銃の作動方式の一つ。全ての操作を手動で行う後装銃。
主に小銃で使用される作動方式である。
概要
ボルトアクション式と同じく全ての操作を手動で行う連発銃にレバーアクション式やポンプアクション式があるが、これ等の銃と比べると構造が簡単で、故障が少なく、高い命中精度が出し易い、と言った特徴が備わった優秀な銃である。
原型の登場から既に200年弱と歴史は長く、狩猟や競技と言った長距離射撃向けとしては完成の域であると言える。
欠点は全ての操作を手で行う為に速射性能は低くどれだけ早くしても半自動小銃程度で、連射の利く自動小銃等と比べて不利という点。
この為、戦闘用途では自動小銃(アサルトライフル)の登場と共に主力の座から降ろされたものの、狙撃用や民間の狩猟用やスポーツ分野における射撃競技用と言った特殊な用途ではまだまだ現役である。
とりわけ、狙撃は連射性能よりも一発の命中精度に重点が置かれる為、連射出来ない代わりに精度の高い射撃が可能なボルトアクション式の狙撃銃は現在でも多くの軍や警察で未だ現役で、オートマチック狙撃銃も多数リリースされている中で敢えてボルトアクションに拘るベテランスナイパーも少なくない。
また、ボルトアクション式は自動式と違って弾丸の重量や装薬を増減させても動作に支障をきたす事が無い為、現在までの地位継続に一役買っているといえる。
民間用ではライフルの他に散弾銃もある。
自動式と違ってとにかく丈夫で回転不良のリスクが低い為、村田銃の頃から現在でも根強い人気があり、ドイツやロシアで耐久年数を過ぎた軍用小銃が民間向けに散弾用銃身を差し替えられて払い下げられると言った事例があった。
ピストルでも狩猟用や競技用、特殊作戦用など必要に応じて使用される。
操作・構造
下記の方式と区別してターンプルアクションとも言う。
操作は簡単で、ボルトハンドルを起こして後ろに引き、引ききった所で前に戻して、ボルトハンドルを倒す。
ボルトハンドルを倒した状態で射撃する。これを一発ずつ繰り返す。
ボルトハンドルを起こすとロッキングが解除され、ボルトハンドルを後ろに引くと撃ち殻の薬莢を排出、前に戻す時に新しい弾を薬室へ送り込み、ボルトハンドルを倒すと薬室とボルトが完全にロックされて射撃が出来る。
ボルトハンドルを最後まで引ききらずに前進させてしまうと排莢と撃発の準備がされていても装填がされていないという事態を引き起こし、空撃ちと成ってしまう事がある。
ストレートプルアクション
ボルトハンドルを「起こす」「引く」「押す」「倒す」の4動作が必要となる既存のアクションを改良した、ストレートプルアクションと呼ばれるものも登場した。
これは、ボルトハンドルを起こす必要が無く、ハンドルを操作して引ききり、前に戻す2動作で射撃が可能となり、オートマチックに迫る速射も可能となる。
1800年代末にはこのアイデアは生まれていたものの、軍用のみならず民間用としても後へと続く完成形は出来ず、現在も様々な企業が様々な構造のストレートプルを開発している。
1993年に発表された民間・警察向けの「ブレーザーR93」はストレートプルアクションでも出色の出来とされている。しかしこれが完成形となることは無かった。
今の所、ライフルで軍用に供される事は無さそうだが、狩猟や射撃精度と速射性の両立が求められるバイアスロン競技で使用されている(ショットガンであればC-MORE M26 MASSでストレートプルボルトアクションが採用されている)。
撃発機構や、安全装置、弾倉の構造(銃への弾薬の装填)等はモデル毎に大きく違いがあるので省略。
歩兵小銃以外では…
狩猟用の散弾銃は、弾の種類を選ばず回転不良が無い為シェアは低いものの根強い人気がある。
散弾銃の弾はかなり種類が多く、自動式で射撃する場合は弾の種類によって回転不良が起こるため調節が必要となるが、ボルトアクション式の場合はこれらが不要である。
特に散弾銃向けのスラッグ弾(鉛製の一発弾)を使う場合、ライフル銃ほどでは無いが近距離でよく当たるので、ライフル銃の所持資格が無い者や射程よりも単発での威力を重視するハンターに愛用されている。(裏を返せばそれ以外では、他のタイプの方が有利なのでニッチな銃とも言える)
日本では、明治時代から昭和の中頃に掛けて軍払い下げの村田銃を滑腔銃身の散弾銃に改造したり、或いは村田銃をコピーした猟用の散弾銃が使用された。
現在でも、国内ではミロク、海外でも数社がボルトアクション式の散弾銃を製造している。
対物ライフル(対戦車ライフル)にも自動式もある為ボルトアクション式の独壇場とは言えないものの、車両は勿論のこと1,000m超えの超長距離狙撃任務などに正確性が求められる事から非常に多く採用されている。
