は宇宙規模の大富豪だ」「芸能人の○○は結婚しているが実は自分と付き合っている」などどう考えてもありえないようなもの(奇異)まで幅広い。
DSM-5においては、妄想の種類に応じて以下のような亜型が挙げられている。
- 披愛型:「自分は(芸能人など、現実には一切接点のない誰かに)恋愛感情を持たれている」と確信するようなもの
- 誇大型:「自分は非常に優れた才能を持っている」、「自分は有名な作品のほんとうの作者である」など、自分の能力や経歴を誇大化するもの
- 嫉妬型:恋人や配偶者が浮気していると信じて、相手に嫉妬するもの
- 被害型:嫌がらせ、集団での攻撃(陰謀)など、不当に何らかの被害を受けていると感じるもの
- 身体型:「自分はとても体臭が強く周りに迷惑をかけている」「自分は顔が醜い」など、自分の身体的な部分に関するもの
他の精神疾患・障害と違い、あくまで症状は妄想(また妄想に関連して起こる幻覚)のみで、それ以外に心身の機能への大きな影響はない。このため、本人に病識(自身が病気や症状を抱えているという認識)がなく、また妄想の種類によっては周りも気が付かないまま、普通に生活ができてしまい、受診・発見が遅れることも多い。
しかし、妄想による不安や、妄想に基づいて何らかの行動を起こすことで社会や他人との関係に摩擦が生じ、トラブルや重大な事件に発展する危険性はある。
また、先に述べた通り妄想が症状として起こる他の精神疾患の可能性もあるため、事実と異なると指摘されても強烈な思い込みが抑えきれない場合や、周りにそのような状態の人がいるという場合には、急ぎ病院への受診を推奨したい。
治療においては、主に統合失調症の治療法に準ずる形で薬物療法や精神療法が行われる。しかし、ある意味では統合失調症よりも病識の欠如が強く見られることや、(症状が妄想のみであることから)本人が効果を実感しにくいということもあり、治療は難航することが多いという。
関連タグ
統合失調症 双極性障害 認知症など…妄想が症状として起こる病気の代表例。診断にあたってはこれらと明確に区別される必要がある。
妄想性パーソナリティ障害…被害妄想、他害妄想などを特徴とするパーソナリティ障害の一種。ここから移行するケースもある。