「愛だの優しさだのお前の甘さは変わらない、反吐が出るんだよ!!」
「貴様だけは容赦しねぇ、ワルサーは2挺も要らねぇんだ!!」
「あれだけ苦労して金塊も解毒剤も海の底、手に入ったのは飛行船いっぱいのガスと毒だけ!!!」
「いや…」
概要
『ルパン三世 TVスペシャル』の第9弾作品。脚本は米村正二、監督は矢野博之。水島精二が演出(と原画の一部)を担当した他、大野雄二が音楽担当に復帰している。
『ルパン三世』作品、特にテレビアニメシリーズに見られるコミカルな内容が殆ど出ずに、原作よりの終始ダークでシリアスな展開となっている異色の作品となっている。
しかし、そのハードなストーリーとそこで活躍するルパンのかっこよさやクリカンこと栗田貫一の熱演等も相俟って、『ルパン三世・TVスペシャル最高傑作』との呼び声もあがる程の作品になっている。
事実、2019年のネット配信においての投票でも第三位の結果を残し、2021年に金曜ロードショーが行ったTVスペシャル部門の人気投票では見事第一位に輝いた。
また、本作のヒロインであるエレンを演じた篠原恵美が歌う、EDテーマの「瞳を忘れないで」もTVシリーズには珍しい哀しさ漂う名曲である(後のコラボレーションアニメ、『ルパンvsコナン』でもBGMとして使われている)。
2019年8月9日にはYouTubeの「TMSアニメ55周年公式チャンネル」にて本編の無料配信(21時からのプレミア配信→アーカイブ配信)が行われた。なお、この配信に際し(本放送時点での名義である)「キョクイチ東京ムービー」となっていた箇所が(現在の再放送同様に)「トムス・エンタテインメント」に修正された他、左下に「fin」と付されたエンドカード(ルパンとエレンが黒いワルサーP38を共に握ったシーンを切り貼りした物)が追加されている。
2021年10月22日には2021年期のルパン作品ランキング1位を獲得し、24年ぶりに金曜ロードショーで放送される他、12月22日には待望のBlu-rayが発売予定。
あらすじ
ある日、アメイタリア国副大統領の誕生パーティーに予告状の通りに潜入したルパン。
それを待ち構えていた銭形警部だったが、ルパン本人はその予告状は出した覚えのない偽物であり、誰が出したのかを確かめに来たのだという。
いつも通りのルパン対銭形の大捕り物が繰り広げられる中、突如としてパーティー会場に暗殺組織「タランチュラ」が襲撃してきた。煙幕が立ち込める混乱の中で、ルパンは暗殺者の一人の女性と目があった。が、それも一瞬のことで、その間に副大統領は暗殺され、ルパンも再び逃げるも銭形に追い詰められてしまう。
しかし、その瞬間、銭形は一発の銃弾に倒れた。ルパンは銭形を撃った銃がかつて自分が愛用していたシルバーメタリックのワルサーP38であったことに驚愕し、事の真相を確かめるべく「タランチュラ」の秘密基地である島に潜入する事を決意。
島へ潜入するも早々に感づかれてしまったルパンは逃走劇の中、先日目の合った女性、エレンと再会。彼女らの追撃をかわすも結局は捕まってしまうが、組織のボス・ゴルドーはルパンの怪盗としての手腕を見込んで、タランチュラの一員に加えることを一方的に決定する。そして組織のメンバーが逃げ出さないようにと打ち込まれている毒薬をルパンもまた打ち込まれ、島から逃げ出すことが不可能になってしまう。
「新しい仲間」として島内を案内されるルパンだが、その中でエレンや島の医師であるドクターから、この島から脱出する計画を立案していると打ち明けられ、協力を求められる。
脱出計画に協力することを決め、一緒に島に潜り込んでいた次元・五ェ門・不二子と共に行動を開始するルパンだったが、同時に、銭形を撃ったシルバーメタリックのワルサーの持ち主を探そうとする。
