変身人間シリーズ
へんしんにんげんしりーず
東宝特撮映画シリーズの中で、科学技術によって変質、変形あるいは特殊能力を得た人間が登場する映画作品群の総称。
怪奇映画にSF映画の要素をあわせた作品であり人間の業や悲しみが作品のメインテーマになっているという特徴を持ち、小田監督の『透明人間』や本多監督の『怪獣大戦争』・『メカゴジラの逆襲』の系譜の原点になった『ガス人間第一号』のように異端者の悲恋メロドラマの要素が強かった。
また『美女と液体人間』・『電送人間』のように、海外輸出を視野に銃撃戦・カーアクション等のアクション描写を多用しギャング物…『暗黒街』シリーズ・『国際秘密警察』シリーズ調のスパイ活劇が多かった。
特撮は、SF映画や怪獣映画の様な派手な演出に用いずに心理的な表現として用いている。
田中友幸プロデューサーは低予算で面白い特撮映画を作りたいという理由でシリーズを始めたが、テレビの台頭によって映画が大作志向になっていったこと、『マタンゴ』が興行的にヒットしなかったこともあってシリーズをはじめとする怪奇SF映画は途絶えてしまった。
後年『エスパイ』を手掛けた小松左京は、「予算はB級だろうけどアイデアが面白かった」と評価している。
※『マタンゴ』は番外編に当たる作品。
※『透明人間(1954年・小田基義監督)』は先駆的作品ということでシリーズには含まれていないが、資料によっては含めている物もあり公式のカップリングBDにも『液体』~『ガス』の3作品とコラボされている。
※小松左京の小説原作の『エスパイ(1974年・福田純監督)』も資料によってはシリーズの1つとしてカウントしている物もある。
『フランケンシュタイン対ガス人間』
『ガス人間第一号』の続編構想。実は生きていたガス人間水野が藤千代を蘇らせるためにフランケンシュタインの怪物を利用しようとするというストーリーだったが、『マタンゴ』が興行的にヒットしなかったことから『フランケンシュタイン対地底怪獣』へと変更された。
水野役の土屋嘉男は、「二番煎じになるよりは続編が作られなくて正解だった」と語っている。
『戦慄火焔人間』・『透明人間対火焔人間』
1970年代半ばの復古調ブームから、『野獣死すべし』の続編・草刈正雄を用いた『若大将』2部作・東宝クレージー映画を手掛けた2人の職人監督の手による『お姐ちゃん』シリーズの派生2部作・「明るく楽しいみんなの森繫一家」の同窓会映画・頓挫したが『暗黒街』シリーズの復活をも目論む等の懐かしい企画が多かった再編成された東宝映画において…。
これらと共に1970年代にて、テレビ放送等で『美女と液体人間』と『電送人間』が好評だったことから始まった変身人間シリーズの新シリーズ構想。
『戦慄火焔人間』は「怪奇人間特撮シリーズ」と題してシリーズ化する構想もあり、『透明人間』の再映画化や『植物人間』といった企画もあった。
しかし1974年に企画された『戦慄火焔人間』は監督を務める予定だった福田純監督が『ゴジラ対メカゴジラ』および『エスパイ』を手掛けていたため実現しなかった。
続いて1975年に福田監督らにとってこの企画のリベンジとして、『透明人間対火焔人間』の企画が立ち上げられた。あらすじとしては復讐劇が濃く『電送人間』と旧・大映の『透明人間と蝿男』を合体させた企画に今度は昭和ゴジラシリーズに代わる特撮映画として脚本の執筆やスピードポスターの作成等とほとんど制作直前まで行ったのだが、『ゴジラの復活』や日英合作企画『ネッシー』と競合して頓挫してしまった。
最終的には、『透明人間対火焔人間』の企画を封じたこの2作の企画も頓挫している…。