ドイツは俺たちに負けるなんて1ミリも思ってないぞ。
絶対チャンスあるから、そこに絶対隙あるから。
皆で行こう。
歴史変えてきた奴は絶対勇気持って前進してきた奴だけだからな。
今日俺たちは、歴史変えよう、OK!
よし行こう!
-吉田麻也、ドイツ戦試合前のロッカールームにて-
概要
『ドーハの歓喜』とは、カタールで開催されている「FIFAワールドカップ2022」グループステージ初戦でFIFAランキングで格上であるはずのドイツを2対1で下し勝利するという歴史的快挙、並びにその後同じく優勝候補のスペインを破って決勝トーナメント進出を果たしたことを称える言葉。
詳細
2022年11月23日。
FIFAワールドカップカタール大会グループE、日本対ドイツ戦。
グループステージ初戦となる試合の舞台となったのは、カタールの首都ドーハ近郊の都市ライヤーンにあるハリファ・インターナショナル・スタジアムである。
日本代表を率いるのは「ドーハの悲劇」出場メンバーであった、森保一。
日本にとっては勝利は難しくとも引き分け、最悪でも惨敗だけは避けたい優勝回数4回を誇るドイツとの試合であった。
日本時間22時にキックオフ。
前半効果的にパスを散らしスペースを作り出すドイツに翻弄され、エリア内に侵入を許しPKを献上。
このPKをキッチリ決められ、無失点でのドローは無くなり追いかける展開となった。
前半戦の中継を観て、「こりゃドイツの勝ちだろ…」と寝に入った者は衝撃を受けることになる。
迎えた後半。
日本は守備を一人下げ、攻撃に6人を充てる超攻撃的布陣へとシフト。守備要員は3CBとボランチ1人、それ以外は守備の選手が務めることの多いポジションにも攻撃の選手を投入した。
するとこの采配が当たり、後半30分にドイツゴール前の混戦から流れてきたボールを堂安律が押し込み、同点。
さらにその8分後。日本ゴール付近でのドイツのファウルから得たFKで蹴りこまれたロングボールを浅野拓磨が巧妙にトラップし、マークについていたドイツDFリュディガーを振り切り名手ノイアーの横をかすめるようにして角度のないところから撃ち込んだシュートはマウスに吸い込まれ、日本が逆転に成功する。
アディショナルタイム7分が付き、ドイツも必死の形相で攻め入る。危ういシーンが何度かあったが、日本が耐えきり試合終了。
なんと日本としては103年ぶりとなる対ドイツ戦の勝利となった。
1994年に初のワールドカップ出場を逃した忌まわしい記憶の地で、優勝回数4回を誇る超格上相手に奇跡の大逆転勝利。日本サッカーにおいて歴史に残る一戦となった。
なお日本代表チームがW杯の本戦にて優勝経験のある国から勝利を挙げたこと、及び先制を許した状況から逆転勝ちを収めたことは共に初の快挙であった。
ラテ欄にて
実はこの日、テレビ中継を担当していたNHK総合のラテ欄には縦読みが仕込まれており、そこに書かれていたのは「ドーハを歓喜の地に」であった。
日本とドイツのその後
日本代表は続く第2戦でコスタリカ代表に0対1で敗れるも、スペイン代表相手の第3戦(この試合もライヤーンのハリファインターナショナルスタジアムで行なわれた)にて2対1の逆転勝利を収め、大会前には「組合せの時点で日本終了」とまで言われていたE組を2勝1敗の勝ち点6としてなんと首位で突破。かつてのトラウマを完全に払拭した。
一方、ドイツ代表は前大会のグループリーグ第3戦で韓国代表にも敗れており、4年越しながらW杯の舞台で対アジア勢2連敗を喫したうえ、最終的にはこの敗戦が響く形となり、スペイン代表とは1勝1敗1分の勝ち点4で並びはしたが得失点差で「5」届かず、2大会連続のグループリーグ敗退という屈辱を味わうことになった。
なお、スペイン代表に対してはノックアウトステージ(決勝トーナメント)でブラジル代表と当たることをギリギリまで避ける為に、敢えて日本を勝たせて2位通過を狙ったのではないかと訝しむ声も挙がったようである(とは言えブラジルも負傷者が出たりと決して絶好調ではなく、下記のようにジャイアントキリングが連発している状況では、勝ち癖をつけておかないとなかなか厳しいため、あくまで推測であることには注意されたい。事実、スペインは、その後日本と同様にPKの末、今大会乗りに乗っていたモロッコに敗北してベスト16で敗退した。その後モロッコはアフリカ勢初のベスト4まで進んだ)
