WBC第5回大会
でんせつのたいかい
世界で最高の試合だった。あんなドラマを作れるスポーツは他にない。野球はその点では完璧だと思う
──ロサンゼルス・エンゼルス監督 フィル・ネビン
WBCの第5回大会。
この大会は過去に開かれたWBCの中でも、様々な波乱に満ちた大会となった。
元々は2020年に開催されるはずだったが、前年より世界に猛威を振るったパンデミックであるコロナ禍により第5回大会は無期限延長となり、間にプレミア12は開かれたものの、最終的には開催が2023年3月までずれ込んだ。
参加国は過去最多の20カ国となる。
そして開催されると、前年に開かれた2022年FIFAワールドカップカタール大会に匹敵するほどの大変な盛り上がりを見せることとなった。
特に大谷翔平を擁する日本代表(侍ジャパン)は、フィクション顔負けのドラマチックな展開を繰り返して、並み居る強豪国を次々に打破して3大会振り3度目の優勝を果たし、世界中で大きな話題を呼ぶこととなった。
- 日本代表(侍ジャパン)
歴代最強との呼び声も高い日本代表チーム。
かつて北海道日本ハムファイターズで多くの人材を育て上げてきた栗山英樹が監督を務め、言わずと知れた二刀流である大谷翔平は元より、打撃陣は前年度史上最年少で三冠王に輝いた村神様こと村上宗隆、今年度よりMLB挑戦の飛ばせるアベレージヒッター吉田正尚、セ・パ両リーグを代表するパワーヒッターの岡本和真と山川穂高、出塁率において圧倒的な安定感を誇る近藤健介、世界大会において必ず活躍する頼れるトリプルスリー山田哲人、次期侍中軸候補の牧秀悟、競馬好きのチームメイトをして「アーモンドアイより速い」と言わしめる韋駄天の周東佑京を招集。
一方、守備でも“甲斐キャノン”の異名を持つ強肩甲斐拓也の他中村悠平、大城卓三といった打撃にも優れる経験豊富な捕手を揃え、内野には「源田たまらん」とファンをうならせる鉄壁の守備職人源田壮亮や、いざという場面(実際大会中に起きた)を想定してユーティリティな活躍が見込める中野拓夢といった攻防全てにおいて隙のない、それどころか控え選手ですら単なる交代要員ではなく必要な場面で役割を用意された最高の戦力が揃う。
しかし、外野手は有力候補が高齢化していたり、選出を期待されていた鈴木誠也がケガで辞退することになり、国内の有識者達も「最適解が見当たらない」と悩ませるポジションとなっていた。
そこで栗山はアメリカを視察し、メジャー挑戦日本人の通訳として活躍する水原一平の尽力で、史上初となる日系アメリカ人のメジャーリーガーである、ラーズ・ヌートバーを招聘。巧みな守備と日本人以上に闘志を見せるキャラクター性から大会中不動の1番バッターとして2番打者の近藤と共に高い出塁率をマークし、第1次ラウンドから準々決勝まで打線が大量得点を重ねることのできた要因の1つとなった。特異点でありながらムードメーカーとしてチームに溶け込み、地元のアメリカでも唯一ネイティブ英語でインタビューしやすい選手だったため、広告塔として注目してもらえる副次的な効果が得られた。
しかし、何よりも世界を震撼させたのは、投手陣の層の厚さであろう。今大会の日本の投手陣は二刀流の大谷翔平を含めて総勢15名とメンバーの半数を占め、しかも皆他の参加各国が舌を巻くほどの実力者揃いである。
第一先発には投打ともにチームの中心となる大谷翔平、2009年大会で胴上げ投手となり、今ではもうベテランとなったダルビッシュ有を筆頭に、前年に完全試合を達成した佐々木朗希、同じく前年にノーヒットノーランを達成し、今や日本最強のピッチャーとの呼び声も高い山本由伸が中核となり、決勝では投げる哲学者と称される今永昇太が独自の思考とメンタリティで勝負強さを発揮した。
各球団からも湯浅京己(阪神)、栗林良吏(広島)、松井裕樹(楽天)、伊藤大海(日ハム)、高橋奎二(ヤクルト)といったチームの顔と言える投手が勢ぞろいしており、更には戸郷翔征、高橋宏斗、宮城大弥、大勢といったまだ22歳以下の若手投手が大舞台でその才能を世界に見せつけ、NPBの世代交代を印象付けた。決勝戦ではこの豪華すぎる投手陣をイニングごとに交替させていくという夢のような投手リレーで“銀河系打線”とも称された後述のMLBトップクラスの打者陣をわずか2得点に抑え込み、日本の勝利に大きく貢献した。ダルビッシュはこの代表チーム内で自分の調整よりも他の選手へのアドバイスを重視しており、チームに馴染めていなかった宇田川優希のフォローやダル塾と言われる選手達への投球指導によって日本選手全体のレベルアップや戦術指南、コミュニケーション強化にも一役買っている。
このように投打が見事に噛み合った結果、前哨戦に当たる第一次ラウンドより、(大半のチームが格下であったという事情もあったとはいえ)大差をつけての圧勝を繰り返した末に準決勝、決勝ではギリギリの接戦を制しての勝利をもぎ取った。
とはいえ、全体的に見ると4番の村上が1次ラウンドで終始不調だったり、チーム全体で満塁のチャンスを何度も逃したり、ダルビッシュが韓国戦でホームランを浴びて3失点の先制を許すなど意外と暗雲の立ち込めていた試合展開も多く、何かがかみ合わなければどの試合でも敗北する可能性があった。
しかし、そんな度重なる逆境を跳ね返すことができたのは、ここぞというところでの勝負にめっぽう強い精神力とチームの団結力、優秀な人材を適材適所で用いた栗山監督の采配、そして勝利への強い執念であった。これによりメキシコ戦での大谷の気迫の2塁打から始める最後の劇的なサヨナラ勝ち、中国・韓国戦でのヌートバーのファインプレー、戸郷や大勢のピンチに強い投球、岡本や吉田の希望を繋いだホームランなどドラマ性の多い試合がひしめいており、全編通して漫画ですら描けないような展開が続くことになったのである。
日本と対戦したチーム
1次ラウンド・プールB
- 中国代表(1戦目)
