概要
2002年(平成14年)にFIFAワールドカップが開催される際、その候補地として札幌市が名乗りをあげ、総事業費約537億円をかけて2001年(平成13年)に落成した。ドーム施設自体は札幌市などが出資した第三セクター会社である「株式会社札幌ドーム」が運営。
特長は何と言っても、日本では珍しく野球とサッカーの両競技ができるという点。
- 野球場モードは(コンクリート上に敷き詰められた)通常の人工芝にて試合を行う。サッカー場としても使用するため、外野フェンスの高さは5.75mで高い部類となっていた。
- サッカー場モードに切り替える際は、まず人工芝を巻き取って中堅スタンドの入口を開き、そこから平常時は屋外にあるサッカーのピッチを入れる。ピッチが乗ったステージは空気圧で浮かせており、さらにそれを90度回転させて座席配置も移動させるという大掛かりなものである。
開場からプロサッカー・Jリーグに所属する北海道コンサドーレ札幌(コンサドーレ札幌)が本拠地として使用。また観客の増加を図るため本拠地移転構想があったプロ野球・パシフィックリーグに所属する北海道日本ハムファイターズも、2004年から2022年まで本拠地として使っていた。
- ドーム上部53mの高さには常設の展望台があり、そこまでのアプローチ上のエスカレーターからアリーナを臨む事ができる。試合やイベントによってはそれらが開催中でも立ち寄りが可能。
- スポーツの試合以外に歌手のライブ会場として使われる事もある。
命名権契約
「株式会社札幌ドーム」の経営維持のため、2011年に命名権(ネーミングライツ)の公募が行われたが、5億円×5年契約という高い契約金が災いし買い手はゼロとなった。
後述の2023年の北海道日本ハムファイターズ本拠地移転の際、再度命名権が公募された。この際も買い手がなかなか現れなかったが、最終的に2024年8月から大和ハウス工業(ダイワハウス)がネーミングライツの協賛企業となることが決定した。
- 「大和ハウス プレミストドーム」:2024年8月1日〜2028年7月31日
ファイターズの本拠地移転騒動とその後
北海道日本ハムファイターズは「株式会社札幌ドーム」へ使用料を支払う形で主催試合を行い、また施設内の広告や売店での収入は全て札幌市側へ帰属するため、ファイターズ側は収益がなかなか得られない状態が続いていた。
また「サッカー用としても使っている座席が野球観戦に向いていない」「併用目的によってファウルグラウンドが広すぎるせいで臨場感に欠ける上に、ファウルフライが増え打者が不利になる」「取り外し可能な人工芝のグラウンドのため、選手が故障するリスクが上がる」など設備側の問題があった。
ファイターズ側は(公共施設の運営を民間企業などに委託する)指定管理者制度の採用を提案するも、札幌市側は拒否。結局「自前の球場を建設して本拠地を移転する」ことを決め、北広島市からの誘致を受け「エスコンフィールドHOKKAIDO」が2023年シーズン以降の新たな本拠地となった。
この問題では財政面での放漫経営が挙げられがちだが、なによりの問題は人工芝で、これはファイターズ単体ではなくNPB全体に影響する。
札幌ドームのせいで人工芝球場そのものが悪いかのように言われがちだが、競技場としてのクッション性に充分配慮した設計の人工芝球場は他にもあり、水はけの良さや雑草の発生の防止、自然植物の育成具合に左右されないなどの利点がある。
だが、先述のように札幌ドームの人工芝は取り外し可能と呼ばれるように、厚さが薄過ぎるせいでコンクリートの上で野球をしているのと変わりがない状態にあったため、最も影響を受ける外野手が怪我を負うケースが後を絶たなかった(どれだけ酷いかといえば、家庭用の防草マットに毛が生えた程度のもの)。ファイターズで4番を務めた中田翔が外野手から一塁手へコンバートした原因として、「札幌ドームの外野を守り続けた結果、腰を痛め過ぎて外野の守備が出来なくなってしまった」とされるものがあり、札幌ドーム(札ド)の揶揄として「殺人ドーム」(殺ド)と呼ばれることがある。
札幌ドームはファイターズによって生み出された利益で支えられた部分が大きかった。北海道コンサドーレ札幌はホームゲーム扱いでもそのうち札幌ドームを使うのは年20試合程度しかない。1試合あたりの動員数では、較差は1~1.5倍程度に収まっているのだが、問題は開催試合数と広告に関するルールの差。Jリーグではフェンスに横断幕を展開することを許可してしまっているため、この部分に広告を出しても隠れてしまう。
