曖昧さ回避
マモーとは、
- 劇場版『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の登場人物。本項で解説。
- 『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』のコーナー『ナン魔くん』で内村光良が演じたキャラクター。上記をモチーフとしている。テーマソング持ちである。
- 宮野真守の渾名。
概要
CV:西村晃
ルパン三世シリーズ初の劇場版作品『ルパンVS複製人間』に登場した、"神"を自称する謎の男。
表では世界一の謎の大富豪「ハワード・ロックウッド」として、鉄鉱、造船、運輸、報道によって世界の富の3分の1を支配しており、近年では考古学の発掘を手がけている。
体格は非常に小柄で、髪は近世欧米の貴族のようにカールの入った長い白髪、肌に関しては皺が多くなにより灰色で不気味。おまけに体つきも少々戯画的と、容姿からしてすでに人間離れしている節が多々ある。
非常に尊大な自信家で、不気味ながらも威厳ある言動で相手の心を掌握することに長けている。
ただ、いささか自信家すぎるのか、その矜持を傷付けられることを非常に嫌い、自分に従わない相手にはまったく容赦がない。
その反面予想外の手段に出られると激しく動揺するなど、意外と精神的に打たれ弱い部分がある。さらに近代の軍事科学には疎い面もあるようで、相手を侮るあまり不用意にアメリカ大統領に通信を送ったことでアメリカのバッジシステム(自動警戒管制組織)に逆探知されて自分の居場所を特定されてしまうなど、人間離れした頭脳と力を持ちながら所々抜けた部分が目立つ。
また、こう見えても人間らしい感情は持っており自分に気づかないで目の前でイチャイチャしていたルパンと不二子に対して「いい加減にしたまえ!!」と怒ったり、あくまでも自分をペテン師扱いするルパンにムキになったりと不気味な佇まいとは裏腹に結構感情豊かだったりする。
超人的な能力
空中浮遊に念動力、はては多人数への幻視など、人間離れした数々の能力を有している。
ルパンから言わせれば「大がかりな手品」であり、実際にルパンも劇中で同じ手段を用いたほか、トリックの幾つかはパイカルとかぶっている。
ただしトリックでは説明のつかない超能力を有しているのも事実である。
また現代科学を超えた科学力の産物を多数発明しており、その技術を用いて歴史上の偉人たちを復活させ、自分のもとで生活させている。
その正体
正体は、1万年以上もクローン技術を用いて生きながらえてきた、文字通りの怪人。
詳細な説明はないものの、作中で不死、1万年の記憶と言及しているため何らかの方法でクローンの体に自分の意識を移植していたと思われる。
ただし、乗り換える肉体は現在使用している肉体から作ったものではなければならないようであり、クローンの染色体を使用してクローンのクローンを作るという行為を繰り返していた。
それゆえ、クローン技術の最大の欠点である『染色体の劣化(テロメアの短縮)』と『変異体の発生』だけは技術不足で解消できず、130代目のクローン体に至った際にはこれ以上の乗り換えは続行不能と判断し自身の体を保存し、それ以降は造り出したクローン(変異体=劣化コピーを含む)の脳内に小型の制御装置を埋め込み、これで意識を同調させる事でクローン達を操っていた。
そのため、オリジナルは脳だけを独立させて保存している。
不二子を通じてルパンに不老不死にまつわる物品を盗み出させていたのは、劣化しないクローンを作る為。
また、独自の核戦力を有して米ソを脅し、両国の生物学・遺伝子工学技術のすべてを要求してもいた。
一度目に死んだのも、またルパンとの直接対決で死んだのも、どちらもクローン体。
本体は培養液(特殊なリンゲル液)に浸かった巨大な脳であり、そのあまりの巨大さと荒唐無稽さにとうとうルパンも彼を常識外れな存在と認めざるを得なくなった(もっともそれも「神様どころか薄汚い化物」という痛烈な皮肉を伴った軽蔑であったが)。なお、保存する前は脳をどうやってクローンに収めていたのかは不明。もしかしたら、摘出する前は常人と同じサイズで保存後に何らかの要因、あるいは保存するに当たって意図的に巨大化させた可能性も考えられる。
もっとも、これだけ巨大だと元々人間であったのかどうかすら疑わしいが。
ルパンとの直接対決に敗れた後は自身の脳を乗せた巨大ロケットで基地を脱出。遠い宇宙の果てにある「死をも超越した文明」に赴き、そこで完全なる不死を手に入れてから本当の神として再び地球に舞い戻ると宣言し、宇宙へと飛び立った。
