概要
故事
ある人が、持っていた鈇(おの)をなくしてしまった。
誰かに盗られたに違いないと思ってみると、どうも隣の家の息子が怪しい。自分と出会った時の挙動も、こそこそ逃げ出しそうな様子だし、顔色や言葉つきもおどおどしていて、鈇(おの)を盗んだのはてっきり彼奴(きゃつ)に相違ないと思われた。
ところが、なくしたはずの鈇は、自分が谷間に置き忘れていたので、
後になってそこを掘りかえしているうちに、ひょっこり見つかった。
おやおやと思いながら家に帰ってきたが、さてそこで隣の家の息子を見ると、今度はその起居振る舞いが別段に怪しいとも思えなかった…
意味
疑いの心を持つと、なんでもないことでも、怖くなったり疑わしくなったりすること。
先入観なども、その一例。
例文
彼は騙され続けていたため、疑心暗鬼に陥っている。
出典
列禦寇(れつぎょこう)の『列子』。道家(道教)の文献。
列禦寇
鄭の新鄭出身。春秋戦国時代の人。
類義語
これに似た意味の中国の故事成語に「草木皆兵」というものがある。怖いと思っていると草木さえ敵兵に見えてくる、という意味。
中国では「疑心生暗鬼」より「草木皆兵」の方がよく使われる。意味としては日本語の「疑心暗鬼」と同じだが、日本語に比べて「疑い」より「怖い」というニュアンスの方が強い。
因みに、「疑心暗鬼」と同じく『列子』からできた故事成語に、「杞憂」「朝三暮四」などがある。
補足
「疑心」は仏教から出た言葉で「六根本煩悩」の一つとされ、仏教の真理に対して疑いの心を持つことを意味し、「暗鬼」は暗闇の中に鬼を見ることを意味する。
つまり、暗闇というだけで疑い、鬼がいるかのように見えてしまうこと。
疑心暗鬼(梅とら)
梅とら氏が投稿した同名の楽曲。