概要
アメリカ軍が制式採用したボルトアクションライフル。
第一次世界大戦を皮切りに20世紀半ばまでの殆どの戦闘に使用された。M1ガーランドに主力の座を明け渡しつつも第二次世界大戦、朝鮮戦争でも使用され最後の奉公はベトナム戦争と息の長い装備であった。
当時のライフルとしては短いのが特徴で、このおかげでバリエーションを無駄に増やすこと無く全兵科で補給を統一し生産数を上げることが出来る利点を持っていた。
1800年代末、高初速弾を使用する小銃が世界的潮流となり、米西戦争でスペイン軍が使用したモーゼルM1893を参考にスプリングフィールド造兵廠で開発が行われた。
1903年、アメリカ軍へ支給が開始された。
後継が登場するまで、第一次世界大戦での変容
初陣は当時いまだ続いていた米比戦争に用いられる。
1906年、直進性に優れた尖頭弾が諸外国に採用され始めた為に、対応できる様に改良され、これがM1906として支給され初めた。
その後、バナナ戦争と纏められる中米諸国への数多の紛争介入で活躍した。
1916年のメキシコ遠征ではマキシム製サプレッサーを装着したテストモデルが導入。
これがアメリカ軍で初めて導入されたサプレッサー装着ライフルとされる。
1914年、第一次世界大戦が始まると塹壕戦向けに改造が施され、潜望鏡や航空隊用の25連装拡張マガジンなどが生まれた。
ピダーセンデバイス
そして他の塹壕戦向け改造小銃に比べ、最も特異だったのがレミントン社のジョン・ピダーセン技師が開発したピダーセンデバイスである。
これは対応化改造が必須だが、ボルトと交換してデバイス本体と拳銃弾の入った専用の40連マガジンを装着することで半自動小銃へと迅速に変更できる装置である。
「一般兵が約15秒でライフルを短機関銃または自動小銃に変換出来る」のを目的に、塹壕戦の切り札として、低反動長銃の扱いやすさと塹壕戦で取り回しやすい銃剣付きの短めなライフルという利点を持った代物だった。しかもこの装置とマガジンだけで2ドル3セントほどと言う安さ。
これは陸軍のお偉いさん達から大好評で、あのジョン・ブローニング技師すらジョン・ピダーセン技師に天才と言葉を送るほどの発明であった。
そして1919年に計画されていた春の大攻勢に向け、65,000台の生産計画が為され、大戦中の間に合わせとして臨時配給されていたM1917エンフィールドやレミントンがライセンス生産していたモシンナガン、フランス向けとしてベルティエなどの対応モデルも考えられていた。
しかし、133,450台生産したところで攻勢を待たずにドイツが降伏、第一次世界大戦は集結してしまった。
この事で早急に塹壕戦に対応する必要がなくなり、更にアメリカが好景気に達した事で、開発時間が潤沢に確保出来るようになった。
そこからアメリカはゴチャついてた補給線を限りなく単純化するために戦後の好景気を利用して次世代化を推進し、軍用としては高価で作動性が悪いことから向かなかった半自動小銃の実用化に着手し始め、この装置は使われないまま倉庫に眠ることになる。
1931年に余剰品と正式に宣言された時には、他国に使われないためと保管費用をケチる目的で軍によって大半がスクラップとなり現在は100丁ほどしか残っていない。
その後に各国のボルトアクションライフルが短小化を始める事と極短改造銃がゲリラ戦に多用された事を考えると、もし使われていたら歴史に深く食い込んでいたかもしれない装置だったと言える。
M1903自体も1929年にM1903A1に更新が提案されたものの、備蓄が合った為に長らく調達が為されず、そのまま1930年代初頭にはM1903A2として研修機材用にモデルチェンジが始まる。
こうしてM1903は次期主力小銃へ世代交代していく…と思われていた。
後継の登場後
1936年、後継としてM1ガーランド半自動小銃が制式採用されたが、折からの大不況や未だ平和的な状況であったために配備が進まずに、本格的な配備は1942年初頭からとなった。それまではまだまだM1903A1がアメリカ陸軍の主力小銃であった。
1939年、第二次世界大戦が始まるとM1903A2も主力として研修用から実戦用に再改造が施される。
1942年、生産性を大きく向上させたM1903A3とその狙撃銃型のM1903A4が開発された。
既にM1ガーランドが採用されているのにM1903の改良型?という疑問は至極御尤もであるが、世界情勢の悪化と、それに伴う徴兵制の導入による大幅な増員で小銃の絶対数が全く足りず、後に殆どをM1ガーランドに置き換える前提で大量生産された。
M1ガーランドの多くは欧州戦線に廻されたため、太平洋島嶼部での対日戦では暫くM1903が主力として使用されていたものの、程なくしてM1ガーランドに置き換えられた。
狙撃銃型は改良を受けながら1949年まで製造され、ベトナム戦争でも使用された。
日本では警察予備隊(後に自衛隊へ改組)にアメリカ軍から狙撃銃型のM1903A4が供与され、64式小銃(狙撃眼鏡付)に更新されるまで使用された。
仕様
全長 | 1098mm |
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銃身長 | 610mm |
重量 | 3950g |
弾薬 | .30-03スプリングフィールド弾(7.62×65mm) .30-06スプリングフィールド弾(7.62×63mm) |
装弾数 | 5発(クリップ、箱型マガジン) |
口径 | 30口径 |
関連イラスト
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スプリングフィールド(ドールズフロントライン)(現在、イラストの大半を占める)