しかし、組織内では別の計画が動き出していた・・・。
登場キャラクター
メインキャラクター
ご存知世紀の大泥棒。
随所に場を和ませるジョークをはさむものの、今までのコミカルさはまるでなく、今回の仕事は怪盗業より過去の清算という側面が強い。
終盤の黒幕との対決は必見。
「俺は、過去にケリをつけに来たんだ……」
ダンディー&クールなルパンの相棒。
だが彼はルパンの最初の相棒ではないらしい。
穏健派の人々と触れ合う内に、自由を奪われている彼らの内面を知る事になる。
物語ラストにおける不二子とのやり取り(記事冒頭のやり取り)は短いが重い。
「ルパン……そろそろ行こうぜ」
THE江戸時代の色キチ先生。
どういう経緯かは不明だが、不二子の護衛役で先に島へ潜入している。
おかげで豆ばかりの食事で2週間過ごすという貧乏くじを引き、久し振りの白飯と梅干しに涙を流していた。
「…梅干しの色…!」
永遠のお色気担当要員。本作では前作同様金髪となっている(暗がりのシーンでは茶髪に誤認してしまうが)。
組織の金塊目当てに島へ潜入するも、あっさり組織に捕まっていた(実は「体験入隊」の名目で潜入していた)。
最初の全裸シーンは印象的だが、今作では若干空気気味。
なお、今作ではルパンへの裏切りシーンはない。
「トゲがあるから美しい花だってあるじゃない?」
ルパン命のとっつあん。
しかし序盤で敵の凶弾に倒れ、あわや死ん…でしまったと思いきや、左胸にしまっていた警察手帳のおかけでかろうじて一命をとりとめ(「特捜エクシードラフト」を知ってる人なら桂木本部長が狙撃された件を思い出してもらうと分かりやすい)、ICPO長官の「ルパン」の一言で見事に息を吹き返し(が、直後に腕組みをして鼻から荒息を出したポーズのまま気絶)
その後はお目付け役であるビッキーと対立しながら(その過程で骨折などの生傷が更に増えていた)も最後にはタランチュラの本拠地に大勢のマスコミ達と共に乗り込むなど「カリオストロの城」さながらの活躍を見せた。
「相手が誰だろうと悪党にはワッパをかける、そいつが俺の主義なんだよ!!」
ゲストキャラクター
タランチュラ
CV:篠原恵美
本作のゲストヒロイン。
単独記事があるのでそちらを参照。
「あの時、ちょっとの間だったけど、自由になれた気がした……」
CV:内海賢二
タランチュラの首領を勤める危ないおっちゃん。
俊敏な動きとびっくりギミックの義手を用いて勝負に臨む。
反面、手合いのいい傭兵扱いしてくる、政府高官達を「蛆虫共」と呼び嫌っている。
「分かっただろう、私に逆らっても無駄だ!」
CV:速水奨
人を切り刻むのが三度の飯より好きな幹部。
ゴルドーに忠誠を誓っているが、臆病に近い程に心が弱いという欠点を持っている。
単独記事があるのでそちらを参照。
「狩りを楽しむには最高の獲物だ、行けッ!!」
- ホーク
CV:天田益男
ぶっちゃけストーリー的に若干空気気味な幹部。
見た目も戦術も、メタルギアソリッドのバルカン・レイブンに似ている。
「ワルサーP38、時代遅れのオモチャだ!」
CV:緒方賢一
中年メタボオヤジな幹部。語尾に「だど」が付く。
だが、見た目に反して俊敏な動きと爆弾用いて攻撃してくる。次元曰く「一人でもやってける奴」。
「ルパンって男、敵に回すと手強い相手だど…!」
CV:津嘉山正種
組織の中でも殺しを嫌っているグループのリーダー格。(俗称:穏健派)
ルパンに脱出のための毒薬のデータと静止衛星レーザー砲の破壊を依頼する。
もっとも、ルパン本人は彼の思惑に何かを勘付いていた様なのだが…?