実際のところ2023年シーズンはコンサドーレが好調で、1試合あたり1.5万人~2.4万人の観客数があり、ファイターズがパ・リーグのチームであることを考えると動員数自体は悪くないのだが、広告という一番の収入源がないためどんなに人が入っても赤字解消に寄与しないのである。
また、Jリーグは3部制で成績が悪いとJ1リーグからJ2リーグへの降格が発生する。J2に降格してしまうと一気に集客力が落ちてしまい、札幌ドームほどの収容力は不要になるためさらに札幌ドームでの主催試合が減少、かつての札幌厚別公園競技場での開催の可能性もある(ただし、現状の厚別競技場では収容人数の関係でJ1規格にはなっていない。J2チームでいつになったらJ1に昇格できるのか、というようなチームでもJ1対応スタジアムの確保に動いているので、コンサドーレがJ2落ちしても直ちに札幌ドームとすべての関係を解消するということはないと思われる)。
ついでにいうと実はサッカーファンの間でも札幌ドームはそもそも評価が芳しくなかったりする。というのも酷寒の北海道で屋外養生の天然芝がどうなるかなんてちょっと考えれば解るのだが、(鹿島アントラーズ本拠地のカシマサッカースタジアムあたりと比べられると)以前から質が低いと言われていた。今はファイターズからの収益が無くなり維持費削減で芝生の状態悪化が懸念され、北関東以南のJリーグホームスタジアムとの質の格差が広がると考えられている。
現在はどこのNPB球団の本拠地にもなっていないが、前述の人工芝問題から今後本拠地として使う計画が再度出る可能性はないと見られる。フランチャイズ制度もあって北海道内のNPB公式戦開催権はファイターズが優先的に保有しているため、ファイターズ抜きのNPB公式戦開催自体も厳しい。
この状況を打破するにはフランチャイズ権を持つファイターズから許可を貰った後、リーグ同士にならない為にセ・リーグの球団を誘致する必要があり、東京を本拠地としているかつ同リーグにいるため地元での人気が傾き過ぎているとはいえ分散している読売ジャイアンツと東京ヤクルトスワローズのどちらかに来てもらう必要があるが、どちらも東京に本拠地を置く筋が通っていることや先述の人工芝を怪我しないほどの厚みを持たせる為に、コンサドーレを別の場所を移転させなければならないことを考慮した場合、その手間を当事者である札幌市が快く承ることを想像出来ない以上、この起死回生策は現実味を帯びていない。
ファンは札幌市の態度に批判的な発言をしている。
余談
- 札幌ドーム建設に西武グループの「コクド」が関わっていたこともあり、開場当初は西武ライオンズ(埼玉西武ライオンズ)が準本拠地とする予定で(最終的には地元企業へ売却するのでは?との噂も立っていた)2002年には開幕戦も行っていた。が、同年ファイターズが札幌ドームに完全移転する計画を表明し、協議の結果ライオンズは撤退、ファイターズが2004年から本拠地として使用することになった。
- 本拠地に不満を持っていたオリックスやヤクルトも移転する意向があったと示されたがどちらも真偽が乏しいものである為、実際のところは不明。ヤクルトに関しては北海道出身の若松勉が監督を勤めていたころに移転話を球団に持ちかけたところ、誘いがあれば移転するという詳細があるものの、確実なソースがないので都市伝説として扱われている。
アクセス
札幌市営地下鉄東豊線終点の福住駅から徒歩10分の距離にある。当初は本ドームを経て北野地区や清田地区迄延伸する計画もあったが、建設費と需要の兼ね合いでなかなか実現していない。実現していたら「ドーム前駅」が建設される筈だった。
また新千歳空港と札幌中心部を結ぶ空港バスが札幌ドーム前に停車するので、内地から札幌市街に寄らずにアクセスできる。
関連項目
メイプル戦記……作中では主人公のチームの本拠地となっているが、東京ドームに似たエアドーム式の架空の球場である。また連載当時は実在の札幌ドームは着工すらしていない状態で、札幌ドームが完成したのは連載終了から6年後の事である。
野球狂の詩……平成版では主人公の所属するチーム・東京メッツがここに移転しており、「札幌華生堂メッツ」の名称となっている。