未だ発展途上ではあるものの、野球選手養成アカデミーや海外からの優秀な育成スタッフなどを呼び込み、大きく強化に努めるも1次ラウンドでは全敗、20位となった。
しかし、現在はJABA(日本社会人)に所属している元ソフトバンクで華人系の「ミギータ」こと真砂勇介(父が中華人民共和国籍)や、東海大菅生高校に所属していた梁培など日本野球をルーツに持つ選手たちを迎え入れたチームは日本相手に奮戦し、試合後大谷も「中盤まで勝てるかわからなかった」と彼らを高く評価した。真砂が中国代表入りする経緯は昨年の契約更改で自由契約(いわゆるクビ)になった後、1月に中国から代表入りの打診があり、本人は自分が中国代表として出場資格があることすら知らなかったという。試合前にはチームメイトだった侍ジャパンメンバーと再会して談笑する姿もあり、ファンを喜ばせた。また、中国代表入場時の選手紹介では日本選手とほぼ同じレベルの声援で迎えられた。
また、日本戦に途中登板した王唯一投手や孫海竜投手は名前がポケモン関連ワードを彷彿させたため、ポケモン界隈の間で話題になった。王唯一は日本の強力打線を失点2、孫海竜もピンチを迎えながら失点なしでまだ逆転できる点差に抑えた勝負強さを見せ、日本でも称賛の声が上がっている。
- 大会には全敗を喫したが、選手たちが世界最高レベルの野球を経験したことは大きく、中国代表は同年9月に自国で開催されたアジア競技大会で侍ジャパンの社会人チーム相手に勝利し、成長を実感させた。
- 韓国代表(2戦目)
第1回、第2回大会では日本と激しい優勝争いを繰り広げ、日本の最大の宿敵とも言われるアジアの強豪国。当然、今大会においても1次ラウンド最大の山場になるであろうと目されていたが…。
今大会では、日本のヌートバーと同じくアメリカ系出身(しかも、所属チームもヌートバーと同じカージナルス)であるトミー・エドマンを加え、メジャーリーグのサンディエゴ・パドレスで活躍するキム・ハソンや父が中日ドラゴンズに所属した経験を持つ「韓国のイチロー」と評される爽やかイケメン外野手イ・ジョンフを中心にチームを構成。
ところがいきなり初戦のオーストラリア戦でとんでもないボーンヘッド(※)をやらかし、投手陣の炎上もあって1点差で敗れてしまう。
迎えた日本戦では2009年WBCで出場経験のある「日本キラー」キム・グァンヒョンが先発し2回までは完璧に打線を封じ、更には打線もダルビッシュから3回に3点を奪って一時は日本に予選敗退の危機すら感じさせた。
しかし、3回裏にキム・グァンヒョンが掴まってあっさり逆転されると、その後はオーストラリア戦でも露呈した投手層の薄さも相まって侍打線に滅多打ちにされてしまい、4-13とコールド負け一歩手前の点差をつけられ惨敗した。
チームも残りの中国戦とチェコ戦には辛うじて勝利したものの、最初の2試合を落としてしまったことが響いて、3大会連続の1次ラウンド敗退し、11位という屈辱を味わわされることとなった。
当然韓国メディアは代表を大きく非難し、日本に対しても棘のある言葉を続けた(少し前から日本と韓国は政治的にもギスギスした関係が続いていたのも一因)が、今回の敗北や日本のWBC優勝を見届けると韓国も一転「野球と書いて大谷と読む」と絶賛、イ・ジョンフも「もう一度、僕らが飛躍する姿を見せるしかない」と奮起するコメントをし、韓国野球界も強化のために日本との交流戦を提案する動きを見せるなど良いライバル精神が芽生えようとしている。
- 韓国メディアは敗因の一つに代表チームの世代交代ができていないことを指摘しており、大会後の対策チームでは若年層の若手選手を中心にナショナルチームを組織する方針を打ち出し、次の大会へ向けての準備を進めている。
- そしてその若手選手を中心に組織された韓国代表は同年9月のアジア競技大会で優勝。更に代表選手のうち19名は兵役免除によって選手育成を充実させることができるようになった。また、オフシーズンには上記のイ・ジョンフがMLBのサンフランシスコ・ジャイアンツと、同じく代表メンバーの1人であったクローザーのコ・ウソクがダルビッシュや松井裕樹と同じサンディエゴ・パドレスと契約(奇遇にも、どちらも大谷と山本が移籍したロサンゼルス・ドジャースとは同地区のライバル同士に当たる)。共に韓国野球を背負ってアメリカへ旅立った。2024年にはパドレスとドジャースが韓国の高尺スカイドームで同地初のMLB公式戦(開幕戦)を行い、日韓の野球ファンの注目を集めた。
- 韓国メディアは敗因の一つに代表チームの世代交代ができていないことを指摘しており、大会後の対策チームでは若年層の若手選手を中心にナショナルチームを組織する方針を打ち出し、次の大会へ向けての準備を進めている。
※ 参考、動画版https://youtu.be/_eQ6TfePxJE、問題シーンは5:40から
- チェコ代表(3戦目)
今大会、初出場となる代表チーム。
第一ラウンドで日本と戦い、代表選手の強烈なキャラクター性から話題になった。
というのも、チェコの野球はまだプロチームが成立しておらず、代表に選ばれた選手も殆どが本業を持ちながら野球をプレイしているアマチュアたちだったからである(その様子を日本メディアでは「二刀流選手の国」と評した)。エースピッチャーのマーティン・シュナイダーに至っては投手・遊撃手とポジションでも二刀流の消防士である。
そんな中、チェコ代表の先発ピッチャー、オンドジェイ・サトリアは120kmほどのスピードしかないが高い制球力を誇るストレートとチェンジアップで大谷翔平やヌートバーといったMLB選手を三振に取るなどの活躍を見せ、バッターも日本国内最強のピッチャーと名高い先発佐々木朗希相手に2ベース→エラーで先制して日本の野球ファンを騒然とさせ、現地の実況からも「滅多にないことが起きた!」と驚かれた。
最終的には2-10で日本に敗れたが、一時的とはいえ日本を翻弄したポテンシャルの高さや、スポーツマンシップの高さ等が日本の野球ファンから高く評価された。