「君も見ただろう…この島の者は大概が殺しを楽しんでる。しかし、我々は違う…」
- アレックス
CV:岩永哲哉
エレンの弟で作中では故人。
組織のエレクトロニクスを任されていたらしい。
「いつも、空を見ているエレンへ…」
その他
CV:岩永哲哉
銭形警部の新しい相棒…というよりはお目付け役。
諸事情で足をへし折ってしまった警部に代わり情報収集にあたる。
一応トップシークレットの情報を閲覧出来るくらいには権限を持っているらしい。
中の人はアレックスと掛け持ちだが、出番はこちらの方が多い。
「ICPOでもトップシークレットなんですよ!」
重要ワード
ワルサーP38
今作のキーアイテム。
ルパンが現在使っているのとは別に駆け出しの頃使っていたシルバーメタリックモデルでスライド部分に白百合と「AC41 WALTHER」のバナーがエングレービングされた特別なもの。
終盤でかつての相棒である黒幕が持っていた事が判明し、ルパンはそのワルサーも黒幕共々葬ろうとした。
タランチュラ
今作の敵対組織である殺し屋集団。
ルパン曰く、「その歴史は勿論、存在までもが謎に包まれた影の殺し屋集団。世界を揺るがす要人暗殺には必ず奴等が動き、歴史を影から操ってきた」
ゴルドーに言わせれば、「どんな困難な状況であろうとも、依頼を受けた相手は必ず殺す。それが我が組織タランチュラ」
バミューダトライアングルに存在する地図にも載ってない島に本拠地を構えている。
組織の顕在化を防ぐため、バミューダトライアングル上空には静止衛星レーザー砲という衛星兵器があり、海域に無断侵入した者を排除している。
構成員は世界各国で残虐非道な殺しで極刑を宣告された凶悪犯ばかり(他にも研究員や制服を着た衛兵もいる)。任務の時は、赤黒いボディスーツとガスマスクを着用している。大半は殺しを楽しんでいるが、中には殺しや島の生活にうんざりしている者(所謂、穏健派)もいる。
構成員全員の右手の甲にはタランチュラを象った刺青が入れられており、その刺青にはゴルドーが開発した毒が使用され、本拠地である島から噴き出す特殊なガスを吸わないと毒が活性化して死に至る。そのため、脱走は事実上不可能であり、任務でも島のガスが詰まったガスボンベを用いて行われ、逃げそびれた者の口封じも兼ねている。
また、何らかの理由で任務をこなすことが不可能と判断された者は容赦なく処分され、狩りのように追い回された挙句嬲り殺しにされる末路を辿る。
ある種の陰謀論じみている組織だが、各国政府という強大な後ろ盾あってこその組織である。
余談
- 作中、ルパンの過去に関する資料をビッキーが取り出す場面があるのだが、そこにはロリコン伯爵ことカリオストロ伯爵の写真が載っており、1956年生まれの1996年死亡と書かれている。
- 本作のヒロインたるエレンも印象深いキャラクターであり、過去に行われたルパンのヒロインランキングでは1位のクラリスに次いで2位を記録した事もあるという。
- 本作のタイトルとなっているワルサーP38だが、ルパンが現在持っているものは作中での発砲数は7発で1マガジン分に満たない(P38の装弾数は8+1発)。うち3発はエレンが撃っているためルパンは実質4発しか撃っていない。ちなみに銃のアップが一瞬映るシーンがあるが、「ac41 1325c」の刻印から「1941年製造の31321挺目」であることがわかる(出典)。
- キーアイテムであるシルバーメタリックのP38はその装飾と数奇な運命から視聴者に強烈な印象を焼き付けた。DVDやサウンドトラック等のキービジュアルではフレーム部に「3809i」の製造ナンバーが刻印されている。なお、WWII当時はステンレスの加工が難しくP38のシルバーモデルは公式には実在しない為、高級将校用をイメージしてデザインされた架空のモデルである。
- 衛星管理ホストコンピュータの画面に「KUMO GATA EISEIHOU(蜘蛛型衛星砲)」「TIMER-NI NATTE/SIMO-TAYO(タイマーになってしもーたよ)」「ATO/CHOTTODE BAKUHTU!!(後ちょっとで爆発!!)」と書かれたウィンドウがある。
- 銭形が入院していた病室の番号は日本の警察官だけに「110」。また、療養先で演歌を聴いているシーンではハイライトらしきパッケージの煙草が一瞬見える。
- 銭形がポータブルプレイヤーで聴いている演歌は病室のポスターから「男とは/ジョー憲二郎」と書いてあるが実際は演歌歌手、宮川たかしの「花咲船」である。サントラの曲名も「花咲船」になっている。
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ルパン三世 ルパン三世長編シリーズ ワルサーP38 ハードボイルド
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