しかしルパンが直前に貼っ付けていた腕時計型時限爆弾に気付かなかった結果、脳の入ったカプセルは崩壊。そのまま宇宙空間に放逐され、太陽の重力に引かれ向かっていく形で最期を迎えた。
「時限爆弾で倒された」のは明確な象徴だろう。永遠を求め続けた彼だったが、「時間」から逃げ切ることはできなかったのだ。
ルパン「マモー、感謝しな。やーっと死ねたんだ…」
考察
過去の経歴について
劇中における彼の言葉がどこまで真実であったのかは定かではないが、
- ファラオ(約5000~2000年前)や始皇帝(約2200年前)など、1万年という途方もない時間から考えれば比較的近代の人間と言わざるを得ない偉人たちが先に注目していた賢者の石をはじめとする数々の不老不死にまつわる遺物を現代になってから求め出したこと(1万年生きた事を前提としてこの行動に理由をつけるとすれば、それに縋らなければいけないほど限界が近づいていた。過去に個々にあったものでは不可能だったが現代でそれらのデータを集めて現代の技術を組み合わせる事で実現の可能性が見えた。などだろう)
- 太古の昔にクローン技術を完成させたという自身の科学技術に比べれば大幅に遅れているはずの米ソの近代科学の成果にも縋ったこと
…などを考えると、そもそも1万年を生きたということ自体が大嘘(思い込み?)である可能性がある。
少なくともルパンは2人目のクローン体を倒した際に、クローン技術を使った長寿の秘密を知った上で改めてマモーをペテン師呼ばわりしており、彼の経歴については最後まで全く信じていなかった。
ただし、これはあくまで「マモーが我々と同じ普通の人間だったら」の話であり、「彼は染色体劣化が異常に遅い、所謂『特異体質』だった」という可能性も否定出来ない。
確実なことは彼が莫大な資産と核武装による強大な戦力を有し全世界を脅迫できるだけの力を持っていたこと、そして彼が死を恐れ、死を克服する術を追い求めていたことだけである。
彼の心情
ルパンとは死生観をはじめ様々な面で真逆の思想を持つ一方で本質的には似通った部分もあり、ルパンの深層意識の構造が自分の考える「神の意識」そのものだと知った際には衝撃のあまりルパンを殺害しようとまでしたものの、最終的にルパンが呆れながらもマモーの規格外さを認めた際には「やっと信じてくれたね。ルパン」とどこか嬉しそうな反応を見せるなど、内心ルパンに対しても複雑な心情を抱いていたようである。
実際ルパンとは互いに軽蔑し合い、彼からは当初は敵どころか精神異常者のように見做されて殆どまともに相手にされてなかったが、ストーリーが進むにつれてマモーの言葉はルパンの心理を突き、ついにはルパンに「夢を盗まれた」と言わしめ、命を懸けて戦うべき相手として認められている。この辺りを見るとマモーのルパンに対する理解はある意味で的確であったことが窺える。
一方ルパンの方も徹頭徹尾マモーの思想や言動に否定的ではあったものの、上述の通りマモーに対する最後の言葉として「感謝しな」という表現を選んでいたことを考えると、不死を求め続けた彼の妄執や人生には思う所があったようである。
不二子に対する執着心
ルパン同様、それどころか時としてルパン以上に異常なまでの執着心をマモーが抱いた存在、それが不二子であった。(実際、マモーとルパンの勝敗が決まったのは双方の不二子への強い愛や執着となった。)
長い時を生きただけに心の奥底では孤独と寂しさを抱えていたのか、不二子に対する執着は非常に強く、おそらくは打算なしで惚れこんでいたと思われる。
そもそもマモー自身が想像を絶するレベルのクローン技術を完成させているうえにマモー自身もルパンの不二子に対する性欲や生殖願望をあざ笑っている
一方で不二子が全裸で就寝している際はシャワーを浴びてる最中にカメラを通して会話するなど、不二子の肉体美には恐ろしいほど執着するなどの矛盾する行動をとっている。つまり選民思想の塊であるマモーにとっては「優れたものは残すべき」という発想が全てに優先しており、マモーにとって不二子は素晴らしい美術品の一端なのである。(単なる最高峰の美女と見做すだけでなく、完全な不老不死へ資材集めでの有用性が高いことも彼女への高評価につながっている。)
ただし、マモーは完全な不老不死を獲得はしていない。このため新天地でマモーと不二子がアダムとイヴになる野望、すなわち「不二子を永遠に自身の手元に置く夢」を叶えるためには、不二子「本体」も必要であり、峰不二子の卵細胞だけを獲得するだけでは解決しなかったのである。マモーにとって不二子だけは絶対に「本体」を手にしていなければ意味がなく、それが故に不二子がルパンのところへ戻ると必ず自身の手で奪い取ろうとする強硬手段を繰り返していたのである。
最後の手段