日本は決勝トーナメントで前回準優勝のクロアチアと対戦、前半に前田大然のゴールでリードするものの後半に追いつかれて延長戦にまでもつれ込み、PKの末に敗退した。
結果は前回と変わらずベスト16止まりだったが、AbemaTVで解説をしていた本田が「ドイツに勝った、スペインに勝ったっていう記録はこの4年間残り続ける」というように、日本代表は大きな爪痕と次回への大きな希望を残してカタールを後にした。
大会後のドイツ代表は翌2023年5月、9月に日本を招待しヴォルフスブルクで親善試合を開催すると発表。親善試合ではあるものの、実際にはEURO(UEFA欧州選手権)2024の自国開催に際して士気向上の一環としてドイツサッカー連盟(DFB)が目論んだ実質的なガチのリベンジマッチでもあった。その力の入れようは、渡航費宿泊費をはじめドイツ持ち且つ試合料1億円の支給と言う破格待遇。そしてドイツの本拠地で完全アウェー状況下において日本にリベンジして士気を高めようと言う算段であった。当然、実質的に監督のハンジ・フリックのクビも賭ける事になるのだが、なんとW杯後の成績は1勝1分3敗とペルー代表に勝利しただけ。特に招待発表後はポーランド・コロンビア各代表に連敗した上での日本戦であった。もちろん、流石にもう二度も奇跡は起きないであろう、そう思われていた。そんな状況の中で行われた9月10日(現地時間9日夜)の試合、日本はなんと前半だけで1-2とリード、さらに後半終了間際にも2得点を決め、1-4とドイツを返り討ちにしてしまった。無論満員御礼のリベンジマッチで4失点大敗と言う一件に観客の大ブーイングなどドイツ国民は怒りと絶望のムードが漂い、現地メディアは『壊滅的』『悪夢と屈辱が再び』『途方に暮れる結果』等と酷評の嵐を浴びせた。
これには当の仕掛け人であるDFBも大激怒、監督のハンジ・フリックは続投する意思を示していたが翌日に有無を言わさず解任が発表され、文字通り日本に引導を渡されてしまった。ちなみにフリックはDFBの123年の歴史上、初めて代表監督を解任された人物になってしまった。
その後、ドイツは次のフランス戦を暫定監督のルディ・フェラーが指揮を執り2-1で勝利した後、ナーゲルスマン新監督を迎えてEUROに向け再起を図っている。
一方の日本は、ドイツ戦の3日後に行われたトルコ戦に大幅にスタメンを入れ替えた上で臨み、4-2で快勝。
この試合が引き金になりトルコ代表のシュテファン・クンツ監督も解任の憂き目に遭い、2試合連続で対戦国の監督を解任に追い込んだ事が(奇しくも両者ともドイツ人)世界のサッカーファン/関係者にも大いに話題となった。
各国の反応
グループリーグの組み合わせが決まった直後、日本国民はほぼ終戦ムードでW杯を待つようなお通夜状態だった。日本メディアでは「死のグループ」と表現されたが、世界的には実質2強の争いで、多くの海外メディアが結果はスペインとドイツの1、2位争いになるだろうと予想した。
それだけにこの大番狂わせは世界中、特に欧州で注目を浴び、特にイタリア、イギリスといった多数のサッカー大国メディアが取り上げている。
・イタリア
「ありがとう日本!」
-イタリアのフットボールメディア「Italian Football TV」の公式ツイート-
ドイツが日本に敗北した後、公共のフットボールメディアが上記のような少々やりすぎにも見えるツイートをしており、日本でも驚きの声が見られた。また、スペイン戦では公共放送「Rai 1(ライ ウーノ)」で元体操選手で金メダリストのユリ・ケキが日の丸ハチマキをしてまで日本を応援し、(勝利した事でドイツの予選敗退が決まった為)勝った直後にはバンドグループが日本の勝利を祝い、しまいにはなんとテレビ局にノーギャラでいいと乗り込んで来たバンドを使い、ドイツのシンセポップバンド"アルファヴィル"の「Big in Japan(1984年)」を演奏し出してドイツを皮肉ると言うカオスな展開に。
また、国旗の日の丸端に黒い縦ラインを引いて「これ新しい日本の国旗な!」とスペイン戦で大きく物議を醸したラインとボール判定を交えた(皮肉った?)ジョークを飛ばし、世界中のミームになった。
※画像はイメージです。
…というのも、イタリアは自国がヨーロッパ予選で敗退(しかも2大会連続で敗退)したこともあってか、他国の連中、特にドイツとイングランドから煽りに煽られまくっていたせいで、イタリア国民はキレていた。そのせいか今大会には他の欧州列強、特にドイツとイングランドに対して「俺たちは地獄に落ちた!お前らも地獄に落ちろ!」とでも言わんばかりに嫉妬と逆恨みの炎を燃やしていたらしく、日本の活躍以上に欧州サッカー大国の敗北を望んでいた様子。実際にドイツは地獄へ墜ちた為、大歓喜していたのだ。
