概要
昭和46年(1971)年10月。子供達が「第二次怪獣ブーム」で盛り上がるなか、TVアニメで放送開始された「ルパン三世」の記念すべき第1回作品。
ハードボイルドな雰囲気。 ルパンと次元、銭形の関係。不二子の裏切りといった後の定番となるシーンや、作画監督大塚康生氏による車と腕時計の完成度の高い描写、そして犯罪組織との対決、カーチェイスと見所満載!
製作スタッフ
原作 モンキー・パンチ
連載 Weekly漫画アクション
作画監督 大塚康生
撮影監督 三沢勝治
音楽 山下毅雄
録音監督 田代敦巳
編集 井上和夫
演出 大隅正秋
脚本 山崎忠昭
コンテ 高橋和美
原画 小林治 今沢哲男 河内日出夫 岡迫亘弘
動画 有原誠治 湊和良 平田珠代 前田実
仕上げ 山浦浩子 富岡義和 八巻光子 長尾美代子
背景 井岡雅宏 阿部泰三郎 川井憲 一瀬通子 沼井信朗
撮影 東京アニメーションフィルム 大和田亨
演出助手 根来昭 吉田茂承
制作進行 真田芳房
音響 グループ・タック
現像所 東京現像所
主題歌 作詞 東京ムービー企画部
作曲 山下毅雄
制作協力 Aプロダクション
制作 よみうりテレビ 東京ムービー(現 トムス・エンタテインメント)
声の出演
ルパン三世 山田康雄
次元大介 小林清志
峰不二子 二階堂有希子
銭形警部 納谷悟朗
コミッショナー 滝口順平
STORY (※ネタバレ有り)
昭和46年(1971) 年10月24日。日曜日pm19:30-pm20:00。
とあるレース会場
日本。これから始まるF1カーレースに向けて、整備員達による各マシーンの整備が行われていた。
そんな中、周囲を見渡し、一台のマシーンに近寄る怪しい整備員の姿が。
その整備員が缶を持った瞬間…。肩をトントンと軽く突かれる。整備員が振り向くとレーサー服の男が立っていた。
「!!」(整備員)
「ねぇ、そんな缶もってどうするの?」(レーサー)
「あの、オイル点検しようと思いまして・・。」(整備員)
「オイルをね。キミはこのクルマの係かい?」(レーサー)
「いえ、そのう・・・。」(整備員)
「じゃ、キミに用はないな。このクルマすっかり整備済みなんでね。」 (レーサー)
「は、はい!」(整備員)
整備員が慌てて走り去った後、レーサーはヘルメットの通信機で相棒に連絡を取る。
このレーサーこそ、怪盗アルセーヌ・ルパンの孫で大泥棒ルパン三世(以下 ルパン)である 。
「次元、こちらルパン。やっぱり変なのがウロウロしはじめたぜ。所でそっちの様子はどうだ?」 (ルパン)
「いやぁ、こっちはのんびりしたもんだ。小鳥がピーチク鳴いてるぜ。」
丘の上では、ルパンとの通信を返答する黒スーツの男がのんびりと寝転がっていた。
ルパン三世の相棒、早撃ち0.3秒のクールなガンマン次元大介(以下 次元)である。
「お前の事じゃない。オレの恋人峰不二子はどうした? その後連絡は無いか?」(ルパン)
「お前の恋人? あの女、どうやらホテルミラクルへ忍び込んだぜ。
その後の連絡は無いがね。まっ、上手くいってるぜ。」(次元)
ホテルミラクル(犯罪組織スコーピオンのアジト)
その頃、ルパン三世の恋人峰不二子(以下 不二子)は、犯罪組織スコーピオンの集会場に潜入していた。
「諸君!今日の総会の目的は、我がスコーピオンの宿敵ルパン三世の葬儀を行いたいが為だ。
左様、ルパンはまだ死んではおらん。しかしまもなく死ぬ。その死に様を諸君と共にとっくりと拝見しょうと言う訳だ。
さてと・・、その前にぃ。」(コミッショナー)
スコーピオンのボス。コミッショナー(別名 ミスターX) が座る座椅子のスイッチを押すと、天井の照明が消え、不二子の姿が照らされる。
「はっ、しまった!」(不二子)
「ふははははははははははっ」(コミッショナー)
次元に急いで連絡する不二子だが、コミッショナーの部下に取り押さえられる。通信機を破壊されて囚われの身となってしまった。
『ルパンは燃えているか・・・・?!』
集会場のステージに磔された不二子。コミッショナーが不二子に近寄る。
「ヒッヒヒヒヒヒ・・・・・。私はねぇキミの行動を承知で今まで自由に泳がせておいてやった。