また、チェコ代表に加わった元MLB選手だった「ナード・パワー」ことエリック・ソガードのバックストーリー、先発登板した佐々木朗希のデッドボールに端を発した両チームの選手同士の心温まる交流など、数多くのドラマ性から、試合終了後も対戦相手である日本で人気と話題を集めることとなった。
リーグ内では中国に勝利して総合的には15位となった為、次回大会では本戦出場のシード権を得ている。また、この活躍で代表選手たちは帰国後首相官邸に招待される歓迎を受けた。
- 多くの日本人を感動させたチェコ代表の素晴らしいスポーツマンシップは、WBC後も大きく影響を与え、大会後テレビでチェコを取り上げる特集が何度か組まれている。佐々木朗希の出元でもある千葉ロッテマリーンズも「マリーンズ-チェコ ベースボールブリッジプログラム」を立ち上げ、2023年8月にはチェコ代表のハディム監督、ムジーク、エルコリの3名をZOZOマリンスタジアムに招待し、ハディム監督は始球式に参加した。ビデオメッセージでは佐々木朗希のデッドボールを受けた後、無事をアピールして試合を沸かせたウィリー・エスカラも登場した。
- ZOZOマリンスタジアムで日本プロ野球のパフォーマンスを学んだチェコは欧州選手権でNPB式の演出や応援方式を取り入れ、大会を大きく盛り上げることに成功。大会成績は5位に終わったが、大会全体の集客は過去最高を記録している。2024年には日本の大学選抜がチェコのプラハで交流試合を行う予定である。
- 多くの日本人を感動させたチェコ代表の素晴らしいスポーツマンシップは、WBC後も大きく影響を与え、大会後テレビでチェコを取り上げる特集が何度か組まれている。佐々木朗希の出元でもある千葉ロッテマリーンズも「マリーンズ-チェコ ベースボールブリッジプログラム」を立ち上げ、2023年8月にはチェコ代表のハディム監督、ムジーク、エルコリの3名をZOZOマリンスタジアムに招待し、ハディム監督は始球式に参加した。ビデオメッセージでは佐々木朗希のデッドボールを受けた後、無事をアピールして試合を沸かせたウィリー・エスカラも登場した。
- オーストラリア代表(4戦目)
韓国やチャイニーズ・タイペイ程ではないが、度々日本を苦戦させているアジア(厳密にはオセアニア)の強豪。
監督は現役時代に野茂英雄とバッテリーを組み、中日ドラゴンズで『ディンゴ』の名でプレーしたデーブ・ニルソン。
初戦で韓国を破り、グループリーグ突破に大きく前進。日本には1-7で敗れたものの2位で決勝トーナメントに進出した(オーストラリアとしては大会史上初のベスト8(準々決勝)進出したが、当該試合で敗れ7位となった)。
また、日本の完全なホーム故に他国の応援団は非常に少なかった中で、代表のティム・ケネリー選手の娘フローレンスちゃんの応援する姿が「小さな応援団長」と注目を集め、オーストラリアの試合を応援する日本人観客も徐々に増えていった。「レッツゴー!ジョージ!!」
また、練習の合間にユニホーム姿でコンビニへ買い物に行く選手たちの姿が「パワプロ君みたいだ」と少し話題になった。
- 日本のシーズン終了後に行われたアジアチャンピオンシップでは4チーム中唯一自国の応援団を呼べなかったが、オーストラリア広報がSNSの公式アカウントに日本語で日本人にオーストラリア代表を応援してほしいと有志を募ると、3位決定戦では集まった日本人観客がオーストラリアの打席でニルソン監督が所属していた中日ドラゴンズの「狙い撃ち」などの応援歌を熱唱。他にも選手ごとに(例えばバーク選手には名前が似た元阪神のランディ・バース選手の応援歌等を流用)懐かしの助っ人外国人の応援歌が採用され、オーストラリアの野球関係者はもちろん、往年の野球ファンたちを喜ばせた。また、オーストラリアのリーグ(ABL)では日本人選手が何名かプレーしている。
決勝ラウンド
欧州野球の隠れた実力者であるイタリア代表は、エンゼルスで大谷のチームメイトであるデビッド・フレッチャー(弟のドミニク・フレッチャーも代表入り)を始め、ニッキー・ロペスやビニー・パスカンティーノ等多くのメジャー経験者を主力とする強豪国である。監督は現役時代に野茂英雄とバッテリーを組み、メジャー殿堂入りも果たしているマイク・ピアッツァ(ピアザ)で、試合前の入場時には東京ドームでも大きな声援が送られた。
今大会のイタリアは相手チームのデータを分析し、それを基に緻密に計算されたプレイをすることで死のグループとも言われたプールAを勝ち上がった。チームごと・選手ごとに用意された多彩な守備シフトはまるでイタリアサッカーの堅い守備を思わせる堅牢さを誇り、相手打線を苦しめた。
当然日本打線も序盤は苦戦を強いられ、大谷もこの守備シフトに捕まるが、2打席目でサードがガラ空きだったことに気付いた彼は、なんとバントを敢行。完全に虚を突かれた形となったイタリアは送球ミスをしてしまい、ここがターニングポイントとなって次第に形勢が日本に傾き、3-9で敗戦となり、8位で終えた。投手大谷についてもイタリアは緻密な研究をしており、中盤で大谷が疲れてきた辺りで得点しているが、試合後のインタビューによれば全体的な大谷のポテンシャルはデータの上をいっていたという。
なお、控え投手がボッキ、ニットーリと日本語でネタになりそうな名前だったことも話題になった(ボッキ選手は「ボッチ」という表記も可能だが、どっちにせよ話題にされることは避けられなかったと思われる)。
また、イタリアベンチにはエスプレッソマシンが常備されており、こちらも話題となった。
- 今大会のチーム編成では勝利にこだわるとはいえイタリア系アメリカ人が多数を占めており、チーム外から本国組とアメリカ組の温度差が指摘されていた。
