概要
『宇宙大怪獣ドゴラ』とは、1964年公開の怪獣特撮映画である。
東宝では登場怪獣が1種類のみの映画は本作が昭和最後の作品となった。
あらすじ
日本上空を周回していたテレビ中継用の人工衛星が、謎の高熱体に襲撃されて爆発する事件が頻発していた。
そのころ日本では酔っ払いが眠りながら空中浮遊したり、世界ではダイヤモンドが宝石店から大量に盗まれるなど怪事件が発生。警察は世界的に組織されたダイヤ強盗団が事件の首謀者として捜査していたが、実は強盗団の方も何者かによって続々とダイヤを奪われ、行き詰っていた。
警視庁の駒井刑事は人工ダイヤの研究をしている宗方博士の元を訪れるが、マークと名乗る外国人に襲撃される。が、ダイヤは模造品であった。
駒井は宗像の助手を務める桐野昌代の護衛を命じられ、兄の桐野技官と共に電波異常の調査をしていたが、3人の目の前お化け煙突でおなじみの火力発電所の集積所の石炭が竜巻のように舞い上がる事件が発生する…。
今度はダイヤの原石の輸送車を襲撃する計画を立てた強盗団だが、またしてもマークが現れた。激しい銃撃戦の中、今度は石炭トラックが空中に浮かんだ。
駒井はマークを問い詰め、ダイヤは偽物(人造ダイヤ・氷砂糖・ガラス玉)で、マークは世界ダイヤ保険協会のダイヤGメンだったことが判明。ようやく合同捜査が決定する。オー、セイギノミカタ。
国連科学委員会の調査によると、一連の事件は全て宇宙細胞が放射能で突然変異した「ドゴラ」だと判明した。ドゴラは炭素を求めて、ダイヤ・石炭を吸収していく。地球上の炭素生物も全滅するのだろうか?
宇宙大怪獣ドゴラ
詳細はこちら。東宝初の宇宙怪獣である。
しかしこの映画は、怪獣の活躍を期待して見るとガッカリするかもしれない。
むしろ下記の件から『暗黒街宝石防衛命令』・『国際秘密警察 炭素の鍵』のイメージで『少年探偵団』調の感覚で観たほうがよいのかもしれない。
マーク・ジャクソンとヤングソルジャーの仲間達
予告編のテロップは「変な外人」。空手の達人で、妙に日本人っぽい。
この映画は企画当初より怪獣の出番が少なく、また数少ない怪獣の出番も撮影が難航した事もあって、警視庁とダイヤ強盗団の争いが中心となってコメディタッチで描かれている。
その結果、両陣営を引っ掻き回しながら行動するマークの出番が非常に多く、インパクトとしては主役級である。
正体は外国から来た世界ダイヤ保険協会の捜査官で、「ヒラタクイエバ、ダイヤGメン。」
「イマ、ニホンデハヤッテイルデショウ。ニンジャブーム。ワタシノミッション、ニンジャデース」
名言
「アア! エダマメ。ナカナカオツナモンデスネ」(番茶と枝豆を出されて)
「ヘンッ。ヘソマガリ」(駒井に断られて)
「クルマヲチャーターシタ、オボエハナインデスガネ?」「ナルホド。キミガチャーターシタッテ、ワケカイ」(誘拐されるとき)
「ノーノー。イインカイノレンチュウハ、イカレテシマッタンジャナイカナ?」(桐野技官の報告を聞いた感想。この後、宗方博士の意見が実証される怪現象が起きる)
だがマークが暴れられたのは、主演の駒井をはじめとする共演陣の負けず劣らずの個性だった。
駒井とマークのやり取りは、ほとんど『あぶない刑事』調。
また昌代と浜子の明暗なヒロイン像・無国籍な真木・小心で儲け役(?)なサブとアクの強いキャラの中で、マークと双璧なのが宗方博士!!
演じる中村伸郎にあて書きされたというそのキャラクターはべらんめえ口調で妙に若ぶるもので、「正しく『ヤングソルジャー』だ…」と言えるものだった。
(ちなみに「ヤングソルジャー」とは当時の国鉄総裁石田礼助が就任演説で放った言葉である)
この映画は、個性の弱い怪獣をフォローする意味で本編の方が見応えがある捨てがたい味のある怪作であった。
ダン・ユマはこのマークをたいそう気に入り、マークを主人公にした映画も企画していたという。
スタッフ
原作は丘美丈二郎の「スペース・モンス」とされているが、田中友幸に提出したいくつかの原案のひとつであり「その後どうなったかは知らなかった」と語っている。
出演者
駒井 | 夏木陽介 |
---|---|
昌代 | 藤山陽子 |
桐野 | 小泉博 |
浜子 | 若林映子 |
宗方博士 | 中村伸郎 |
髭の男(国際ダイヤ強盗団ボス) | 河津清三郎 |
マーク | ダン・ユマ |
岩佐(北九州地区防衛隊司令) | 藤田進 |
駒井の上司(警視庁外事課課長) | 田崎潤 |
多田(国際ダイヤ強盗団) | 田島義文 |
真木(国際ダイヤ強盗団) | 天本英世 |
ダイヤ強盗団の手下(国際ダイヤ強盗団) | 桐野洋雄 |
ダイヤ強盗団の手下(国際ダイヤ強盗団) | 若松明 |
サブ(国際ダイヤ強盗団) | 加藤春哉 |
新田 | 船戸順 |
ダイヤ強盗団の手下 | 堤康久 |
宗方博士の助手 | 岩本弘司 |
防衛隊幹部 | 津田光男、熊谷卓三 |
石炭トラック運転手 | 当銀長太郎 |
石炭トラック運転手 | 広瀬正一 |
石炭トラックの助手 | 中山豊 |
配送員(ダイヤ配送車の助手席の男) | 上村幸之 |