概要
ルパン三世TV第1シリーズの第13話(1972年1月16日放送)。
原作漫画の『能ある悪党は牙をかくす(その3)』をベースとしている。
TVアニメのルパンとしてはテコ入れによる路線変更の過渡期にあたる作品で、少しずつではあるが以前のエピソードとは異なる演出、当時としては珍しい『タイムマシン』を題材としたエピソードで異色作となっているが、本エピソードに登場する魔毛狂介は後述の理由により印象的な敵としてファン内での知名度が高い。
あらすじ
ルパン三世は相棒の次元大介と共に、袋小路という壮年男性が所有する『黄金像』を狙っていた。
ルパンは次元との待ち合わせ場所に向かい車を走らせていたが、突如謎の物体が光と共に目の前に現れあわや事故寸前になってしまう。
間一髪の所で回避するが、光の向こうに謎の人影が現れ、その人物は『魔毛狂介』と名乗り「4日後にお前はこの世から消える」という予言を残しその場から消える。
直後のルパンは「どうせまたどこかのシンジゲートが雇った殺し屋だろう」と大して相手にしていなかったが…
登場キャラクター
メインキャラ
ご存知天下一の大泥棒。
今回は全エピソードでも珍しく、後半で余裕が無い本気の焦りを見せる。
また、本エピソードではやたら現在ではNGである用語を連呼しており、その台詞は現在視聴可能なメディアでは無音修正されている事が多い。
お馴染みルパンの相棒。
後のシリーズに比べて喜怒哀楽が激しい次元だが、本エピソードでは特にそれが顕著になっており、後半で涙を流すシーンがあるなど現在ではあまり見られない次元を見る事が出来る。
前半では女中姿も披露している。
お馴染み石川先生。
本エピソードではあまり活躍の場が無いが、後半に次元と言い合いになった際に「せいぜい江戸時代のおめぇに何が出来るってんだい!」と罵倒されてしまう。
ふじこちゃん。
後半にルパンから求婚され、一時は「あの人本当に私の事を愛しているのかしら?」と懐疑的になっていたが…
ルパンの宿命のライバル。
黄金像の警備にあたっていた序盤のみ登場。
自分で時間を予告しておきながらなかなか黄金像を盗みに来ないルパンにしびれを切らしていた。
ゲストキャラ
ルパンの前に突然現れた謎の男。
彼に意味深な予言を告げる為に度々現れる。
「ルパン一族に対する復讐」だと言うが…
- 袋小路(CV:雨森雅司)
黄金像の所有者。
銭形警部による警備が厳重なのでルパンは盗みには来れないと絶対の自信を持っていた。
結末 ※ネタバレ注意
ルパンと次元は袋小路の住む古城へ潜入し、銭形警部を出し抜き簡単に黄金像を手に入れるが直後に目の前から消えてしまう。
その原因はまたしても魔毛の仕業で、ルパンと次元の前に姿を表し「魔毛一族がルパン一族(ルパン十三世)に滅ぼされた復讐を果たす為に現れた」と明かす。
その年号が2874年3月31日だと聞いたルパンは頭のおかしい奴だと全く相手にしなかったが、次元は魔毛の名前に聞き覚えがありアジトに帰宅後に彼の事に関して書物で調べ始めた。
ルパンは「いい加減にしろ」というが、次元の代わりに次の仕事のパートナーにしようとした五ェ門も魔毛に心当たりがあるらしく次元と一緒になって魔毛の事を調べ出す。
呆れたルパンは二人を放って一眠りつくが、その夢の中にも魔毛が現れ、「自分は1932年11月18日生まれだ」と言い残し消える。
ルパンが目覚めると調べ物が終わった次元と五ェ門が来て、魔毛がタイムマシンを開発した科学者である事や生年月日をルパンに伝えた。
ようやく事を飲み込めたルパンだが、魔毛の策略によって目の前から人や建物が次々と消滅していく。
それは、魔毛がその人物の祖先を過去で殺しているから起きた出来事で、「お前も数日後にこうなる」と脅しをかけられてしまう。
焦ったルパンは不二子と結婚してルパンの名前だけでも残そうとするが、直前で魔毛に見破られ不二子を拐われ彼女は過去の世界へ軟禁されてしまう。
万事休すとなったルパンはアジトで次元と五ェ門に自分の形見としてワルサーP38を託そうとした所でとうとう消えてしまった。
自分達が何も出来ないままルパンが消えてしまい言い合いになる次元と五ェ門。
その会話の中で五ェ門は「敵は俺がとってやる!」と立ち上がるが、次元は「バカ野郎!大時代な事を言うな!相手は4次元だぞ、29世紀だぞ!せいぜい江戸時代のお前に何が出来るってんだい!江戸時代で始末がつくならルパンも自分で何とかしてたよ…」と泣き崩れる。
が…
「なるほどぉ江戸時代かぁ」
目の前には消えた筈のルパンが水槽の前に立っている。
思わず呆然とする二人だが、これはルパンが魔毛に消されたら悲しんでくれる相手がいるか試してみただけだという。
ルパンの芝居に怒る次元だが、直前の二人の会話からルパンは魔毛攻略の作戦を閃く。
迎えた運命の時、教会で祈りを捧げるルパンの前に魔毛が現れ、ルパンは彼に二つの願いを頼むがその内容は、
1.自分に顔立ちが一番よく似た先祖で江戸時代に生きていたという百姓『川向こうの次郎吉』と一緒に消えたい。
2.死ぬ前に不二子と最後に会いたい。
というものだった。
が、これこそルパンの狙いで魔毛が過去の世界から不二子を連れてくる間に江戸時代を偽装し、魔毛が油断している隙にタイムマシンを破壊し不二子も奪還するという作戦だ。
作戦は成功し鉈や刀で魔毛の服を切り刻んだ挙げ句、最後にはタイムマシンをバラバラにされ「止めてくれ!!」と叫ぶ魔毛をルパンが威嚇し彼を追い払った。
目覚めた不二子はルパンが自分と本気で結婚してくれるとまだ信じ込んでおり、ルパンに求婚を迫り話は締め括られた。
余談
・前述の通り、この回はルパンが放送禁止用語を連発しており現在の再放送等では修正される事が多いが、これ以外にも魔毛の質問に対しての五ェ門の答えである「今は昭和47年でござる!」も、放送当時の現代の年号だったので再放送ではこの台詞も編集されていた時期があった。
・後の映画『ルパンvs複製人間』に登場するマモーの名前は本エピソードに登場する魔毛から取られているが、これは当時のルパンを一番追い詰めた相手がこの魔毛だった事に起因するという。
関連作品
TVSP『霧のエリューシヴ』(2007年)
魔毛狂介が登場する。ただし、こちらは設定が原作準拠でTVアニメ版に登場した魔毛とは別人である。
OVA『ルパンは今も燃えているか?』(2018年)
黒幕として魔毛狂介が登場。
こちらはTVアニメ版の後日談となり、魔毛もTVアニメ第13話に登場した方と同一人物となる。
消えた黄金像もこのOVAでは復活しており、この黄金像が物語の発端となる。