概要
絵画の画面や彫刻の表面のみならず、見る者の視界を覆い尽くさんばかりの水玉や網目のモチーフを使うことが特徴。
1960年代はアメリカ・ニューヨークで「ハプニング」と称されるパフォーマンス・アート活動を行なっており、「ハプニングの女王」とも呼ばれた。
合わせ鏡を用いて光やオブジェを無限に広がるように見せるインスタレーションや、男根状のオブジェを日用品などに張り付ける立体作品も制作している。
また、ファッションデザインや小説執筆などの活動も行っている。
プロフィール
松本駅近くで種苗業を営む裕福な家に生まれ、幼いころから草花や、それらのスケッチに親しんでいたが、その一方、少女時代より統合失調症(強迫神経症)を発症し、視界が水玉や網目模様で埋め尽くされる幻覚や、草花が話しかけてくる幻聴に悩まされており、自殺を願うほどに追い詰められていった。この恐怖や希死念慮から逃れようと、あえて自分の見ている光景を描き留めるようになったのが創作活動の始まりである。
女学校卒業後、京都市立美術工芸学校(現京都芸大)絵画科にて日本画を学ぶ。その後は日本で創作活動を行なっていたが、尊敬する画家、ジョージア・オキーフに手紙を送ったところ丁寧な返事をもらい、今まで描いた作品を全て燃やして1957年に単身渡米する。
初めのうちはなかなか評価が得られず貧しい生活が続いたが、寝食を忘れるほど熱心に絵を描き続け、やがて前衛芸術のフィールドで高く評価されるようになる。
芸術家、ジョゼフ・コーネルには特に気に入られており、恋愛関係というわけではなかったが公私にわたるパートナーとしてお互いの創作活動を支え合う存在となっていた。しかし、コーネルが1972年に亡くなったことで心身の調子を崩し、日本に帰国する。その後は日本に拠点を置いて活動を続けている。
代表作の一つ「自己消滅」シリーズは、絵画や彫刻だけでなく、展示空間や日常的な家具・雑貨、さらには自身の体にまで水玉模様を施し、鑑賞する人も、そして草間本人も水玉の中に溶けて一つになっていくような体験をテーマとしている。
本人が語るところによれば、父は複数の女性と関係を持つ放蕩者であり、ストレスで精神的に追い詰められていた母からは虐待まがいの厳しい躾を受けていたという。また、この母によって「性行為とは汚いもの」と教えられていたことから性嫌悪、男性器への恐怖を抱えていたが、これを克服するため、あえて男性器を模した大量の突起物をモチーフとした作品も制作している。
結婚歴はない。長年に渡り草間スタジオのディレクターとして秘書を務めた人物を養子に迎えている。
長野県出身のDJ、LOEは姪の孫にあたる。
女優の樹木希林と似ているという事で話題になった事もあるが、草間の方が年上である。
主な出版物
作品集
『草間彌生全版画集 1974-2004』阿部出版、2005年
小説
『マンハッタン自殺未遂常習犯』工作舎、1978年/角川文庫、1984年
『ウッドストック陰茎切り(ファロスカッター)』ペヨトル工房、1988年
『クリストファー男娼窟』角川書店、1984年
『心中櫻ヶ塚』而立書房、1989年
『セントラルパークのジギタリス』而立書房、1991年
詩集
『かくなる憂い』而立書房、1989年
ノンフィクション
『無限の網-インフィニティ ネッツ』作品社、2002年