マモーが「最後の方法」として目論んだ「死を超越した文明への旅」はルパンに引導を渡されたことで頓挫することとなったが、そもそもこれ自体にどれほどの実現性があったのかは甚だ疑問である。むしろ劇中における賢者の石への過剰な期待と、それが裏切られて絶望した際の落差を見る限り、この最後の方法も全く成功の保証がない悪足掻きであったと思われる。
そう考えるとマモーの宇宙の旅は全く指針のない放浪でしかなく、さらに言えば現在(ましてや映画が公開された1978年当時)の地球の航宙技術程度で1万年以内に辿り着けるような近距離にそんな高度な文明が栄えている星があるとは到底考えにくい。それどころか、脳を収めているカプセルが急ごしらえの小型爆弾で容易に破壊出来る程度の強度である事から、航宙途中で隕石等の漂流物との衝突で同様の結末に陥る可能性も考えられる。
つまりマモーはあのまま無事に宇宙の旅に出られたところでこれまで自分が生きてきたよりも遥かに長い時間を宇宙の闇の中で一人彷徨い続けたか、カプセル破壊後の進路から見て結局太陽の引力に捕まり絶望の中で果てたかのどちらかであった可能性が高い。つまり、ルパンが態々手を下すまでもなく自滅していただろうと考えられる。
死への恐怖と不死の渇望に取り憑かれて止まることができなくなっていたマモーにとって、ルパンの手によって死を迎えることができたのは本当の意味で救いだったのかもしれない。
…………なのだが、マモーが切望した存在(不老不死に近い技術を持った、地球外の知的生命体)は、次々作『バビロンの黄金伝説』でルパン達の前に現れる。ロゼッタは、マモーのクローンコレクションにも含まれるアレクサンドロス大王(約2300年前)やナポレオン、アドルフ・ヒトラーのオリジナルと面識がある。
……であれば、彼女とマモーはなぜ出くわさなかったのであろうか? 考察すると、マモーを上回る技術力を持つロゼッタ達が意図してマモーから逃れていたとすれば辻褄が合う。彼女らは地球から大量の金を奪おうとしていた存在だからだ。
マモーの地球での技術力と経済力をもってすれば、もっと早く“黄金のバベルの塔”を発見できたかもしれない。だが、一方で野心家であり、強い支配欲を持つマモーと接触し、その技術を暴かれるのは、自分たちにとってもリスキーだと判断したのかもしれない。
また、ロゼッタ個人としても見失ったバベルの塔を探すという職務に充実しつつも本質的には非常に情熱的であり、不二子に対するマモーの接し方とは全く違い積極的に異性に迫るタイプである。こういった点からも、マモーとロゼッタが出逢ったとしてもお互いの価値観の違いから上手くいかない、もしくはロゼッタを知ったマモーが更に過激な方法でロゼッタを手に入れようとした末に人類以上の科学力をもつ存在の逆鱗に触れていた可能性もある。マモーとロゼッタが出逢わなかったことは非常に幸福であったと言える。
『神の意識』とルパンの『盗まれた夢』
上記にあるように、ルパンの夢の中を覗こうとしたマモーは、その奥底に何も存在しなかった、夢を見ないルパンのことを「空間!虚無!それは白痴の、あるいは神の意識に他ならない!!」と恐れおののいている。ルパンは自身のクローンの話を持ち出された後、「おれァ、夢を盗まれたからな。取り返しに行かにゃあ」と言っている。
一見するとこの『神の意識』と『盗まれた夢』がどう繋がっているのかが分かりにくいが、これはマモーの考える『神』がなんであるかを考えると繋がりが見えてくる。
マモーはクローンを「神に至る道(手段)」と主張していた。彼の経歴を真実とすると、マモーは古くから人間の歴史を見、更に干渉していた事になる。他方、夢を見ないルパンに驚愕した、という事は「人間であれば必ず夢を見る」と言い換えることもできる。
つまり作中における『夢』とは一般的に人が睡眠中に見るものという意味だけでなく、その人物の意識の奥底、即ち深層心理にあるものをさしていると考えられる。「これがルパンの全てだ」というマモーの台詞と合わせると、「通常の人間であれば夢を見る→深層心理に自分の全てを示す何かがある」という事であり、「自分という自己を確立するためのもの」が『夢』の正体と言える。マモーが自らを神とする方法としてクローンを用い、永遠の命を求めたのは、「人間の深層心理に必ず存在する『もの』は、元を辿ると全てマモーが関わっている=人間が自己を確立できているのはマモーが関わったからである」という論理を作り上げるためであり「人を形作る『夢』を支配しているものこそが神である」と考えたのだろう。
