概要
「サヨナラ勝ち」は野球・ソフトボールにおける勝利の一つ。英語でwalk-off win。野球なら9回もしくは延長回の裏、ソフトボールなら7回もしくは延長回の裏に後攻チームが決勝点を挙げると試合終了となり、後攻チームのサヨナラ勝ちとなる。メジャーリーグや日本のプロ野球ではホームチームが後攻となるため、ホームチームのファンにとってサヨナラ勝ちは喜ばしいことである。
逆に先攻チームは決勝点を失うと同時に試合が終わるため、「サヨナラ負け」という表現が使われる。英語でwalk-off lose。
試合がサヨナラ勝ちで終わることを「サヨナラゲーム」と言い、英語ではwalk-offである。
サヨナラ勝ちを収めた時のスコアのランニング表示では、最終回もしくは延長回裏の得点の横にアルファベットの"x(小文字)"がつく。また、チームの総得点でも勝ったチームの得点表示の横に"x(小文字)"が表記されることもある。
この由来は、後攻チームリードのまま最終回の表を終えた場合に後攻チームの勝利が決まり、「裏の攻撃は行われていないが試合終了」という意味で最終回裏の得点表示に記された"X(大文字)"から派生して、「最終回もしくは延長回裏の攻撃の途中のうち3アウト成立前に試合終了」という意味を表すのに"x(小文字)"を用いたことによる。
たまに間違われるが×(バツ印)ではない(何点入るかわからないため未知数のXが使われたと言われている)。
サヨナラ勝ちにおいて、ホームランとそれ以外とでは得点の入り方が異なる。
ホームランでサヨナラ勝ちとなる場合、打者含めて塁上の全走者に安全進塁権が認められるため、全員分の得点が入る。このため最大4点差がつくことがある。
それ以外の場合、勝ち越し点が入った時点で試合終了と見なされるため、必ず1点差で決着する。勝ち越し点となる走者以外の走者が本塁に帰塁しても、勝ち越し点を超えた得点は認められない
(例えば通常は2個の安全進塁権が認められるエンタイトルツーベースでも、サヨナラゲームの場合は勝ち越し得点を挙げる走者が生還するのに必要な最小限の個数の安全進塁権しか与えられない)。
もしホームランが取り消された場合は通常のヒットと同じ扱いになるため、勝ち越し点以上の点は入らない。
その他、点差によるコールドゲームが採用されている場合は後攻のチームが規定の点差を付けた時点で試合終了となる。
あまり一般的ではないが、これを「サヨナラコールド」と呼ぶこともある。
代表的なサヨナラ勝ち
天覧試合のサヨナラホームラン
この試合は2021年時点で日本プロ野球唯一の天覧試合で、昭和天皇・香淳皇后両陛下が試合開始から終了までをご覧になった。
試合はG4-4Tの同点で迎えた9回裏、読売の長嶋茂雄が大阪の村山実からサヨナラホームランを放ちゲームセット。なお、両陛下は21時15分でご退席される予定であったが、試合終了は21時12分で、このホームランがなければ同点のまま途中退席となるところだった。
この天覧試合が日本プロ野球を人気スポーツへと押し上げたと言われている。
代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン
- 2001年9月26日 大阪近鉄バファローズ対オリックスブルーウェーブ (大阪ドーム)
2020年シーズン終了時点で、日本のプロ野球における代打逆転サヨナラ満塁ホームランは8例ある。
中でも有名なのが、2001年9月26日の近鉄対オリックス戦で、近鉄の北川博敏が達成したホームランである。Bs2-5BWと3点リードされた状態で9回裏を迎えた近鉄。オリックスは8回途中から守護神大久保勝信を投入。先頭の吉岡雄二が出塁、続く川口憲史が二塁打、ショーン・ギルバートのところで代打に起用された益田大介が四球を選びノーアウト満塁とした。梨田昌孝監督は「今年のアイツは何かをやる」として、この日3打席凡退の古久保健二の代打として、北川を送る。1ボール2ストライクとなった4球目、大久保のスライダーが真ん中に入り、北川がこれはと感じて振り抜いた。打球はバックスクリーン左横へ飛び込み、プロ野球史上初の「お釣りなし代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン」となった。最終的なスコアはBs6x-5BW。近鉄のパシフィック・リーグ優勝が決まった。
幻のサヨナラ満塁ホームランだがサヨナラ勝ち成立
- 2004年9月20日 北海道日本ハムファイターズ対福岡ダイエーホークス (札幌ドーム)
F12-12Hの9回裏、2アウト満塁からSHINJOが放った打球はセンターバックスクリーンへ飛び込むサヨナラ満塁ホームラン……になるはずだったが、このとき1塁走者だった田中幸雄が歓喜のあまりSHINJOと抱き合い、その場で一回転した。これがランナー追い越しと判定され、SHINJOはアウト。本来この時点で3アウトとなるためチェンジのはずだが、SHINJOの追い越しより前に3塁走者奈良原浩がホームインしていたため、この1点が認められてサヨナラ勝ちが成立(他の走者の得点はヒット扱いに変更されたため認められず)。F13x-12Hで日本ハムが勝利した。
サヨナラホームランが取り消され、試合続行となったケースは何例かあるが、サヨナラホームランが取り消されたにもかかわらずサヨナラ勝ちが成立したケースは2021年現在これのみ。
近鉄球団本拠地最終試合でのサヨナラ勝ち
- 2004年9月24日 大阪近鉄バファローズ対西武ライオンズ (大阪ドーム)
