M1903A4は、ボルトアクション式小銃のスプリングフィールドM1903をベースに狙撃銃としたものである。
日本では、映画『Saving Private Ryan』で、ジャクソン2等兵が使用していた銃として有名。
概要
ベースとなった銃は、M1903のうち戦時体制下で細部が簡略化されたM1903A3である。
スコープが取り付けられた代わりにアイアンサイトが省略されてスコープ以外での照準は不可能となった。 また、ボルトハンドルは上側が平らに削られた独特のもので、ボルトを操作する際に干渉しづらい形に工夫されていた。
- スコープ
スコープはライマン社製の倍率2.5倍の狩猟用スコープを制式化したM73や、その他にM72など数種類の制式品があったほか、民生品をそのまま使用するなどバリエーションは多岐に渡る。(※M73を題材とした作品は見つかりませんでした)
メイン画像の巨大なスコープはユナートル社製のもので、通称ユナートルスコープ(unertl scope)と呼ばれた。倍率は8倍。
しかしながら、民生品をそのまま使用したスコープは「All whether(全天候型)」と銘打たれていても過酷な軍務には厳しかったようで曇りやすく、また細いレティクルのクロスヘアを見失いやすいという問題があった。このため、1945年頃に純粋に軍用としたM84スコープが開発された。倍率は2.2倍で僅かに落ちたものの、レティクルが改善されて照準の見出しがしやすくなり、曇りにくいと好評であった。
- リロード
スコープの装着位置は、機関部真上に低めにセットされていた為に同時期の他の狙撃銃と比べるとかなり狙いやすかった。一方で、マガジンが固定式で機関部真上にスコープがある為に、5発入りのクリップ(挿弾子)を使ったリロードが出来ず交戦距離が近づくとかなり不便であった。
遠距離で撃ち合う場合、マガジンに5発装填しておき、機関部左側面にあるカットオフレバーを「OFF」にセットしてボルトハンドルを目一杯引くと排莢とコッキングだけされ、マガジン内の弾がリロードされない位置で止まる。そこで薬室に弾を入れてボルトハンドルを戻して射撃するという手順となる。
交戦距離が近づいた場合は、カットオフレバーを「ON」にすればボルトハンドルが最後まで後退し、マガジン内の弾が使用できた。
リロードが大変面倒な銃ではあったものの、狙撃銃という用途を鑑みて射撃頻度を考えると、面倒ではあってもさほど問題とはならなかった為か、手間が改善されることは最後まで無かった。
使用
第二次世界大戦中に登場し、ベースとなった一般の歩兵向けのM1903A3などが全てM1ガーランドに置き換えられてからも使用され続けた。
日本では、警察予備隊の創設とともに供与され、保安隊、自衛隊と渡り歩き、狙撃眼鏡付きの64式小銃が登場するまで使用された。
幸いにも引退まで敵に向けて弾を放つことはなかったものの、1960年9月に谷川岳で発生した遭難事故で、ザイルで宙吊りになった遺体を収容すべく、M1ガーランドやM1919機関銃などとともにザイルを切断するために使用された。
他方警察では、「特殊銃」と呼ばれた狙撃銃は豊和工業の「ゴールデン・ベア」が採用されたため、本銃は使用されていない。