下手に騒いでルパンを刺激したりすれば、練りに練ったルパンの葬儀計画が水の泡に成りかねない。そう考えたもんでね。」(コミッショナー)
「スコーピオンともあろう者が子どもだましにしては大袈裟過ぎない事?」(不二子)
「そう、これから始まるその子どもだましに花を添えるのがキミの役目と言う訳さ。」(コミッショナー)
「葬式行列のバトンガールでもやれっておっしゃるの?せっかくだけど無理だと思うわ。ルパンは不死身の男よ。」(不二子)
「今まではね。しかし今度は賭てもいいんだよ峰くん。ルパンの死をねぇ。」(コミッショナー)
そういうとコミッショナーは、ステージに設置されている機械のスィッチを押す。すると巨大スクリーンが出現。レース会場が映し出される。
「飛弾スピードウェイ。5年の歳月、50億の巨費を掛けて築き上げた東洋一の大レース場だ。
こけら落としの今日、これから行われるグランプリレースに日本レーシング連盟の名を借りて我々が特に招いたひとりの選手がいる。
フェラーリ312Bに乗ったこの男だ。そう、ルパン三世だ。
あれほど用心深く、抜け目のないルパンがことレースとなると一枚の招待状でコロっと引っかかる。
これだから人間はおもしろいねぇ、峰くん」(コミッショナー)
「そんなことより引き合うの? ルパンたったひとりを消すために、50億も掛けてレース場を作ったりして。」(不二子)
「ヒヒヒヒヒヒ…。私はね、ルパンひとりを消すんじゃない、ルパン帝国のシンボルそのものを叩き潰してやるんだ。
最大の支えを失った商売がたきはたちまちガタガタになる。アハハハハハハハ。」(コミッショナー)
コミッショナーはいやらしい手つきで、手のついたステッキを不二子の豊満な胸に当てる。
「!!」(不二子)
「間もなくレースはスタートする。コースは山あり、谷あり、意外な落とし穴があるかもしれん。そうだろ? ん?
コースに設置した100台のテレビカメラがそれを我々に見せてくれるという訳だ。
そして峰くん。その一部始終を見守りながら、キミも死んで行く事になる。ウハハハハハハハッ。」(コミッショナー)
犯罪組織スコーピオンは、飛弾スピードウェイで開催される偽のグランプリレースで最大の敵ルパン三世抹殺計画を企んでいたのだ。
飛弾スピードウェイ
一方、飛弾スピードウェイでは、偽りのF1カーレースがいよいよ開始されようとしていた。
フラッグマンのチェッカーフラッグが勢いよく振られると同時に、全マシーンが一斉に飛び出す。
ルパンが搭乗するフェラーリ312Bは、次々とマシーンを抜かして一番手に乗り出した。
好調なスタートを切ったルパンに、次元から不二子の連絡が途切れたと連絡が入る。
このレース自体がスコーピオンの罠だとルパンは気づいていたが、既に承知の身であった。
フェラーリ312Bを追う世界一流のレーサー達が乗る怪物マシーン。
ジュン・サーティースのサーティスTSセブン
ジャッキー・シュチュワートのフォード・ティテル
デニス・ハルムのマクラーレン
ベルト・ワーズのマトラシムカ
しかし、どのレーサーもスコーピオンの工作員。各怪物マシーンもスコーピオン系列会社が製造した偽物だった。
そんな中、ルパンと次元は、フェラーリ312Bの背後に接近する一台のマシーン、ロータス72に気づく。
スコーピオンの刺客か!?と警戒する次元だが、ルパンはレーサーの正体を見抜いていた。
その男はルパン三世逮捕を目標とする。銭形平次の子孫で永遠のライバル銭形警部(以下 銭形)であった。
「ルパン・・。こんな風に貴様を追い続けてもう何年になるだろう。
血が、宿命が、貴様がアルセーヌ・ルパンの孫でなかったら、オレが銭形平次の子孫でなかった・・、
オレは必ず貴様を捕まえる。キザな悪党め、オレは必ず貴様を今日こそ・・、今日こそ捕まえて見せる。
お前は今日ここできっと何かやらかすに違いない。オレはどんな事があってもお前のクルマから目を離さんぞ。」
その頃、スコーピオンの工作員達にルパン三世抹殺計画に着手せよとコミッショナーの指令が下る。
時速200キロで疾走するフェラーリ312Bにスコーピオンの魔の手が迫る。
あくまでレース中の事故とみせかけるため、コース上にに大量のオイルをばら撒き、数十本の丸太を落としたりとあらゆる手段を使うが、゜