- 一応これには大会で好成績を収め、資金面の支援を受けやすくすることで最終的に本土の育成やリーグ運営も充実させようという狙いがあり、決勝トーナメントにも進めたことから成功と言えるのだが、イタリア代表もこの点を気にしていたらしく欧州選手権では本土の選手が中心となって編成されていたようである。
- そんな中、数少ない本国組であった件のボッキ投手は3月の欧州選抜戦の2日目に満を持して登板。投球練習中は山崎康晃の登場曲で知られる「ケルンクラフト400」が流れ、本人不在の中ヤスアキコールが自然発生したりする等カオスな状態だったが、何とか無失点で次に繋ぐ活躍を見せた。
- 今大会のチーム編成では勝利にこだわるとはいえイタリア系アメリカ人が多数を占めており、チーム外から本国組とアメリカ組の温度差が指摘されていた。
今大会の対戦相手の中で最も日本代表を追い詰めたチーム。
監督を務めたベンジー・ギル氏は大谷やトラウトの所属するエンゼルスの1塁走塁コーチを務めており、2021年に開催された東京五輪でもメキシコ代表監督として侍ジャパンと戦った日本の野球ファンにも馴染み深い人物だったりする。
東京五輪で大敗した経験もあり、WBCを制覇するためにはメジャーリーガーが必要不可欠と考えたメキシコ代表は、早くからWBCに向けて準備を進め、二重国籍の選手も含めて多数のMLBのメキシコ代表候補と交渉し、21人ものメジャーリーガーの招集に成功。
大谷翔平、トラウトと同じくエンゼルスに所属する名ピッチャーパトリック・サンドバルと、レフトの守備を担当していた外野手のランディ・アロザレーナが活躍した。
特に、アロザレーナは過去にキューバからの亡命歴がある選手であり、WBC出場のためにインスタグラムでメキシコ市民権の取得を求めたエピソードなど日本でも一躍脚光を浴びる選手となった。
NPB経験者ではオリックス・バファローズでプレー経験のあるジョーイ・メネセスやセサル・バルガスも代表に名を連ねている。
上記のイタリア代表と同じく二重国籍のアメリカ系選手は多いものの、メキシコは本国出身のMLB選手がそれなりにいることもあってか、メキシコリーグ(LMB)の選手達には「自分達もMLB選手と同じレベルでプレーできる」と逆に自信につながったらしく、セサルもMLB選手の参加はメキシコ国内の選手にもいいモチベーションになったと語っている。
リーグ戦である第一ラウンドでは唯一アメリカに勝利し、準決勝では日本と戦った。
日本戦では、アロサレーナの守備により、本来ならホームランになる打球が悉くフライに取られており、アロサレーナ自身もヒットを連発し、日本代表を最後まで大いに苦しめることとなった。
しかし、5-4で迎えた9回裏、勝利を目前に日本打線の怒涛の猛反撃を受け、最後はこれまで不振に喘いでいた村上の執念のサヨナラタイムリー2ベースを浴びて5-6で逆転負け。初の決勝進出は果たせなく3位で終えた。また、そこまでの試合の流れが変わるシーンの一つとして、機械レベルでないと判定が覆らなかったであろう源田のタッチアウト判定があり、昨年のサッカーW杯で物議を醸した三笘の1mmになぞらえて源田の1ミリと呼ばれた。
野球発祥の(後述の元となった物から此れに変化させたとも言える)国で、言わずと知れた世界のスーパースターチーム。また、前回のWBCでは初優勝国でもある。
今大会では、史上最高打者の呼び声高いマイク・トラウトをキャプテンに、魔球とも称された変化球であるエアベンダーを使いこなすデビン・ウィリアムズや、5本塁打11打点の大暴れを見せたトレイ・ターナーといった猛者達が集い、大会前から日本同様に『過去最強』の評判をとる程の錚々たる面子が揃っていた。
その一方で、確かに野手は実力者揃いであったが、その反面、投手力の低さが目立ち(一応、トラウトはクレイトン・カーショウやジャスティン・バーランダー等の実力者にも声をかけていたが当該国の医療資金面やMLBへ集中したい想いもあって出場を辞退されてしまった)、これが祟って1次ラウンドではメキシコに敗れるなど苦戦を強いられ、あわや敗退一歩手前のギリギリのところまで追いつめられることとなった。後述の決勝戦でも投手力の差が明暗を分けたと言われている。
今大会では日本の決勝戦の相手であり、WBC初となる日米戦による最終決戦が繰り広げられた。
また、普段は大谷とともにエンゼルスでプレイしているトラウトが、最終回2アウトにて直接対決(しかも走者なしの完全な一騎打ち)を繰り広げ、フルカウントまでもつれ込んだ熱戦の末に、最後は大谷が三振でトラウトを討ち取ってゲームセット…という決着の着き方がまるで漫画のような展開として話題になった。なお、両者は決勝戦を告知するフライヤーを飾り、入場行進でも共にチームの旗手を務めるという、これまた漫画のようなお膳立てもなされている。
実際に戦った選手達もほぼ同じ気持ちだったらしく、後々のインタビューでは皆口を揃えて「こんなことがあるのか」と答えた。
ここにはさらに裏話がいくつもあり、選手達は栗山が頭の中で立てていたダルビッシュ→大谷の継投については一切知らされておらず、戸郷が7回に投げる準備を始めた辺りでようやく気付いたという。大谷バッテリーを組んだ中村悠平はブルペンですら大谷の投球を受けたことがなく、ほぼぶっつけ本番だった。ついでにその中村はトラウトが打席に入った時大谷の試合前の声出しで言った「憧れるのをやめましょう」という言葉を忘れ、二人の対決に完全に憧れていたと明かしている。
- ベストメンバーを選べず、結果も準優勝に終わったアメリカ代表だが、MLBの観客動員数は大会後増加するなど良い影響を残したようだ。さらには、2028年開催予定のロサンゼルス五輪には追加種目として2大会ぶりに野球が選ばれることとなった。
