曖昧さ回避
概要
メソポタミア神話に登場する嵐や大地、秩序の神。
アヌンナキに数えられ、全身から後光「メラム」を放っているとされ、神鳥アンズーを従える。
神々のNo.2でありながら、事実上の最高神の立場にあり、神々の労働力とすべく人類創造にも携わった。しかしながら、性格は非常に無慈悲で、何かにつけて人間を滅ぼそうとする。人類が生活を営む姿を疎ましく思う余り、ある時は異民族を送り込んで都市を滅ぼしたり、またある時は大洪水を起こして人類の一掃を目論んだ。「ギルガメッシュ叙事詩」ではレバノン杉の森の番人として「この世全ての悪」とあだ名されるフンババを派遣したり、彼女を殺し、イシュタルを振ったギルガメッシュへの罰として彼の無二の親友であるエンキドゥに死刑を命じたりと苛烈さはドンドン増していく。(ちなみにエンキドゥの守護神こそ他ならないエンリル神である。)
流石にその行いは他の神々の目に余ったようで、大洪水の際にはエア神がジウスドゥラ(ウトナピシュティム)に箱舟を作るよう助言したり、フンババ退治の際には正義の神であるシャマシュがギルガメッシュに手を貸しており、この二神とは非常に仲が悪い。
洪水伝説には滅ぼした筈の人類と動物達が生き残った事を知って最初は激怒するが、エアが説得に入った事でジウスドゥラに不死身の命を与えて、ディルムンと呼ばれる場所に住まわせたという後日談があるように、特にエアは人類滅亡計画を幾度も阻んだ憎き相手である。
創世神話である「エヌマ・エリシュ」ではティアマト討伐に指名したマルドゥク神がエンリルに代わって最高神となっている。
余談
ちなみに「自分の作り出した者達が鬱陶しいから殺す」という理屈は深淵の神アプスーが神々を殺そうとした理屈と全く同じである。ただでさえ人間は過ちを犯す生き物なのに、その造物主たる神々でも同じ過ちを繰り返す辺り、業の深さを感じずにはいられない。
メソポタミアの神々の大半は現在悪魔と呼ばれているが邪悪な秩序の象徴であるエンリルはまさに悪魔と呼ぶに相応しいと言えるかもしれない。
しかし聖書では神が大洪水を起こした理由はネフィリムと呼ばれる巨人族の騒々しさと傍若無人さが原因とも言われており、エンリルの制裁は現在の人類に対してのものではない可能性がある。
しかもエンリルの苛烈な性格は彼の神格を考えれば当然のものであり、エンリルの所業が悪魔的と言われるのは神と人間の価値観や守るべき秩序の違いとも取れる。
エンリルを人類を無慈悲に殺戮する悪魔と見るか、大きな視点での秩序を守る善神と見るかは本人次第であろう。
関連タグ
似たポジションの神々
- ゼウス:同じく天候と秩序を司る神。何かと浮気性で人口と英雄削減の為に戦争を起こしたりとロクでもないイメージがあるが、人口を減らすのにきちんと理由があるだけエンリルよりかは温情である。
- シヴァ:同じく暴風神としての側面を持つ破壊神。尤もこちらは人類を滅ぼすタイミングをきっちりと定めており、まだ温情な方である。