50口径(12.7mm)や14.5mmといった一般的なものに限らず、南アフリカでは口径20mmの「NTW-20」、中東などでは23mm対空機関砲の弾薬を使用する大口径のボルトアクション式対物ライフルも製造されている。
シリアなど戦場と成った地域の町工場で製造される「お手製」対物ライフルは、機関砲の機関部を流用したもの以外ではボルトアクション式が多い様である。
古くはオブレズピストルという革命の武器として非合法にライフルを改造しゲリラ・市街地戦に対応したものが存在していた。
その後、第二次世界大戦にはウェルロッドと言う密閉度確保し消音効果のためにボルトアクション式にした拳銃が現れている。(ボルトアクションではないがMK22 Mod0のように自動式を改造して自動装填機構を無効化し、手動で排莢・装填を行う拳銃も登場している)
50年代に入り、レミントンがボルトアクションライフルを拳銃化してXP-100という小型動物狩猟用の精密狙撃拳銃を作った。
この銃は専用弾を用いた高い精度で知られ、ハンドガンヴァーミンティングという狩猟形式の立役者となったが、最初は後追いが全く作られなかった。
しかし2000年代に入り、軽量化のブームが来るとサベージやベルガラといった企業が拳銃サイズと言える短いライフルを作り始め、徐々に後追いが生まれ広まり始めている。
基本的にはXP-100かオブレズピストルどちらかが基本フォーマットとなっている。
特殊用途向けではあるが、動物の安楽死用としてB&T VP9が作られている。
主なボルトアクション方式の銃火器
日本
- 東京砲兵工廠三十年式歩兵銃(1897年)
- 東京砲兵工廠三十五年式海軍歩兵銃(1902年)
- 東京砲兵工廠三八式歩兵銃(1905年)
- 東京砲兵工廠四四式騎兵銃(1911年)
- 小倉造兵廠66式歩兵銃(1923年)
- 東三省兵工廠奉天十三式歩兵銃(1924年)
- 小倉造兵廠九七式狙撃銃(1937年)
- 名古屋工廠第一案試製歩兵銃(1938年)
- 小倉造兵廠九九式歩兵銃(1939年)
- 小倉造兵廠九九式短歩兵銃(1939年)
- 小倉造兵廠二式歩兵銃(1942年)
- 豊和ゴールデンベア猟銃(1960年)
- 豊和M1500狙撃銃(1979年)
- ミロクA-ボルト猟銃(1985年)
- 豊和HCR猟銃(2017年)
- 豊和M1100猟銃(2020年)
- 豊和H7猟銃(2023年)
ロシア・ソ連
- トゥーラモシン・ナガン歩兵銃(1891年)
- コヴロフデグチャレフPTRD1941対戦車ライフル(1941年)
- トゥーラTOZ-106散弾銃(1993年)
- イズマッシュSV-98狙撃銃(1998年)
- デグチャレフKSVK対物ライフル(2000年)
- KBPVKS消音狙撃銃(2005年)
- ロバエフDVL-10精密狙撃銃(2009年)
- ADARラドガ猟銃(2018年)
- カラシニコフSV-21狙撃銃(2022年)
アメリカ
- スプリングフィールドM1903歩兵銃(1903年)
- ウィンチェスターM70猟銃(1936年)
- マーリンM55散弾銃(1954年)
- ウェザビーマークV高級猟銃(1957年)
- サベージ110猟銃(1958年)
- レミントンM700猟銃(1962年)
- レミントンXP-100狩猟拳銃(1963年)
- スタームルガーM77猟銃(1968年)
- グレンデルSRT狙撃銃(1985年)
- C-MOREM26MASS散弾銃(1997年)
- バレットM99対物ライフル(1999年)
- マクミランTAC-50対物ライフル(2000年)
- チェイタックM200狙撃銃(2001年)
- サベージ210散弾銃(2008年)
- APOASW338狙撃銃(2009年)
- レミントンMSR狙撃銃(2009年)
- スタームルガーアメリカン猟銃(2012年)
- ブラウニングマラル猟銃(2013年)
- モスバーグパトリオット汎用狙撃銃(2015年)
- サベージ110PCS狙撃拳銃(2021年)
- コルトCBX精密狙撃銃(2023年)
イギリス
- RSAFリー・エンフィールド歩兵銃(1895年)
- RSAFボーイズ対戦車ライフル(1937年)
- スターリングデ・リーズル消音狙撃銃(1943年)
- ステーションIXウェルロッド拳銃(1943年)
- RSAFL42A1狙撃銃(1970年)
- パーカー・ヘイルM82狙撃銃(1972年)
- BMSカム猟銃(1980年)
- AIL96A1狙撃銃(1988年)
- AIL115A1狙撃銃(1996年)
- AIAXMC MKⅠ狙撃銃(2010年)
- RPAレンジマスター標的射撃銃(2010年)
- SCDサイクロン狙撃銃(2017年)