- MLB選手参加確約書提出したが、シーズン中の開催のため、MLBも選手の派遣には未だ消極的な姿勢だが、一方で野球というスポーツ全体の発展と威信をかけてアメリカもベストメンバーを選びたいという動きも確かにあり、ここから5年にかけて綿密な交渉や次回WBCではファイナルトーナメントの舞台が一律でアメリカに定められ、今回より本格化させた規程(投手については声掛け最大回数が5回から4回に減少、18秒以内に投げなければボールが1つ追加される等)にした上でテスト大会としての役目が予想される。
- ベストメンバーを選べず、結果も準優勝に終わったアメリカ代表だが、MLBの観客動員数は大会後増加するなど良い影響を残したようだ。さらには、2028年開催予定のロサンゼルス五輪には追加種目として2大会ぶりに野球が選ばれることとなった。
その他
プールA
- キューバ代表
お馴染み世界最強のアマチュア軍団。
日本のプロ野球でもなじみ深い選手たちの奮闘が話題に。
中日のフランク・アルバレス(育成)、ジャリエル・ロドリゲス、ライデル・マルティネス、ソフトバンクのリバン・モイネロら投手、捕手は日本ハムのアリエル・マルティネス(昨年まで中日でプレー)、フリーエージェントのアルフレド・デスパイネ外野手(元ロッテ・ソフトバンク)、ジュリスベル・グラシアル外野手兼内野手(元ソフトバンク)等の“NPB組”が参加。
WBCを4位で終了後、NPB開幕前にジャリエル・ロドリゲスが予定の飛行機に乗っておらず、行方不明となった。亡命したと見られる。
- オランダ代表
カリブ海にキュラソー島という領土を持ち、ここから多数のMLB選手を輩出してきたヨーロッパ野球の名門チーム。結果的に9位となった本土での野球の歴史も古く、本土の都市ハーレムでは隔年でハーレムベースボールウィークという国際招待試合も開催されている。
- かつてロッテやヤクルトでプレーしたこともあるヘンスリー・ミューレンスが監督を務める。
- しかし幸先良くも…
- この大会を最後にバレンティンが引退。
- パナマ代表
- MLB組は大谷の同僚ハイメ・バリアやジャスティン・ローレンス。他の主力も元MLB選手が多数参加し10位に。
プールC
- カナダ代表
アメリカ国外唯一のMLB球団トロント・ブルージェイズが本拠地を構える国で、元巨人でセットアッパーとして活躍したスコット・マシソンが現役復帰して参加しており、コロンビア打線を9回無失点に抑え、最終的には12位となった。
また、ドジャースでムーキー・ベッツと並ぶ上位打線の一角として活躍していたフレディ・フリーマンもカナダ代表として出場。彼はカリフォルニア州生まれだが、両親がカナダ人であり、カナダ代表として出場する資格があった。曰く、母親を10歳の時に亡くしており、母親に対する思いからアメリカ代表ではなくカナダ代表として出場する選択をしたとのことで、父親は彼の決意を聞いた時、「非常に驚いたと同時に嬉しい気持ちになった」とコメントしている。
- イギリス代表
- クリケットやサッカーの母国且つ野球の元となった「タウンボール」を生み出した。両親が英国人だがアトランタ生まれでマリナーズ傘下の若手有望株ハリー・フォードやシンシナティ・レッズに所属するヒューストン出身の投手イアン・ギバウトといった英国ルーツの選手を揃えて野球へ挑戦。日本がペッパーミルでパフォーマンスしているなら、こちらも負けじとカップを持ったようなティータイムパフォーマンスや、王冠とマントをそろえて戴冠式パフォーマンスといった豪華なパフォーマンスを披露した。
- 16位となった今大会の裏では秋に開催された欧州選手権ではハリー・フォードが最多得点と最多盗塁を記録する大きな躍進を見せ、2007年大会ぶりの準優勝に輝いた。
- クリケットやサッカーの母国且つ野球の元となった「タウンボール」を生み出した。両親が英国人だがアトランタ生まれでマリナーズ傘下の若手有望株ハリー・フォードやシンシナティ・レッズに所属するヒューストン出身の投手イアン・ギバウトといった英国ルーツの選手を揃えて野球へ挑戦。日本がペッパーミルでパフォーマンスしているなら、こちらも負けじとカップを持ったようなティータイムパフォーマンスや、王冠とマントをそろえて戴冠式パフォーマンスといった豪華なパフォーマンスを披露した。
- コロンビア代表
- 18位だった物、G.スニガ投手がメキシコ戦で球速161km/h以上のストレートを連発して三振を奪い、汗もかかずに剛速球を投げるその姿に「試合後ドーピングテストが必要だろ」という冗談がささやかれる程だった。
プールD
- ベネズエラ代表
- 結果的に5位と躍動した南米の雄。準々決勝ではアメリカ相手に大量得点を挙げ、アメリカも終盤T.ターナーの満塁ホームランがなければ敗退していた可能性のあるダークホースぶりだった。
- ベネズエラ国内の野球人気も日本で取り上げられる機会があり、1試合に3万人と東京ドームに劣らない規模の盛り上がりを見せている。
- 結果的に5位と躍動した南米の雄。準々決勝ではアメリカ相手に大量得点を挙げ、アメリカも終盤T.ターナーの満塁ホームランがなければ敗退していた可能性のあるダークホースぶりだった。
- プエルトリコ代表
- 国内の盛り上がりは日本以上だったとも言われ、国内視聴率は60%以上を記録した試合もあった。
- 前回準優勝だったチームで今回は前回優勝に導き出したチームだった1人が今回は此のチームに参戦し準々決勝のメキシコ戦の末6位になった後、強豪打線を討ち取ったエドウィン・ディアス投手がアクシデントで右足を負傷。診断結果は右膝蓋腱断裂でメジャーシーズンも絶望的に。兄の悲劇で人目もはばからずに号泣した弟A・ディアスは兄の思いを引き継ごうと次の準決勝に登板して奮起するが、アウトを一つも取れず無念の降板となった。ディアス兄弟の悲劇は日本にも伝わり、切なさに同情する声も上がった。
- ドミニカ代表
- イスラエル代表
- ユダヤ系アメリカ人のMLB,MiLB(マイナーリーグ)選手をチームに加えて参戦。決して前評判は良くなかったものの、ニカラグア相手に逆転勝利し、初勝利を挙げ、何とか14位を得た。
