概要
八咫烏の呪いとはFIFAワールドカップに於ける『優勝出来ない』系のジンクスの1つで、サッカー日本男子A代表が初出場した1998年のフランス大会以降、W杯の本大会で日本と対戦した国および地域は優勝出来ないと云うものである。
日本神話では神の遣いとされる八咫烏がジンクスの名前に使われているのは八咫烏がJFA(日本サッカー協会)のシンボルに起用されているからであり、陰謀論ネタに出て来る秘密結社との関連は無い。そもそも、そのような組織が実在したとしても、たかだかサッカーの勝敗如きで相手を呪うようなことは無かろう。
解説
このジンクスは、日本代表と対戦した国(および地域)は、対戦が組まれた当該大会のみならず、それ以後の大会でも優勝出来なくなるとして話題になった。
過去にワールドカップを制覇したことがあるブラジル代表(2002年大会までに5回優勝)やドイツ代表(西ドイツ時代を含め4回優勝)でさえも日本代表と当たった大会以降の優勝は無く、日本との対戦前に2度(1978年と1986年)の優勝を経験しているアルゼンチン代表も1998年の対戦以後は24年(6大会)優勝から遠ざかっていた。
しかし、バロンドールの呪いやコンフェデの呪い、ペレの呪いやミック・ジャガーの呪いなどと比べるとその知名度が劣る。
これはワールドカップに於いて日本代表チームの初出場が1998年と比較的遅く、その後も目立った戦績を残していないことから、他の国にとって「勝ち点3を獲るのは当たり前で、如何にゴールを量産するか」を競うボーナスゲームとしか認識されていないため、また日本側は日本代表チームの直近の勝ち負けにしか注目が集まらず、対戦相手のその後の結果を気にする人間が少ないため、さらには『マイアミの奇跡』で知られる1996年夏季オリンピックではナイジェリア代表が日本代表と直接対戦しながらも当年の大会で金メダルを獲得していることから『日本と対戦しただけで優勝出来なくなるなんて有り得ない』と考えられたなどの理由が挙げられる。
2022年の大会でアルゼンチンが優勝したことで『一度日本と対戦したら二度と優勝できない』ことは無くなったが、『日本と対戦した大会では優勝できない』ジンクスは未だ健在である。
歴史
その起源は2010年に南アフリカ共和国で開催されたW杯の決勝戦にてオランダがスペインに敗れ準優勝となった際、ヤフコメにて「オランダが負けたのはグループリーグで日本と対戦したからだったりして」と云う旨のコメントが投稿されたことだと推測される。当時は「そう思わない」が数票付いた程度で大して注目されることもなかったが、その後のW杯で、日本代表と1998年の大会で対戦した国(2014年はアルゼンチン、2018年はクロアチア)が相次いで準優勝に終わったことから、過去の日本代表とその対戦国の戦績を掘り返す者が現れ、日本代表と対戦するとW杯で優勝できなくなるジンクスが認知され始めた。『八咫烏の呪い』の名前も2014年頃から使われていると思われる。
そしてピクシブ百科事典に本記事が立項されると「ピクシブ百科事典はWikipediaほど知名度は無いからパクってもバレないだろう」と高を括った人物が当時の文面を選報日本へコピペ(現在は削除)したり月刊ムーへ投稿したり、YouTuberが動画を作成するなどして徐々に拡散したようである。
しかし、2022年の大会ではアルゼンチン代表が表裏両方のジンクス(後述)に絡むことになり、どちらかの法則が崩れることが確定してしまう。アルゼンチンは最終的に優勝を果たしたことで『日本と対戦した国は二度と優勝できない』と云うこのジンクス最大の特徴は崩れ『日本と対戦した国はその年に優勝できない』と云う平凡なジンクスに格下げとなった。
裏・八咫烏の呪い
日本との対戦国に纏わるジンクスにはもう1つ、決勝トーナメントで日本を破ってベスト8入りした国は、その年の大会を制する国に敗れると云うものがあり、こちらは継続中である(参照)。
2022年のアルゼンチン優勝による表の“呪い”が消えた陰には、こちらの“呪い”の存在があったからかも知れない。
- 2002年 - トルコは、準決勝でブラジルと当たり敗退
- 2010年 - パラグアイは、準々決勝でスペインと当たり敗退
- 2018年 - ベルギーは、準決勝でフランスと当たり敗退
- 2022年 - クロアチアは、準決勝でアルゼンチンと当たり敗退
八咫烏に呪われた国と地域
現在継続中の国
クロアチア - 1998年,2006年,2022年に対戦
ジャマイカ - 1998年に対戦
ベルギー - 2002年と2018年に対戦
ロシア - 2002年に対戦
チュニジア - 2002年に対戦
トルコ - 2002年に対戦
オーストラリア - 2006年に対戦
ブラジル - 2006年に対戦
カメルーン - 2010年に対戦
オランダ - 2010年に対戦
デンマーク - 2010年に対戦
パラグアイ - 2010年に対戦
コートジボワール - 2014年に対戦
ギリシャ - 2014年に対戦
コロンビア - 2014年と2018年に対戦
セネガル - 2018年に対戦
ポーランド - 2018年に対戦
ドイツ - 2022年に対戦
コスタリカ - 2022年に対戦
スペイン - 2022年に対戦
呪いを打ち破った国
女子サッカー、ビーチサッカー、U-20年代などで既に前例はあるが、此処では男子A代表に関してのみ取り上げる。
- アルゼンチン - 1998年に対戦、2022年に優勝
W杯に纏わるその他の「呪い」
バロンドールの呪い
大会前年度にバロンドール(ヨーロッパの最優秀選手に贈られる賞)を受賞した選手が所属する国は優勝出来ない、と云うジンクス。
コンフェデの呪い
W杯開催前年度のFIFAコンフェデレーションズカップで優勝した国は、翌年のワールドカップ本大会で優勝出来ないと云うジンクス。
なお、この呪いは遂に解かれることが無いままコンフェデレーションズカップは2017年大会を以て廃止された。
ペレの呪い
サッカー界のレジェンド、ペレが優勝候補として挙げた国はグループリーグで敗退する、と云うジンクス。グループリーグを突破出来たとしても、その国は当該大会で優勝出来ない。
ミック・ジャガーの呪い
ミュージシャンのミック・ジャガーが応援する国は負けると云うジンクス。2014年大会のミネイロンの惨劇(ブラジル 1―7 ドイツ)にて、ミックがブラジル代表を応援していたことなどで知られる。
モナコGKの呪い
フランスのサッカークラブ、ASモナコに在籍するゴールキーパーが代表入りしている国は優勝出来ないと云うジンクス。2006年大会から4大会連続で当該国は決勝戦で敗退を喫している。
赤い悪魔の呪い
グループリーグでベルギーと同組に入った国は当該大会での優勝どころか決勝戦へ進出も出来ないと云うジンクス。
2022年の大会ではベルギーと同じ組から勝ち上がったモロッコとクロアチアの2か国がベスト4まで残っていたが、どちらも準決勝で敗退した。
ユーゴスラビアの呪い
ブラジル代表はグループリーグでユーゴスラビアと同組に入った大会で優勝出来ないと云うジンクス。ユーゴスラビアが分裂した後も、構成国だったクロアチアとセルビアがこのジンクスを引き継いでいる。
ジーコの呪い
ブラジルは何らかの形でジーコが出場した大会では優勝出来ないとするジンクス。これまでにジーコは選手として3回、コーチとして1回、他国(日本)の監督として1回W杯に出ている。