・イギリス
「なんて奇妙なワールドカップだ!なんて奇妙な試合だ」
-元イングランド代表クリス・サットン-
「フットボールはシンプルなゲームだ。22人の男が90分ボールを追いかけ、最後にはいつもドイツが勝つ。 もしドイツがグループリーグを突破していたらね」
-同じく元イングランド代表ゲーリー(ギャリー)・リネカー-
別のグループではイングランド対ウェールズとUK同士の激戦を繰り広げているイギリスでもそのニュースは衝撃と共に飛び込み、リアルタイムで伝えられた。
実は英王手メディアのBBCでは試合前、上記のサットンがこの対戦カードに対し、「技術的に才能のある選手を擁する日本を軽視するわけにはいかない。ドイツも過去12カ月はチームのまとまりが不安定だった」とコメントし、試合は2-1で日本が勝つと予想し見事的中させた。
一方、日本対スペインの試合が終了した直後、BBCは「日本が勝ったのでドイツが敗退」と速報を上げ、現役時代にドイツ(当時は西ドイツ)に散々苦しめられたリネカーはドイツのグループリーグ敗退を聞いて上記の「~ドイツが勝つ」という過去の自分のコメントに付け足しを行い、アラン•シアラー、マイカ•リチャーズといった代表経験者と共に大爆笑している動画をTwitterに上げるという炎上必須レベルの畜生ぶりを見せていた。どんだけドイツが嫌いなんだよこの国…
(ちなみにリネカーはJリーグ開幕前後の1992-1994年に、名古屋グランパスエイトに所属した事もある)
・フランス
「この大会で多くのサプライズを目撃しました。まずアルゼンチン、そしてたった今ドイツが日本に負けました。」→「は?そうなの??」
-記者→ウスマン・デンベレ W杯日本−ドイツ戦直後-
欧州列強の一国で本大会優勝チームであるフランスの膝元でも衝撃をもって伝えられ、特に上述のようにフランス代表のウスマン・デンベレが会見中にドイツの敗北を知らされた際にはなにかの聞き間違いではないのかと言った表情で驚いていた。また、柔道大国なだけに、この出来事を柔道の母国であることを
ヨーロッパ以外
・韓国
「ドイツで走る侍2人、戦車軍団に匕首(あいくち)を刺す」
-朝鮮日報-
メディアでも日本を褒めることが少ない韓国だが、今回ばかりは「アジアに突風が吹き荒れています」とアジアサッカー仲間の躍進として高く評価している様子。ちなみに韓国もロシア大会でドイツを破っている。
韓国は、今大会ではガーナ戦で痛恨の敗北を喫した上に(FIFAランキングの両軍の差からしても、日本がコスタリカに敗北した以上の衝撃である)、監督がレッドカードで退場させられ、決勝トーナメントに進むにはその圧倒的不利な状況で勝つしかないという背水の陣であったが、メッシと並ぶ世界最高峰のFWであるC・ロナウドを擁するポルトガルを試合終了直前のアディショナルタイムに決めたゴールにより逆転し、2-1で破るジャイアントキリングを達成した。
・ブラジル
「日本の見事な逆転勝ち。ドイツを倒してくれて、溜飲が下がった」
-SporTVの解説陣-
過去に母国開催の大会で1-7で敗北、その後ドイツが優勝したためにその恨みは相当に深く、上記にある通り韓国がドイツに勝利した際にもその敗退を喜んでいたが、今回もまた、喜ぶこととなった。
加えて、前日にはアルゼンチン代表がサウジアラビアに逆転負けし、翌日にはコスタリカが7失点無得点と言う上記の惨劇時よりも広い点差で敗れたため、「ライバルが負ける→母国で恥を晒させられた国が負ける→その時以上の差のゲームが起こる」という、自国のゲームでもないことで3つも喜ばしいことが起こる事態となった。
余談
ワールドカップにおいてこのようなジャイアントキリングは滅多にないがよくあること(実際に過去、世界的に見てもサッカー新興国である日本が決勝トーナメントに進出するには、ヨーロッパや南米の強豪との実力差を考えると、大抵このような大番狂わせが必要だった)ではあるものの、今大会はそれにしても数が多い。
日独戦の前にはサウジアラビアが世界最高峰のFWメッシを抱える優勝候補の一角アルゼンチンを破り、国王がその勝利に喜び翌日を祝日に定めてしまった程(最終的にはポーランドとメキシコに敗れ、無念のグループリーグ敗退とはなってしまった)。