1次リーグ最下位で大会を事実上の19位に終えたものの、まだ21歳と若く無名だったデュケ・エベルト(ハーバート)投手がかつて日本をも破った強豪国ドミニカのMLB打線を3奪三振で抑え、これに注目したMLBのデトロイト・タイガースが即座に彼とMiLB契約を結ぶというアメリカンドリームが見られた。
大会の試合日程や選手の選出、そして大会ルールの不平等さだけでなく、世界全体(しかも本場のアメリカ国内)での注目度の面では未だに多くの課題を抱える大会ではあるが、集客は第1次ラウンド全体で100万人超と前回大会から2倍近く伸びており、関連グッズ売り上げも第1次ラウンドの時点で過去大会の記録を上回っているという大きな躍進を遂げた。
また、上記のニカラグアのデュケ・エベルト投手、2023シーズン後に多数のNPB選手がMLBで破格の契約金で移籍していったのように、サッカーのFIFAワールドカップで見られるような世界の選手市場としての側面や、日本対チェコ戦のような敵味方関係なく試合後選手へ拍手を送るスポーツマンシップの体現が見られたように、選手たちが参加してよかったと思える大会へと成長する兆しを見せ、低迷が危惧されていた野球界全体には大きな活力を与えたと思われる。
日本においても大谷翔平の活躍を再び日本で見れたことや、ラーズ・ヌートバーの活躍でグローバルに野球を楽しむ視点(ヌートバーはその後森永製菓やZoffとCM契約を結んだ)、漫画やハリウッドを超えたとも言われる優勝までのドラマチックな展開と、選手・ファンを含めて多くの貴重な経験を得ることが出来、これからの野球史において未来永劫語り継がれる大会となることは間違いないであろう。
最後に、日本戦の後、メキシコ代表のベンジー・ギル監督が残したコメントを残しておく。
「日本が勝った。しかし、今夜の試合は野球界そのものの勝利だ」
- エンゼルスの呪い
準決勝のメキシコvs日本、決勝のアメリカvs日本には大谷翔平、マイク・トラウト、パトリック・サンドバルなどの強力な選手が出場しているが、彼らはいずれもロサンゼルス・エンゼルスの所属である。
ただ、肝心のエンゼルスは数々の優秀なスター選手を擁する一方、メジャーリーグ屈指の弱小チームとしても有名であり、それをネタに「大谷・トラウト・サンドバル・フレッチャーがアナハイム刑務所(Angels Prison)から仮釈放」「エンゼルスのスターたちが娑婆の野球を楽しむ」「トラウトは(エンゼルスでは絶望的なので)優勝タイトル欲しさに参加した」等と日米の野球ファンからいじられることになった。
ただし、エンゼルスは他球団と比較して国際大会に主力選手を各国代表に貸し出してくれることに協力的なチームであり、彼らが選手の代表選抜に加わる事を許したことで今大会が過去にない盛り上がりを見せたとも言えることを追記しておく。
一部報道では、大谷のWBC参加に際し、エンゼルスからは「決勝は(メジャーシーズン調整のため)大谷に投げさせないでほしい」という要望もあったとされているが、試合前にエンゼルスのネビン監督が「世界最高の選手2人が出場する試合を見たくない者などいるだろうか?」と期待に胸を躍らせていたのも事実である。
- 真の世界最強チーム?
第一ラウンドから圧倒的な強さを見せ、見事全勝優勝を果たした日本代表だが、練習試合にて中日ドラゴンズとの戦いで2-7の大敗を喫している。今大会のメンバーは、練習試合を含めて中日以外のチームにはすべて勝利している為、日本が優勝したことで更にこの勝利が思いがけない注目を浴びることとなった。
これ故に、真の世界最強チームは中日とまで言われることに。
ただ、この段階では投手も野手も調整中の段階であったこと、大谷・ダルビッシュ・ヌートバーといったメジャーリーガーがまだ試合に出場していなかったこと等も留意する必要はある。もしも侍ジャパンの選手が万全な状態かつメジャーリーガーの合流した状態であれば勝敗の行方は違っていたかもしれない。
- プロ選手たちですら憧れたオオタニサン
日本のプロ野球選手たちも世界規模では優れた選手が揃うが、その彼らですら大谷の打撃には目を惹かれるほどで、子供が憧れのプロ野球選手を見るような目で彼の打撃を見ているシーンは印象的であった。あまりに彼に釘付けになる選手が多かったために、壮行試合で対戦したチームの中には「(気持ちはわかるが)試合に勝とうという貪欲さが足りない」と苦言を呈する監督が出たり、ウォーミングアップ中トレーナーから「集中して!」と注意される者まで出る有様だった。
また、他の国も試合中、大谷と塁で対面すると笑顔を見せたりする場面があったり、チェコ代表ので日本と戦ったサトリア投手は試合後大谷から三振を奪ったボールにサインを求め、応じてもらったことに感激していた(曰く、「このボールは一生の宝物にする」とのこと)。
- 高橋宏斗、シャンパンファイトの悲劇
わずか20歳で世界を相手に好投した高橋宏斗投手だったが、優勝後のシャンパンファイトはアメリカの法律で満21以上でないと飲酒できないため、参加できないという悲劇に見舞われた(しかも本人がそれを知ったのは開始1分前)。それでも侍メンバーは彼を放っておかず、シャンパンが切れた後には水をかけて労ったという。また、帰国後には出元である中日ドラゴンズの立浪監督からドンペリを贈られ、嵐の二宮和也氏からもシャンパンをプレゼントされるサプライズがあった。
- なお、近藤健介とダルビッシュ有はチームの盛り上がりをよそに先にシャワーを浴びており、チームメイトからブーイングされたり、ヌートバーからも「何やってんの近ちゃ~ん!」とイジられた。
- #そろそろ打てや村上