- AIAXMC MKⅢ狙撃銃(2020年)
フランス
- CARルベル歩兵銃(1886年)
- CARベルティエ歩兵銃(1892年)
- MASMAS-36歩兵銃(1936年)
- GIATFR-F1狙撃銃(1966年)
- PGMウルティマラティオ狙撃銃(1991年)
- PGMミニヘカテ狙撃銃(1993年)
- PGMヘカートⅡ対物ライフル(1994年)
- シャピュイROLS猟銃(2017年)
- PGMミニヘカテⅡ狙撃銃(2021年)
スイス
- W+Fベルンシュミット・ルビン歩兵銃(1889年)
- シグザウアーSSG2000狙撃銃(1898年)
- ヘンメリーターナー・マッチ競技銃(1962年)
- AMSDOM50ネメシス狙撃銃(2001年)
- B&TAPR308精密狙撃銃(2003年)
- B&TVP9]獣医用拳銃(2014年)
- シグザウアークロース精密猟銃(2019年)
- B&TSPR300狙撃銃(2020年)
ドイツ
- G.P.K.Gew88歩兵銃(1888年)
- モーゼルGew98歩兵銃(1898年)
- ラインメタルパンツァービュクセ対戦車ライフル(1938年)
- モーゼルM77猟銃(1978年)
- ザウアー90精密狙撃銃(1982年)
- FAJASSSG82狙撃銃(1982年)
- GOLスナイパーマグナム狙撃銃(1986年)
- ブレイザーR93猟銃(1993年)
- マウザーSR93狙撃銃(1993年)
- ヘイムSR30猟銃(1998年)
- AMPDSR-1狙撃銃(2001年)
- AMPDSR-50狙撃銃(2003年)
- シグザウエルブレイザーR8猟銃(2007年)
- ヘイムエクスプレス・マルティニ高級猟銃(2013年)
- スチールアクションハンティングマグナム猟銃(2017年)
- マウザーM18猟銃(2022年)
イタリア
ポーランド
- ラドムwz.1929歩兵銃(1929年)
- ラドムWz.35対物ライフル(1939年)
- ZMTWKW ウィルク対物ライフル(2005年)
- ZMTボル狙撃銃(2005年)
- ZMTSR-50M対物ライフル(2022年)
その他
- 漢陽兵工廠八八式歩兵銃(1895年中華民国)
- 鞏県兵工廠中正二四式歩兵銃(1935年中華民国)
- 第205工廠T108狙撃銃(2018年台湾)
- CSGCJS7.62狙撃銃(2003年中華人民共和国)
- ノリンコCS/LR35狙撃銃(2020年中華人民共和国)
- 釜山陸軍第1工廠大韓式歩兵銃(1952年韓国)
- S&TモーティブK14狙撃銃(2011年韓国)
- ザスタバM07狙撃銃(2007年セルビア)
- イシャポールIOF.30-06スポルティング競技銃(2007年インド)
- ピンダットSPR精密狙撃銃(2003年インドネシア)
- ケベックロス歩兵銃(1903年カナダ)
- PGWC14ティンバーウルフ狙撃銃(2005年カナダ)
- UIMアレジャンドロ狙撃銃(2002年キューバ)
- トーラスエクスペディション猟銃(2024年ブラジル)
- ダネルNTW-20対物ライフル(1995年南アフリカ)
- ステアーM1895歩兵銃(1895年オーストリア・ハンガリー)
- ステアースカウト狙撃銃(1998年オーストリア)
- シュトラッサーTEC-1競技銃(2014年オーストリア)
- シュトラッサーRS14猟銃(2016年オーストリア)
- MOMゲパードM1対物ライフル(1987年ハンガリー)
- CzVz24歩兵銃(1924年チェコ)
- Cz557競技銃(2016年チェコ)
- FNM24歩兵銃(1924年ベルギー)
- FNバリスタ狙撃銃(2013年ベルギー)
- FNSPR_A5M_XP精密狙撃銃(2016年ベルギー)
- S&LRPLT42歩兵銃(1941年デンマーク)
- マドセンM47歩兵銃(1946年デンマーク)
- コングスベルグクラッグ・ヨルゲンセン歩兵銃(1886年ノルウェー)
- サコーフィンベアー猟銃(1961年フィンランド)
- サコーTRG-21狙撃銃(1989年フィンランド)
- サコー85猟銃(2006年フィンランド)
- サコーティッカT3汎用狙撃銃(2006年フィンランド)
- VOホライゾンズ・ロード対物ライフル(2021年ウクライナ)
- IZOP-Kアキラ精密狙撃銃(2021年スロベニア)
- セトメトンFR8歩兵銃(1949年スペイン)
- ベルガラMGライト精密猟銃(2022年スペイン)
- モーゼルM1890歩兵銃(1890年オスマン)
- MKEJNG-90狙撃銃(2008年トルコ)
- カラカルCSR308狙撃銃(2023年トルコ)