グループDでは日本と同じアジア・オセアニア枠のオーストラリアがデンマークとチュニジアを破り(そのチュニジアも同グループのフランスに勝利している)、4大会ぶりの決勝トーナメント進出を果たすなど予想外の結末が続いた。しかし、決勝トーナメントでは、その後復調したアルゼンチンに対して苦戦、2-1で敗れまたしてもベスト16止まりとなった。
グループFでは、当グループ内では前評判が低かったモロッコが、前回準優勝国のクロアチアに善戦し引き分け、そしてFIFAランキング2位のベルギーに2-0で勝利という当大会でも最大級のジャイアントキリングを達成、更にカナダをも下し、結果2勝1分けの1位通過を成し遂げた。一方、ベルギーは、この敗戦が祟り、まさかのグループリーグ敗退という屈辱の結果となった。
そして、その勢いのままモロッコはスペインとポルトガルを決勝トーナメントで撃破しベスト4以内を確定させ、準決勝でのフランス及び3位決定戦でのクロアチアとの再戦に破れたものの、アフリカ勢史上初のベスト4という偉業を成し遂げた。
更に、グループHでは、上記の通りに韓国がポルトガルに勝利し、古豪ウルグアイを押し退け大逆転で決勝トーナメントに進んだ。その後は、ブラジルとの大一番に挑むも、ネイマールが復帰したこともあってか勢いを取り戻したブラジル相手に序盤から終始劣勢となり、結果4-1と格の違いを見せつけられたかのように歯が立たず完敗。ベスト16止まりに終わると同時に、決勝トーナメントに進んだアジア・オセアニア枠3国が全て敗退し、同枠が全滅するに至った。
また、これとは別に、グループGでも、結果的にはグループリーグ敗退とはなったものの、カメルーンがFIFAランキング上位の強豪ブラジルに勝利して一矢を報い衝撃を与えた(最もネイマールの欠場が響いたこともあるだろうが)。
1966年のイングランド大会からワールドカップで試合中の細かいデータが取られるようになって、700回以上のパスを行ったチームが試合に負けた前例はこれまでなく、ドイツ対日本とスペイン対日本の二つはその唯一の例外として記録されることになった。
これはボールポゼッション(支配率)にも顕著に表れており、日本はドイツ戦で28%、スペイン戦は17.7%と最低記録(もちろん勝利時)だった。
森保監督は試合中ノートに何かを書いており(一説では後半の作戦プラン変更に関する内容だとか)、後半はチームの動きが前半と全く別物になることから、海外では「DEATHNOTE」と恐れられたという。また、今回の成果を受けて異例の代表監督続投(2年間)を打診され、正式に決定された。ちなみにW杯で指揮を取った代表監督の大会後の続投は森保氏が初である。
サッカーW杯の後、こちらも近くWBCという大きな世界大会を控えている野球日本代表の栗山監督は「サッカーの試合を見させてもらって、今回は今までのように日本頑張れみたいなことは全然なかった。見ながら気持ち悪くなって、吐きそうになった」と代表監督としての重圧を共感していた。野球において日本はアメリカと並んで強豪の一角であり、サッカーのドイツやスペインのように優勝を期待される立場でもあるため、ジャイアントキリングされる側の気持ちも感じていたのかもしれない。
こちらも本大会で14年ぶりの優勝に返り咲くという劇的な形で幕を閉じた。
さらに余談
pixivではドイツ出身という設定であるウマ娘のエイシンフラッシュが(メイン画像も含め)ショックを受けているイラストが複数投稿されている。アプリゲームによると彼女はサッカー好きらしく、季節ごとに変わるメイン画面のボイスでは「秋にはサッカーをしたい」とも言っている。
現実ではドイツ戦の数日後にエイシンフラッシュ産駒のヴェラアズールがG1ジャパンカップに勝利しており、一度サッカーは隅において息子の勝利を喜ぶ(ウマ娘公式内では親子関係は一切存在しない)イラストが投稿されるが、ドイツ敗退が確定してまた暗くなり、果てはバスケットボールに走るなどのイラストが投稿されるという感情のジェットコースターが続いた。詳細はセイシンクラッシュを参照。
また、スペイン戦における三笘の1mmがギリギリ線を越えていない表現として使われるようになった。
関連タグ
FIFAワールドカップ カタール ドイツ ドーハの奇跡 三笘の1mm
ドーハの悲劇:本タグの元。本件は日本にとっては確かに「奇跡」で「歓喜」だが、ドイツにとってはその後の結末も含め、紛れもなくこちら。