- 出場選手全員がほぼ役割を果たしたと言える大活躍をしている陰で、一人今大会4番を任されながらなかなか活躍できなかった村上を心配する声は国内中に広がり、栗山の采配に対しても「村上と心中する気か」という批判が出たり、本人も能力・メンタルともに絶不調に陥っていた。そこで、参加辞退となっていた鈴木誠也は村上の不調を気にかけ、インスタグラムに動画を投稿してエールを送り、SNSでも村上が鈴木のインスタへのリプライで自身を奮起させるために提案した「#そろそろ打てや村上」のハッシュタグがトレンド入りした。村上はそれを見て奮起したのか準決勝、決勝で勝敗を決する一打を放つ完全復活を遂げた。
- ただし、村上は鈴木から激励の動画を送ってくれるものかと思っていたら、自分が三振してとぼとぼベンチに戻っていくモノマネなど弄るような内容だったため、流石に見た瞬間はスマホを投げそうになったなど困惑したとか。
- 過去には2006年の第一回大会で福留孝介も強打者でありながら不調でチームの不安材料となってしまったが、危機迫った第二ラウンドで代打決勝ホームランを決め(「生き返れ福留」として知られるシーン)、スランプを打ち破った過去があり、福留自身も村上の事を自分の事ように心配していたという。なお、試合で完全復活を遂げた村上はその夜福留にLineで連絡を取っており、気になる内容はというと「ルームサービスの注文の仕方教えてください」だったという。
- 出場選手全員がほぼ役割を果たしたと言える大活躍をしている陰で、一人今大会4番を任されながらなかなか活躍できなかった村上を心配する声は国内中に広がり、栗山の采配に対しても「村上と心中する気か」という批判が出たり、本人も能力・メンタルともに絶不調に陥っていた。そこで、参加辞退となっていた鈴木誠也は村上の不調を気にかけ、インスタグラムに動画を投稿してエールを送り、SNSでも村上が鈴木のインスタへのリプライで自身を奮起させるために提案した「#そろそろ打てや村上」のハッシュタグがトレンド入りした。村上はそれを見て奮起したのか準決勝、決勝で勝敗を決する一打を放つ完全復活を遂げた。
- ゲーム「MLB The Show 23」にて
アメリカのサンディエゴスタジオが開発したゲーム「MLB The Show 23」では今大会を踏まえ、「WBCモード」を実装しており、村上宗隆や佐々木朗希、中国代表で参加した真砂勇介といったMLB未経験選手も追加収録されている。また、パワプロにおけるシナリオモードのようにメキシコ戦の村上がサヨナラを打つ打席や大谷とトラウトの一騎打ちを再現できるモードもあったりする。
ただし、大谷の顔は(去年パッケージの顔にもなったこともあってか)それなりの出来とはいえ、アメリカのゲームなので他の選手の顔はお察しください。しかも村上の打席は一塁が何故か周東ではない(吉田正尚のままになっている)為史実通りの打球でもホームまで間に合わなかったりするし、日本ベンチにはヌートバー以外の謎の外国人選手がいたりする。
- ゲーム「プロ野球スピリッツ2024-2025」にて
日本のリアル系野球ゲームプロ野球スピリッツの最新作「プロ野球スピリッツ2024-2025」でも今大会仕様の侍ジャパンチームが収録されている。
今現在他国のナショナルチームは実装されていないので、あくまで大谷翔平や山本由伸といったMLB組を最初から使えるおまけ要素的な立ち位置となる。
しかし、MLBの権利関係かThe Showとはまた別の問題を抱えており、例えばNPBに加入経験のないヌートバーは未収録、更には今大会出場予定だった鈴木誠也や候補に名前が挙がっていたオブザーバー選手(万波中世など)もメンバーにいない為正規の外野守備が2人(近藤、吉田のみ。牧原は大会では外野についていたが、本職は内野)しかおらず、総動員されて交代枠がほぼいない(一応サブポジで周東がおり、大谷、岡本も低ランクだが配置できなくはない)など、史実の完成度が嘘のような欠陥の多い編成になってしまっている。
- 国民が一丸となって応援していた日本
エリアごとに熱気の分かれるアメリカに比べ、日本では連日WBCの報道がメディアを占拠しており、侍ジャパンの活躍に選手たちの出身チームはもちろん、サッカーやバスケットボールといった別種目のプロ選手たちが歓喜している様子もネット上に出回っていた。阪神甲子園球場では春の選抜甲子園大会の試合中であったにもかかわらず観客が突然拍手喝采を送るハプニングまで発生していた。
- すべてはWBCから始まった?過去最高に盛り上がった2023年シーズンの野球
WBC閉幕後は、当然ながら“WBCロス”に陥る野球ファンが続出したが、いざ2023年シーズンが始まると、それに続けと言わんばかりに次々と熱いドラマが繰り広げられることとなった。
- 横浜DeNAベイスターズの助っ人外国人として、2020年にサイ・ヤング賞を獲得した実績もある名投手:トレバー・バウアーが加入。闘志をむき出しに圧巻の投球で相手をねじ伏せていくプレースタイルと、シュールでどこか中毒性のある動画を投稿するYouTuberとしての二面性が大きな話題を呼び、その年のオールスターゲームにもプラスワン投票で圧倒的得票数で選出される程の人気選手となった。
- 夏の全国高校野球選手権大会で、奇跡の打者率いる慶應義塾高校が107年振りの優勝を果たし、“慶応旋風”を巻き起こした。チームのスローガンである“エンジョイ・ベースボール”も注目された。
- ロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手が(日本人を含む)アジア人選手初のメジャー本塁打王(ア・リーグ)になり、2021年以来2年振りのア・リーグMVP、さらには自身初のハンク・アーロン賞にも輝いた。
- さらに、同年年末にフリーエージェントとなり、プロスポーツ史上最大となるる10年総額7億ドル(1015億円)の超大型契約でロサンゼルス・ドジャースへと移籍した。
- 日本プロ野球で、阪神タイガースが18年振りのリーグ優勝・38年振りの日本一を果たした。
