概要
日本テレビ系全国ネットで放送されていたルパン三世PART2の高視聴率を受け、1年間の製作期間を経て、製作費5億円をかけて製作された。ルパン三世と自らを神と名乗る謎の人物マモーとの、賢者の石を巡る争奪戦を描く。「世界初の長編アニメビジョン」と宣伝で謳われ、作画においてビスタサイズを想定して通常より大判のセル画を用いている。
本作の企画の発端は、1977年、1978年に公開された『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版をプロデュースし、大成功を納めた西崎義展に対抗意識を持った当時の東京ムービー新社社長藤岡豊が『ルパンの映画をやるぞ!!』という鶴の一声で立ち上げられ、「初期の頃の大人向けのルパンが見たいという声にお応えします」という制作趣旨が明示されており、当時放送中だったTV第2シリーズの広い年齢層向け作風とは異なり、ルパン三世PART1初期の作風に近づけるという意向が明言されていた。東宝宣伝部によると本作は『007シリーズ』のアニメ版という位置付けとし、ポスターと本編にヌードや性的表現を登場させるなど、ターゲットとする観客層は大人を想定していた。地方での同時上映作品はアガサ・クリスティ原作、ジョン・ギラーミン監督の『ナイル殺人事件』という大人向けの作品であり、こちらがメインであった。
ところが、いざ公開が始まると事前の予想とは異なり、実際の観客層はPART2を視聴中の中高生が中心だった。そのため、配給収入10億円という大ヒットを記録し次回作の製作が決定すると、ターゲットとする観客層は15〜16歳中心に改められた。
ちなみに、公開当時のタイトルは、単なる「ルパン三世」で、「ルパンVS複製人間」というサブタイトルは、「家庭用ビデオソフト(当時はVHSとともにベータマックス版も発売)として発売された際、内容の明確化と他作品(TVシリーズなど)との識別を容易にする」という理由からポスターやTVスポットに使われたキャッチコピー(「ルパンVS複製人間(クローン)、世界史をぬりかえるのはどっちだ!?」)を引用した、いわゆる、後付けタイトルである。
脚本・監督は平成世代にはアニカビでおなじみの吉川惣司。アニカビでもみられた毒の強い内容が多い(そのため残念ながらテレビ版ではカットが多いのでノーカット版視聴がおすすめ、詳細後述)。
あらすじ
ルパン三世が逮捕され処刑された。しかし、その事実がどうしても信じられず、ルパンの遺体の確認にドラキュラ城に向かった銭形の前に、ルパン本人が現れる。宿敵であるはずのルパンの生還を喜ぶ銭形、ルパンもルパンが処刑されたという報を聞き確かめるために訪れたのだった。
その後、銭形とエジプト警察の警備を掻い潜りルパンはエジプトのピラミッドに忍び込み、次元や五右ェ門と一緒に“賢者の石”を盗み出していった。
石を狙う謎の男・マモーから永遠の美を約束された不二子は、ルパンのアジトへ。計画通りにお宝を奪って逃げだそうとするが、ルパンがそう簡単に不二子に騙されるはずもなく・・・。お陰でマモーから地獄の果てまで追われるハメになるルパンたち。そしてすべてを失った彼らの前に、ボロボロになった不二子が現れた。散々な目に遭いながらも不二子を信じようとするルパンに愛想を尽かせた次元と五右ェ門は、ルパンの前を去って行った。しかしルパンは結局不二子の裏切りに遭い、マモーに連れ去られてしまう。
一方、単独行動中の次元と五右ェ門はアメリカ軍から監禁されるハメに。マモーは自らの野望のためにアメリカやソ連をはじめとする世界中の政府を敵に回しているらしい。このままではルパンが危ない! 不二子が残したヒントを手掛かりに、マモーの城があるカリブ海の島へ向かう次元と五右ェ門。そんな2人を追って、銭形もマモーの待つ島へと向かっていた。
その頃、マモーの城を探検していたルパンが目にしていたのは、衝撃の光景だった! マモーの真の目的を知ったルパンは、反撃に出ようとする!!
世界中を巻き込んだ巨大な陰謀に足を踏み入れてしまったルパン一味と銭形。マモーを倒すことはできるのか!?そして彼らの戦いの果てに待っているものとは!?