一方でルパンは夢を見なかった。深層心理に何もない、空間、虚無。つまりルパンは「マモーが干渉したあらゆる『もの』に一切寄ることなく、自分自身はルパン三世である、という自己を確立する事ができる」という『夢』を持っているのである。たとえ自分の周りに人も、空気も、光、色、ありとあらゆる全てが消えてなくなってしまったとしても、ルパンはルパンという存在=『夢』を支配できているのである。マモーという神の支配を受けないルパンは正に「もう一人の神」と呼ぶに相応しい。だからこそマモーは「神の意識」を持つルパンを恐れ、ルパンのクローンの話を切り出した。お前は本物か?クローンか?と揺さぶりをかけたことで、「自分はルパン三世である」というもう一人の神→ルパンの意識=『夢』を盗んだのである。
最終決戦時、マモーはルパンに言った。「処刑されたのはコピーの方だ。君は紛れもなく、オリジナルのルパンだ!安心して死ぬがいい!」と。”神”であるマモーに寄ることなく存在するもう一人の”神”たるルパンの夢を奪い、それを返すことでルパンという”神”に干渉したのだ。見方を変えればこの瞬間、マモーとルパンという二人の”神”が本当の意味で並び立ったのだと言えるだろう。
スピンオフ
『LUPIN THE III RD 次元大介の墓標』
CV:尾花かんじ
ルパン三世スピンオフ作品第二弾『LUPIN THE III RD 次元大介の墓標』のラストにわずかながら登場している。「ルパンVS複製人間」と「次元大介の墓標」のストーリー上のつながりは描かれていないが、マモーの登場で「ルパンVS複製人間」の遥か前日譚の時間軸である事の明確化と、後年マモーと戦う事となる「ルパンVS複製人間」を改めて暗示する形にもなった。
『Pルパン三世~復活のマモー~』
「ルパン三世VS複製人間」の続編にあたるパチンコオリジナル作品で復活を遂げていた。
本作におけるマモーはマントを羽織っている。
また、あくまでも推測の域を出ないものの、作中ではマモーの意外な一面が思わぬ形で示唆されている。
余談
- おそらくルパン三世シリーズでトップクラスに有名な悪役。マモーが有名になったのは、この作品が『カリオストロの城』と並んで頻繁に『金曜ロードショー』で放送されているため。普通のおっさんのカリオストロ伯爵に対して、こっちはそのビジュアルのインパクトが非常に強く子供たちにトラウマを植え付けており、名前は知らずとも記憶に残っている人は多いはず。シリーズ中最もSF色の濃い作品で、物語のスケールもシリーズ有数の壮大さを誇ることも一因だろう。
- 名前はルパンを追い詰めた宿敵の一人である魔毛狂介(アニメではTV版第1シリーズ「タイムマシンに気をつけろ!」等に登場)に由来するが、それ以外の関連性はない。
- 「ルパン三世VS複製人間」の続編にあたるパチンコオリジナル作品Pルパン三世~復活のマモー~に部下として配属された新米女性刑事オプルが峰不二子に劣らぬ肉体美で露出度全開の服装で登場し、パチンコの演出で数種類の水着姿を披露している。銀髪と褐色肌という不二子とは明確に違う部分もあるため、マモーにとっての不二子以外における理想の一つとも言える。
- ウッチャンナンチャンの内村光良が、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!!』で同名のキャラクターを演じ(キャラは全く違うが)、「恐怖のズンドコ……あ、ちがーう!恐怖のどん底に」などのギャグや、「マモー・ミモーのテーマ〜情熱の嵐〜」をヒットさせたのも、90年代のテレビ好きには懐かしい記憶である(詳しくはナン魔くんの項目で)。
セリフ
「そうだ。私だ。マモーだ」
「私だ。宇宙の神秘なる力に目覚め不死を得た私。自らを生み自らを育んだ私。永遠とも呼べる時の流れの中で、私は星の数ほどの賢者たちと出会い、地上最高の英知を得るに至った! そして次第に、人間の世界に干渉する楽しみを覚えた」
「そう……私は気の向くままに、新たなる知恵と発明を! 欲望を! 憎しみを! 飢餓を! 戦争を与えてやった……歴史は私の絶えなき干渉によって作られたのだ」
マモー「そう……クローンにも限界がある」
クローン「染色体の情報伝達は100%完全ではない。コピーを重ねると像がぼやけて来るように、果てしないクローン連鎖は細胞を狂わせていた……。130代目に至って私は自身をオリジナルとして保存した、特殊なリンゲル液に身を浮かべて……。それからの私は全てコピーのコピーだ」
クローン「すべては不死のためだ……」
マモー「伝説の石にまで縋ったが全ては無駄だった……」
関連タグ
ルパン三世 ルパンVS複製人間 次元大介の墓標 復活のマモー
血の刻印:(恐らくは)マモーの追跡を逃れたであろう「不老不死の遺物」が登場する。そして「マモーという存在」へのある種の「答え」が示唆されている。