A級ライセンスの腕を持つルパンは、華麗なるテクニックで次々と回避。
罠を脱したルパンは次元に「こっちもそろそろ始めようか。」と合図を送る。
ルパンの合図を受けた次元は自身のスーツを脱ぎ捨てると、中にはルパンと同じレーサー服を着用。
トラックに積んである同型のフェラーリ312Bに乗り込み、左手にはめてある腕時計の針を見つめる。
腕時計の針が12時と重なったと同時に急発進させ、ルパンとの交流地点へ飛ばす。
コースに設置されてるカメラのわずかな死角地点で次元はコースの場内へ、ルパンはコースの場外へ
一秒の狂いもなく入れ替わることに成功!。
次元がスタンドインを務めている間、丘の上にあがったルパンはすぐさまバイクに乗り換え、犯罪組織スコーピオンのアジト ホテル・ミラクルへ向かった。
ホテル・ミラクル(犯罪組織スコーピオンのアジト)
ホテル・ミラクルに潜入したルパンは水道局の業者に変装。
ホテルの支配人にトイレの故障調べと称して婦人用のトイレへ入り、
隠し持っていたトンカチで水道管を力強く叩いて破裂させ、辺り一面を浸水させる。
屋上の貯水タンクをドリルで穴を開けてさらに水浸しにし、スコーピオンの配下を蹴散らして電源設備を制圧した。
その頃会議室では、不二子を磔にした台から無数の手が伸びて、不二子をくすぐり拷問を始める。
笑い悶え苦しむ不二子を満足そうに眺めるコミッショナー。
「ふふふふふ…。どうだね?ルパンは死の一歩手前だ。そしてキミはどうかな?はははははっ。」(コミッショナー)
と、その時。会議場全体に大量の水が流れ込んた。
「み、水!?」(コミッショナー)
大混乱する会議場。
「何だこの水は!? 早くドアを閉めろ! 早く!!」(コミッショナー)
流されてきた支配人がコミッショナーに報告する。
「コ、コミッショナー!ル、ルパン…。ルパンの仕業です。」(支配人)
「な、何だと!?バカモノ! アレを見ろ!!奇跡でも起こらん限りルパンは…。」(コミッショナー)
コミッショナーは、巨大スクリーンに写っているのは次元だと全く気がつかない。その時……。
「起こったんだな。それが…。」
「んっ!?」(コミッショナー)
巨大スクリーンの前に、ルパン三世颯爽と登場。
「ルパン!」(コミッショナー)
「ルパン!!」(不二子)
「ルパン!!!」(部下達)
「そう、ホテルの名がミラクル。奇跡が起こっても不思議は無い。
さぁて、スコーピオンの葬儀を始めようかな?」(ルパン)
ルパンが手に、10000Vの高圧電流が…。
「わぁっ!!撃て!!撃てぇーーーーーっ!!!」(コミッショナー)
慌ててマシンガンを乱射する戦闘員だが、ルパンはあっさり避けて高圧電流を水の中へ放り込む。
水没した会議室に10000Vの電撃がほとばしる。
「うわあああああああああっ!!!」
「ぎゃあああああああああっ!!!」
「あああああああああああっ!!!」
断末魔と共にスコーピオンの幹部、戦闘員達は全滅した。
スコーピオンを葬り去ったルパンは、激しいくすぐり拷問で服がボロボロになった不二子の元へ歩み寄る。
「やぁ、不二子。気分は?」(ルパン)
「え、えぇ…。まぁまぁって所かしらルパンさん。でも、同じ事ならもー少し早く来て欲しかったんだけど……」(不二子)
「いえいえ、もう少し遅らした方が良かったかも知れないんだけど。」(ルパン)
ホテル・ミラクルを後にしたルパンと不二子は、飛弾スピードウェイレース会場へ帰還する。
飛弾スピードウェイレース会場
一方。会場では、今尚もF1レースが続けられていた。銭形もルパンと次元が入れ替わってることには気づかなかった。
腕時計の針が進む中、次元はロータス72を振り切り、再びカメラの死角地点へマシーンを飛ばす。そこへ駆けつけるルパン。
そして、ルパンはコースの場内へ、次元はコースの場外へ再度入れ替わることに成功!。
丘の上へ移動した次元は、そこで待機していた不二子と合流。しかし、不二子の手にはなぜかトンカチが…。
ルパンのフェラーリ312Bは、次々とスコーピオン側のマシーンを追い越すと同時に丸い何かを取り付ける。
圧倒的なスピードで堂々一位にゴール! 優勝を果たす!