キャスト
レギュラー
怪盗アルセーヌ・ルパンの孫。自らも世界的な大怪盗かつ変装の達人。
この作品では彼の人間性に迫るシーンが多く、不二子に対する強い愛や執着を見せている。
ルパン一味の紅一点。今回はお色気担当。シャワーシーンやルパンの脳内イメージで全裸を披露、終盤では服を捲られおっぱいを丸出しにされた挙句に乳首を押されるシーンなど刺激がつよいシーンを提供してくれる。
コンバットマグナムを使うルパンの相棒。
今作では不二子の裏切りでマモーとの戦いで苦戦を強いられたため不二子を毛嫌いしており、ほとんど「女」としか呼ばない。
斬鉄剣を使う居合い抜きの達人。
フリンチとの一騎打ちで斬鉄剣が欠けてしまい戦線離脱。その「斬鉄剣の成れの果て」がマモーとの戦いに勝利する切り札となった。
ルパン一味を追うICPO捜査官。ルパンに関係する事件なら世界中どこでも捜査権が認められている。
ゲスト
警視総監:富田耕生
スタッキー:大平透
ゴードン:柴田秀勝
科学者:村越伊知郎
職員:嶋俊介
警官:宮下勝
エジプト警察署長:三波春夫(特別出演)
米大統領:赤塚不二夫(特別出演)
ソ書記長:梶原一騎(特別出演)
余談
クローン等の先進科学技術に関する考察
制作された時期が1970年代末期であったことを考えると、クローンに関する考察がかなり先進的であった。いずれ完璧なコピー人間が可能になるという万能科学的発想を脱し、遺伝子情報の伝達に欠損があることについて語られている。
その一方で、クローン≒オリジナルのコピー という当時の発想、常識的な概念からは完全に脱却できていない(現在では「クローンは人工的に作られる一卵性双生児に過ぎない」というのが常識)。
原子力発電所が核爆発するという展開があるが、原子力発電用の低濃縮核燃料では核爆発は起きないとされている(ただしチェルノブイリ原子力発電所の事故に関しては一考の余地が残るとされている)。またこの展開のため東日本大震災によりテレビ放送NGの可能性もあったが、その後も放送されている。
テレビとソフト化放送に関して
本作はカリオストロの城と同様、テレビで何度も放送されるが、「ヒステリックにわめくなこのキチガイ!(次元)」「ここは精神病院でもなければ仮装パーテーでもない(マモー)」「それは白痴の、あるいは神の意識に他ならない(マモー)」「君は単に不確定性の産んだ私生児に過ぎない(マモー)」などの現在では放送禁止用語となってしまった単語が数多く使用されていることに加え、当時のお菓子(テレパッチ、後のドンパッチ。発売元のAGFが制作協賛だった)の実物のシーン、実写のおっぱいのシーン、パカパカのシーンがあり、テレビ放送時には重要な部分が大きくカットされている。そのため、機会があればノーカット版の視聴を強く推奨する。
なお、2019年にモンキー・パンチ氏が死去した際には「金曜ロードSHOW!」では追悼企画として本作が放送されたが、本作が既に13回も繰り返し(通算14回)放送されていた事から「追悼企画は原作者自身が携わっていたDEAD OR ALIVEをやって欲しかった」などと不満を抱いた視聴者が多かったのか、それに応える形で姉妹番組であるBS日テレの「日曜ロードSHOW!」では「ルパン三世DEAD OR ALIVE」が追悼企画として放送された。
ソフトについても、当初発売されたVHS版は社会的影響を考えてカット版だった。一方、β版はソニーの意向もありノーカット版とされた。その後、LD版・VHD版が発売されるが、これらもノーカット版だった。VHS版もリニューアルの際にノーカット版になっている。更にその後のDVD・ブルーレイ版も当初からノーカット版である。
ゲームなど
ガンシューティングゲームとして製作されたアーケードゲーム版『ルパン三世』にて、本作のシナリオの一部分と悪役であるマモーが黒幕として登場し、ラスボスとして立ちはだかる。
他のルパン三世作品のネタも高い完成度で数多く登場しているが、“カウントダウンに合わせて折れた斬鉄剣の切っ先をかざしてレーザーを反射させてマモーを焼き殺す”、“ロケットで脱出しようとするマモーの脳が入ったカプセルに付けられた起爆装置を撃ち抜く”など、ゲームに合わせて少し変更されているもののこれも再現度が高い。
ほとんどイベントのようなものではあるが、ラスボス戦故か前者はカウント00.00と同時で後者は標的が非常に小さいと難易度が高く、その上どちらも一発勝負である。
他にも本作の続編と言う位置づけとしてゲームブック版「ルパン三世 ダークシティの戦い」も存在する。内容はマモーがルパン三世の手によって闇の彼方へ葬り去られてからの話となっており、マモーが遺した負の遺産であるクローン製造地下都市ダークシティが創造主のマモーを失っても機能しており、打倒ルパン三世に向けて極秘で稼働していた…。物語の序盤ではルパンたちは不二子を助けるため、ダークシティに向かうが、仲間の次元、五エ門と離れ離れとなってしまったルパンはクローンのルパン、次元、五エ門に立ち向かいながら、不二子救出に向かう…というストーリーになっている。
2020年には続編にあたるパチンコオリジナル作品として『Pルパン三世~復活のマモー~』が製作された。
関連イラスト
↓pixivでは映画エンドクレジットでのルパンと銭形の二人三脚のシーンがパロディに使われる事が多い。
関連動画
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ルパン対クローン→カリオストロの城