- 日本シリーズの対戦相手も同じく関西を拠点とするオリックス・バファローズであり、59年ぶりとなる関西勢同士の頂上決戦に関西地域は熱狂に包まれた。
- 11月開催のアジアプロ野球チャンピオンシップで日本代表が優勝を果たして2連覇を達成。
- シーズン終了後、侍ジャパン優勝メンバーである山本由伸、今永昇太、松井裕樹がMLB挑戦を表明(侍ジャパン以外では北海道日本ハムファイターズの上沢直之も該当)。
- 2023年最後まで感動は続く
上記のシーズン通しての野球の盛り上がりもあってか、3月の優勝から年末に至るまで日本国内のWBC熱は続き、チームの軌跡を追った特集番組が何度も組まれ、6月には侍ジャパンのドキュメント映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』が公開され、17億円近い興行収入を記録する大ヒットとなった。
- ペナントレース、MLBシーズン終了後には日本シリーズやアジアチャンピオンシップに侍ジャパン選手がゲスト解説席に現れたり、ヌートバーも再び来日している。
- そして、大晦日には『WBC2023 ザ・ファイナル』という2023年最後のWBC特番が放送され、これまで明かされていなかった裏話や、これまで今回のWBCについてほとんど口を開いていなかったイチローへのインタビュー映像などが公開された。
- 欧州野球発展のターニングポイントとなるか
今大会は欧州チームの躍進が目立ち、チェコ、イギリス、イタリアはいずれも1勝以上勝利して次大会への参加資格を手にしている。
大会後の運営責任者も「将来ヨーロッパの野球が発展したのは今大会がきっかけだと言われるようになるだろう」と発言している通り、その成果は同年9月の欧州選手権の観客動員数や各国のパートナーシップや選手の移籍という形で少なからず現れている。
日本、欧州各国共にこの大会(特にチェコとの試合)をきっかけにお互いの野球それぞれに注目する様子が見られ、翌2024年の3月には欧州選抜と侍ジャパンの試合が組まれた。
鈴木誠也のケガを受けて緊急招集された俊足かつ器用なユーティリティプレイヤー。主に終盤の代打や守備固めで起用され、決勝では大谷の真後ろ(センター)から勝利の瞬間を見届けた。実はメキシコ戦の9回裏で村上の代打で送りバントの準備を指示されていたが、これ以上にない緊張感で打席に立てる状態になく、それを城石コーチが察したことで結果的に村上のサヨナラ打に繋がった。
後に打席を村上に任せると聞いた牧原は「そうです、それがいいですよ」とプロ野球選手らしからぬ他力本願な返答をしていたことが明かされている。
予選中に栗林が離脱することになり、緊急収集を受けたオリックス・バファローズの投手。
しかし、調子もわからないまま決勝トーナメントにぶっつけ本番で登板させるのはリスクがかなり大きく、結局出番がないまま大会を終えた。
そのせいで帰国後は山本由伸にマイアミ旅行と弄られている。
本大会で侍ジャパンが見せたチームセレブレーション。元はカージナルスで行われていたもので、ヌートバーがチームに持ち込んだことがきっかけで日本で一大ブームとなった。
前年度の体調不良で一時出演そのものも危ぶまれたが、奇跡的な復活で今大会の侍ジャパン公認サポートキャプテンに選ばれる。語彙力にさらに磨きがかかっており、決勝戦で彼が大谷の姿を評して言った泥だらけのストッパーは大会屈指の名言となった。2023年大晦日に放送された『WBC2023ザ・ファイナル』ではメイン司会を務めた。
前年引退した野球の上手い芸人。当時無職。
現役時代の恩師だった栗山監督を含め、昨年の引退試合では多くの侍ジャパンメンバーからも胴上げされた。今回はテレビ局から声がかかり、大会前から選手たちを取材したり(こっそり映画『憧れを超えた侍たち』にも出演している)、準決勝以降はTBSに応援レポーターとして派遣された。
優勝後会見ではかつてチームメイトだった大谷に「僕のこと覚えてますか?」と質問するも「まぁ、なんとなく」と軽くあしらわれる弄りを受けた。なお、杉谷によると会見が終わった後で栗山氏から「記者会見の場でああいう個人的な質問をするな」とこっぴどく叱られたとのこと。
自身のYouTubeチャンネルで決勝戦前に「アメリカと日本が戦い、最後に大谷が登板し、トラウトから三振奪って世界一に」と半ば希望のような予言が全て的中し、試合後には本人曰く「『北の国から』の最終回以来」の大号泣をしてしまったという。彼の他にも爆笑問題の田中裕二がほぼ同じ内容の予言をしている。
試合中に観戦している様子が一瞬映った。
現役でメジャーで活躍する選手だが、メキシコ戦にて千賀滉大選手と共に観戦に来ていた様子が移された。
当初はメンバー入りを打診されるもケガにより断念。しかし彼が使用する予定だったユニフォームは球場に持ち込まれ、優勝メダル授与式でもメダルをかけられる。一方で、顔写真を貼られたり負傷箇所に絆創膏を張られたりして遊ばれたりもしていた。しかもユニフォームの背番号が51でSUZUKIだったせいで、アメリカではイチローのものと勘違いされていたらしい。
- 千鳥:
大会開催前に持ち番組の「テレビ千鳥」の中で侍ジャパン野球盤で遊んだ際に、切羽詰まったノブが「大谷にバントをさせる」と発言(イラストも用意された)。その後、イタリア戦で本当に大谷がバントを敢行したためネット上で大きな話題となった。ちなみに大谷のバントは本人の独断だったという。
『黒子のバスケ』の登場人物。決勝前、大谷翔平がチームメンバーを鼓舞する際に、今日だけは憧れるのをやめましょう。と、劇中での彼の名セリフである憧れるのはもうやめる。と似たスピーチをしたことで話題になった。
昨年のサッカー日本代表で監督を務め、こちらも劇的な快挙を成し遂げた。大会前に栗山監督と何度か対談しており、その中で代表チームにおけるコミュニケーションの取り方等を伝授したという。