近鉄がオリックスブルーウェーブと合併することが決まり、この日が球団最後の本拠地大阪ドームでの主催試合となった。延長10回裏1アウト2塁の場面で星野おさむがライト前へタイムリーを放ち、Bs3x-2Lでサヨナラ勝ちを収めた。球団最後の試合ではオリックスにBW7-2Bsで負けているので、球団本拠地最終試合は球団として最後の公式戦勝利にもなった。
3者連続ホームランによるサヨナラ勝ち、そして3試合連続サヨナラ勝ち
- 2017年8月22日-24日 横浜DeNAベイスターズ対広島東洋カープ (横浜スタジアム)
22日の試合の9回裏、DeNAは3点ビハインドから3番・筒香嘉智が2ランホームランを放ち、4番・ホセ・ロペスが同点ソロホームラン、そして5番・宮崎敏郎もソロホームランを放ちDB6x-5C、史上初の「3者連続ホームランによるサヨナラ勝ち」を達成した。DeNAは23日と24日も、それぞれ梶谷孝幸、倉本寿彦のサヨナラ適時打でサヨナラ勝ち(23日はDB7x-6C、24日はDB5x-4C)を収め、1960年(大洋ホエールズ時代)以来の3試合連続サヨナラ勝ちを果たした。DeNAは同一カード3試合すべてでサヨナラゲームを演じた。
プロ野球史上初サヨナラ"引き分け"で日本シリーズ進出
- 2021年11月12日 クライマックスシリーズ ファイナルステージ第3戦 オリックス・バファローズ対千葉ロッテマリーンズ (京セラドーム大阪)
クライマックスシリーズのレギュレーションでは、勝利数が並んだ場合はレギュラーシーズン上位球団が勝ち抜けというものがある。オリックスはアドバンテージを含めて3勝していた為、この試合を勝つか引き分けるかで日本シリーズ進出が決まるという試合だ。
展開自体はシーソーゲームとなりオリックス1点ビハインドで迎える9回裏の攻撃。ロッテはクローザー益田直也がマウンドに上がる。
先頭打者T-岡田がヒットで出塁(→代走に山足達也が入る)し続く安達了一もバントからのヒットで出塁。バッターボックスには途中出場の小田裕也が入る。
この状況を解説すると。
- アウトカウントはノーアウト、ランナーは1.2塁。
- とりあえずオリックスはこの試合1点取ればそれで終わり。
- 小田はレギュラーシーズン15打数1安打、打率は.067の代走、守備固め要員。
- 次のバッターは長打が期待できる紅林弘太郎か頓宮裕真。
ここまで書けば野球好きの方なら(きっと小田はバントするだろう)と思うはず。事実小田もバントの構えでバッターボックスに立つ。
ロッテベンチは内野陣に引き続きバントシフトを指示。益田もバントゲッツーを取る為に低めインコースよりにストレートを投げる。
すると小田はバントからヒッティングに変えて打ち返し、1塁手の三木亮の横を抜けてヒットになる。この間に2塁ランナーである山足がホームイン。この時点でオリックスの引き分け以上が確定し試合終了。日本シリーズへ駒を進めた。逆にロッテはまさに1点に笑い、1点に泣く形となりファイナルステージ敗退が決まった。
なお公式記録ではコールドゲーム扱いとなる(スコアボードの表記は通常のサヨナラと同じB3x-3M)。
ちなみに例えコールドゲームとならなくとも、ライト岡大海の捕球がもたついていたために1塁ランナーの安達がホームインしてサヨナラ勝ちとなった可能性は十分にある。
野球界の勝利
WBC14年ぶりの決勝進出を目指す侍ジャパンの前にメジャー選手を多数抱えるメキシコが大きな壁として立ちふさがった。国内最強のエースである佐々木朗希は強靭なメキシコ打線を3回まで無失点に抑えるも、4回L.ウリアスに痛恨のスリーランを浴びてしまい、打撃もメキシコレフトのアロサレーナに長打を悉くキャッチされ、チャンスを潰されてしまう。7回表には吉田正尚のスリーランでようやく試合を振り出しに戻すも、8回にまたメキシコが2点を奪い再びリード。その裏山川穂高が犠牲フライで1点を返したが、日本の勝利は絶望的だった。
しかし、9回裏最後の攻撃で大谷翔平がヘルメットを脱ぎながら激走し、2塁まで進んで大きく咆哮を上げると、続く吉田は四球を選び、代走で周東佑京が塁に出る。ノーアウトで訪れたこの最後のチャンスに監督の栗山は選択を迫られた。
ところが牧原はプロ人生ですら味わったことのないこの極まり過ぎた状況で能力を発揮できる状態になく、それを察した栗山は村上に任せるという決断をする。
村上はこの試合でも三振が続くなど不調が続いたが、ここで遂に昨年の三冠王はその意地を見せ復活。センターへ強烈な二塁打を放ち大谷と周東を返して念願の決勝進出へと駒を進めた。
試合後、敗戦の将となったメキシコ代表のベンジー・ギル監督は悔しさを感じながらも、野球史に残るであろう死闘を繰り広げた自国メキシコの選手たちと日本選手の不屈の心を称え、「今夜の試合は野球界そのものの勝利だ」とコメントしている。
英語での「サヨナラ」
近年日本語や日本文化がアメリカに浸透していることもあって、「サヨナラ」という日本語はMLBの実況でもしばしば用いられる。だが日本語の意味のサヨナラではなく、「Good-bye」や「Gone!」等のようにホームランが入った時に使われる(「ボールをスタンドに見送る」=「ボールよさようなら」=「Sayonara!」)。
決め台詞として
まどか☆マギカ・マギアレコード作中のキャラクター、神名あすみの決め台詞なのだが……(詳しい詳細はあすみのタグを参照)。
関連項目
Vゴール……かつてサッカーにおいて、試合が延長戦に突入した際にどちらかのチームに先に得点が入った時点で試合を終了させるというルールがあり、この決勝点のことを指す。現在は廃止。