湧き上がる歓声。空に舞う色とりどりの風船。何もしなかったルパンに銭形は疑問を抱く。
表彰台に立つルパンに、スコーピオンの工作員扮する競技委員長が時限爆弾を仕込んだ優勝トロフィーを手渡す。
表彰台からそっと離れる工作員達。爆発が迫る中、何も知らずに優勝アピールするルパン。
秒読みが10を切った。爆発まで10… 9 …8 …7…6…5 …4…
「おい!競技委員長さん!!」(ルパン)
全てお見通しのルパンは、トロフィーを工作員達の方へ放り投げる。
「はい! プレゼント!」(ルパン)
爆発に巻き込まれ、黒こげになり倒れる工作員達。
フェラーリ312Bに乗り込み全速力で飛ばすルパン。追跡するスコーピオンの刺客達。
銭形も後を追おうとするが、トラックを運転する不二子に制止させられる。
「馬鹿!! 邪魔する気かぁ!!?」(銭形)
「駄目よ。死ぬのがイヤならここにいなさい。」(不二子)
「何だと!!?」(銭形)
数十台に追われる中、ルパンは腕時計を見てカウントダウンを始める。
カウントが0になるとと同時に追手のマシーンが次々と大爆発を起こす。先程、ルパンが取り付けたのは小型時限爆弾だったのだ。
所構わず爆発した影響により、レース会場は大混乱に陥った。火の海から逃げまとう観客達。
崖の上からその光景を見ていた満身創痍のコミニッショナーは、
「うひひひひ…。燃えている、燃えている。ルパンも燃えたぁ。 うひひひひひひ……。」と呟きながら絶命。
かくして犯罪組織スコーピオンは、5年の歳月と50億の巨費を掛けて建設された
飛弾スピードウェイレース会場と共に、炎の中へ崩壊するのであった…。
廃墟と化したレース会場で、立ち尽くすルパン 不二子 銭形。銭形がルパンに詰め寄る。
「自分にはちゃんとしたアリバイがある」と余裕をかますルパンだが、その背後で銭形に何やら耳打ちする不二子。
「お前のネタはバレている」と勝ち誇る銭形がトラックの荷台を開けると、捕まった次元が。
動揺するルパンの目の前で銭形に寄り添う不二子の姿。
実は不二子は自身の逮捕状失効のために、最初から銭形に協力していたのだ。
手錠をかけられたルパンに不二子は別れを告げると、口付けをしてその場を去った。
銭形はルパンを連行しょうとするが、全壊のマシーンに入れ替わっていたため結局逃げられてしまう。
夕陽の海岸線
美しい夕陽の海岸を走る不二子のアルピーヌ。
後部座席には、いつの間にかルパンが。
「裏切り者を消しに来たって訳?」(不二子)
「とんでもない。裏切りは女のアクセサリーのような物さ。
いちいち気にしてちゃ、女を愛せる訳はないぜ。 そうだろ?」(ルパン)
夕陽に包まれながら、ルパンと不二子を乗せ走り去るアルピーヌで幕を閉じる。
END