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概要編集

第二次世界大戦前に、アメリカ軍は後方部隊の警備用火器として小銃サブマシンガン拳銃等を使用していたが、いずれも使い勝手が悪かった。


そこで、小銃弾より反動が少なく、拳銃弾より威力が強い扱いやすい中間的な弾薬の開発をウィンチェスター社に依頼し、.32ウィンチェスター・セルフローディング弾を.30口径に設計し直し、.30カービン弾が開発された。


続いて、各銃器メーカーにより.30カービン弾を使用する新型軽小銃の競争試作が行われたが、第1回審査では採用なしとなった。

その頃、ウィンチェスター社はM1ガーランドの後継としてG30を開発していたが、競争試作では採用されなかった。デビッド・マーシャル・ウィリアムズ技師がG30の改良を続けていたところ、ルネ・スタッドラー陸軍少佐がウィンチェスター社に対し.30カービン弾向け小銃の開発を持ち掛け、1941年9月30日、G30を軽量化したG30Rを元にした試作銃がM1カービンとして陸軍に採用された。


銃身にM8グレネードランチャーを装着し、発射用空砲を使用することでライフルグレネードの発射も可能である。


.30カービン弾は従来の小銃弾と比べて威力と射程距離が劣るが、反動が少なく安定した射撃ができる。

最前線の撃ち合いでは少々威力不足だが、開発コンセプトに則った銃に仕上がっていたため問題無しとされた。



同じ「M1」でもM1ガーランドとは開発者が違う。


仕様編集

全長904mm
銃身長457mm
重量2490g
弾薬.30カービン弾(7.62×33mm)
装弾数15/30発

運用編集

第二次世界大戦時はアメリカ軍を中心に幅広く運用された。

当初は、基地や拠点の警備、輸送部隊や車両乗員の自衛などに使用されていたが、やがて従来拳銃トンプソン・サブマシンガンなどで武装していた部隊指揮官の間で人気を博すようになった。

拳銃とのアドバンテージは言うに及ばず、トンプソン・サブマシンガンはサブマシンガンとは言え5kg弱と重く、重量が凡そ半分で威力が高い本銃は、後方火器として設計されたにもかかわらず前線で多用されるようになった。

また、空挺部隊の装備や、取り回しの良さからジャングル戦などで使用する者が出るなど、主力小銃のM1ガーランドに隠れがちながらも様々な将兵から愛された銃であった。


一方で、やはり「前線で使用するには威力不足」という声も聞かれ、1944年からは試作段階で没案となっていたフルオート機能を復活させる計画が始まった。

フルオート機能を搭載したカービン銃は「M2カービン」と呼ばれて徐々に置き換えが進んだが、大火力を歓迎した将兵もいたものの、「フルオートを使用すると扱いづらい」という意見も多く聞かれた。


第二次世界大戦後編集

第二次世界大戦後も、引き続き軍隊や警察で使用された。

アメリカ軍では、ベトナム戦争の終わり頃まで使用されていたが、朝鮮戦争の頃には威力不足を嫌われて前線部隊での人気は下火気味となった(命中していなかっただけとも言われている)。


アメリカ以外では、同盟国や友好国への供与や売却が積極的に行われたため、最終的に本銃を使用した国は50カ国にのぼるとも言われている。

大きさが手頃で威力もそこそこな銃として各所で人気で、M1ガーランドよりも広範に使用された。

日本の周辺では、中華民国大韓民国ベトナム共和国といった国々に供与された。


アメリカなどの民間人の間でも、軍からの払下げ品や民間向けに製造された銃が入手できるようになると手頃なサイズと威力で好評を博した。自衛用やプリンキング用の他に、牧場や農場の害獣を駆除するランチ・ライフルとして人気が高い。

一方で、コンパクトで威力があることから犯罪に多用された。

隠匿が簡単で取り回しが良いように、バレルやストックを切り詰めて使用することが多かったと言われている。


また、1950年にマラヤ共産党軍が起こしたブキットケポン事件でも使用されたが、その際この銃には日本人の共産党軍メンバーが作った八九式擲弾筒を基にしたといわれる手製のアンダーバレルグレネードランチャーが装着されていた。

この時代にはまだ米軍はアンダーバレルグレネードランチャーの開発を行っていない為、意図せずに時代の一歩先を行ったといえる。


日本での使用

日本においては戦後、警察予備隊の創設時にアメリカより供与された。

保安隊を経て自衛隊に改組後、64式小銃の配備が始まっても訓練による射撃数が少ない海上自衛隊航空自衛隊を中心に少なからぬ数のカービン銃が長きに渡って使用され続けた。

米国占領下の沖縄では琉球警察(現沖縄県警)に供与されていたほか、米軍基地に勤務する軍雇用員で組織された「琉球警備連隊」でも使用された。


また、民間向けでは豊和工業により猟銃として再設計された豊和M300鹿などのにおいて、獲物を追い込む勢子を中心に愛用された。

一方で、他国と同様に犯罪に使用されることも多く、1950年代から70年代に掛けて凶悪犯罪事件で多用されたため、銃刀法が改正されることとなった。


派生モデル編集

空挺部隊用に折りたたみ可能なワイヤーストックに変更したM1A1カービン、フルオート機能付きのM2カービン、M2にT120暗視装置を付けたM3カービンが存在する。


U.S.M1A1 カービン 前期型

M1A1カービン


U.S.M2 カービン

M2カービン


M3 Carbine with noctvision

M3カービン


計画のみのものでは折りたたみ可能なストックと照準装置に変更を加えたM1A2、パンタグラフ式ストックに変更したM1A3がある(共に量産はされず)。


余談編集

デビッド・マーシャル・ウィリアムズ技師は殺人罪で服役中、所長の取り計らいで刑務所内の工作機械を使ってカービン銃を開発し、「刑務所でカービン銃を作った男」として有名人となり、出所後にM1カービンの開発に加わった。


また、この銃に限ったことではないが「カービン」は「騎兵銃」を意味し、短銃身で設計され、何かに乗りながらでも撃てる様な文字通り「騎兵のための銃」を意味する。

昨今は単純に「短銃身銃」という意味でのみ使用される


関連イラスト編集

バイク偵察兵文ちゃん@エクストリーム流鏑馬M1 Carbine Girl


関連タグ編集

自動小銃 カービン M1ガーランド 個人防衛火器

M1A1(ドールズフロントライン)

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