概要
1936年に、アメリカ陸軍が制式採用した自動小銃。正式には「United States Rifle, Caliber .30, M1」。
当時の主力小銃であるスプリングフィールドM1903を更新するため、ジョン・C・ガーランドによって設計・開発された。愛称の「M1ガーランド」は彼のファミリーネームから。
当時は一発撃つたびに排莢・装填を行うボルトアクションライフルが主流だった。引き金を引くだけで次々と撃てる半自動・全自動銃は技術的に可能でも、それを大量に配備したり、生産し続けること、弾薬を供給し続けることには膨大なコストがかかり、難しかった。
しかし、豊富な資源と圧倒的な生産能力を持つアメリカはその常識を覆した。
作動方式は、ガス圧作動式で装弾数は8発。弾薬はM1903から使用されていた .30-06スプリングフィールド弾 である。
装填は8発入りの専用のクリップを使用するが、クリップが無いと作動しない。その上クリップは弾を8発入れないと用を為さなかった。
かなり使い辛い設計に思えるが、これはクリップは使い捨てる事を前提に設計されていたためとされる。
実戦配備
制式採用後も不況のため大量生産のための予算が下りず、配備は遅々として進まなかった。
1940年、国際情勢の緊迫によりアメリカ合衆国は徴兵制度を実施。陸軍兵力はそれまでの10倍近い170万人にも膨れ上がっていたが、M1ガーランドの生産数は10万挺に満たなかった。
1941年12月7日、日本海軍が真珠湾を奇襲して太平洋戦争が勃発。これでやっと、M1ガーランドが量産に入る事が決定した。
アメリカ軍は1942年までにM1ガーランドを全戦闘部隊に配備し、第二次世界大戦の戦場で枢軸国軍を圧倒、アメリカを勝利へ導いた。
この功績から、ダグラス・マッカーサーやジョージ・パットンなどから最大限の賛辞を受けている。
最終的な生産数は凡そ625万挺である。
大戦中は米軍以外の連合国軍に供与されたほか、大戦後には中華民国、大韓民国、日本、ベトナム共和国といった友好国に供与された。
日本では警察予備隊に供与された。その後、保安隊を経て自衛隊成立後、64式小銃にバトンタッチして一線を退いた。
現在では、少数が儀仗用に使用されており、式典で見ることができる。
仕様
全長 | 1100mm |
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銃身長 | 609mm |
重量 | 4310g |
弾薬 | .30-06スプリングフィールド弾(7.62×63mm) |
装弾数 | 8発 |
長所
●部品の規格が統一されていた。
●頑丈。
●連射性能と命中精度に優れ、敵軍を圧倒した。
短所
●大きく、重い。
●8発撃ち尽くさないと(戦闘中では)再装填が難しい。
●クリップを失くすと弾があっても連発では使用できない。
●弾を撃ち尽くしクリップを排出した時に金属音が大きく鳴り敵に弾切れと知られる。
※クリップの排出音に関しては「機関銃や砲撃等様々な轟音が響く戦場で聞き分けられるのか」といった指摘も見受けられる。
銃剣
従前からの銃剣が使用されたり、改良が何度か行われたためバリエーションは多岐に渡った。
鞘の種類はさらに多岐にわたるが煩雑となるため割愛。
M1905
元々、スパイク型銃剣を使用していたM1903ライフル向けの銃剣。
M1ガーランドにも使用できる。全長およそ20in(51cm)、うち刃渡りは16in(41cm)とかなり長い。刃先は槍型でダガーに近い形である。
太平洋戦争勃発後の1942年からは、やや簡略化された「M1942」と呼ばれるものが登場したが、程なくして刃渡りが短い銃剣が主流となった。
しかしながら、長い銃剣を付けた銃で白兵戦を挑んでくる日本兵に悩まされた太平洋戦線では、M1905を使いたがる兵士が多かったそうである。
M1905E1
M1905銃剣を改造して刃渡り10in(25cm)まで切り詰めたもの。刃先は先端が峰に寄った形。
軍の自動車化が進み、長い銃剣や鞘が乗車時や野外活動の際に不便となったことなどからより短い銃剣が適当とされたため、1943年からM1905の刃先を切断して兵士らに再支給した。
元の銃剣の血抜きがそのまま刃先まで伸びた特徴的な刀身である。
M1
M1ガーランド向けに開発された刀身の短い銃剣。開発経緯はM1905E1と同じで、こちらは改造品ではなく新規開発品である。
全長は14in(36cm)で、刃渡りは10in(25cm)。刃先はダガーに似た形である。
M5
1953年に開発された銃剣。
全長は11.5in(29cm)で、刃渡りは6.5in(17cm)。
これまでの銃剣と共に朝鮮戦争で使用されたが、採用後程なくして休戦となった。
派生型
- タンカー(Tanker)・・・全長16インチ(約40cm)に切り詰めたカービンモデル。「タンカー」は油槽船ではなく戦車兵に由来する。(綴りは同一)戦後に開発されたモデルで民間に多く使用される。
- M1C/M1D・・・改修を施してスコープを取り付けて狙撃銃としたもの。
- 四式自動小銃・・・大日本帝国が製造したガーランドのコピー。纏まった数が揃う前に終戦に。
第二次世界大戦後も運用され、改良派生型M14やBM59が誕生した。
現在では民間のマニア需要や儀仗銃のみでほとんど使用されていないが、様々な時代の銃器が入り乱れカオス極まりない状態であるブラジル警察では現役であり、M14EBR風の近代化改修ができるSAGE INTERNATIONAL社製のM1ガーランドEBRストックを装着され運用されている。