概要
前身となるM722・721のモデファイとして1962年に発売。
小口径では.222や.223(5.56x45)、といった小型害獣猟向け弾薬、大口径では30-06や.308win、.300winmagといった大口径狩猟弾薬が代表的口径となる。
主設計者はマイク・ウォーカー氏。
ボルト・バレル・アクションの組み合わせと適切な加工により、.18口径から、最大クラスで.416口径クラスのマグナム弾薬まで対応出来る。
元々狩猟用の低価格帯ライフルとして開発されたという経緯ではあるが、生産性と拡張性、容易に精度を上げられる優れた構造により、今日においては軍事用途・精密射撃用途でも幅広く利用されている。
性能等
設計
最大限まで遡った設計のルーツはエンフィールドP13及びP14をレミントン社が製造した
米軍仕様のM1917ライフルであり、機構参考にしたマウザー98アクションよりも
ボルトシュラウド及びコッキングピースが安全装置の付属しないシンプルな形状に
なっており、M700に繋がる特徴として今も残っている。
WW1終結後、製造部材の余剰在庫を民間市場向けに転用する形でModel30となり、
WW2における米軍用生産を通じて高まった大量生産技術を反映させた設計として
大幅なリプレイスをしたM721・M722に準拠した各部品寸法と構造を持っている。
M721・M722において安っぽいと評された軍用銃然とした鋼板プレス製の
マガジンフロアプレートとトリガーガードをM721の後期生産上位グレードであった
M725に準じた機能・形状を持つアルミダイキャスト製で弾倉開放を容易に行える
デザインのフロアプレート/トリガーガードに更新し、
廉価ながら外観イメージの向上を図っている。
発火機構自体は従来のM98(モーゼル98)と直系の先祖であるM30後期型の
コック・オン・オープニングを踏襲したきわめてオーソドックスな物となっているが、
精度・単純構造・生産性を兼ね備えた設計へ改められている。
ボルト・フェイスはM98系と異なる、リムを完全に覆うカウンター・ボアードとし、
オリジナルのエキストラクターは後加工コスト、並びに部品点数を抑えるために
Cリング型の弾性保持方式となっているがエキストラクターの弾性に頼った固定方式は
イレギュラーの発生時において薬莢のリムを噛みちぎるなど
ポジティブな形状ではないため、時折欠点としてみなされることもある。
機関構造を踏襲した従来のM98・M70・自社のM30系レシーバー・アクションが、
反動を受け持つリコイル・ラグをレシーバーと一体成形としていたがゆえに、
製造において母材の鋳造・鍛造金型と鋳出されたブランク材を後加工で切削して仕上げる
ある程度大きな規模の製造設備が必要だったのに対し、
リコイル・ラグをレシーバーから分離し機関部と銃身で挟み込む設計に改めた為
規格サイズの鋼製丸棒の旋盤加工のみで機関部が製造できることとなり、
削り出しでありながら加工コストが大幅に節減できている。
丸棒基準の設計は、同時に精度出しの容易さを向上する結果となり、
製造工程の簡略化を倣ったウィンチェスターのM70よりも低価格でありながら
M70と同等か、それを上回る精度を持つことに成功している。
製造の場においてCNCが爆発的に普及した今日では丸棒基準設計自体の優位性はかなり薄くなったものの、パテントの失効により一般規格化した設計が大きな遺産となって本家の人気をも支えている。
登場当初はストックとアクションのべディング・エリア(機関部と銃床の接触部分)が曲面の為、フラットボトム・べディングエリアのアクションと比較して再べディングに手間がかかるという面が欠点とされていたが、H-Sプレシジョンやマクミランといったサード・パーティの製造するアルミニウム製シャーシによるV字点接触型べディングストックの普及や、
エポキシ系のべディング・コンパウンドとピラーを用いた簡単なべディング・ノウハウが
知られた今日においては欠点と見做されなくなっている。
安全性
M98やM70ではボルトのコッキング・ピース上にあった安全装置がトリガーユニットの右側に移され、構えた状態でのロックと解除が非常に行いやすくなっている。
M98系のアクションと同様に安全設計面も極めて優れている。
有坂(38式・99式)アクションで見られたカウンター・ボアード・ボルトフェイス構造を更に発展させ
プッシュ・ローディングを採用することで、プライマーピアシングやケース・ラプチャー等
の射手に危険を及ぼす事故に対する安全性はM98よりも上回る部分がある。
軍事とM700
優れた狩猟用ライフルは優れた狙撃銃になるという法則の通り、M700は軍事用途においても優れた性能を秘めている。
ベトナム戦争当時、アメリカ海兵隊が品質の低下したウィンチェスターM70の更新としてM70系トリガーガードを組み合わせた独自のM40を採用したことを皮切りに、陸軍でもHSプレシジョン製ストックにダコタスタイルの・トリガーガードを組み合わせたM700をM24として採用している。
海軍ではM24A2(.300WinMag仕様)をMk13として採用、2006年にはAI社のAICSストックを購入し、ストックを変更している。
米軍での採用は一般での人気と法執行機関、米国同盟国方面からの注目を集める結果ともなり、80年代からは警察用狙撃銃としても普及している。
自動式狙撃銃の精度向上が成された今日においても.338lapuaや.300winmag口径の
新型M700が相当数運用されており、レミントン自身が次世代型となる機関部を
リリース出来ない事情も相俟って当面は運用される見通しが高い。
拡張性
生産性と精度を両立し、軍事・LE・精密射撃・狩猟を問わない設計は、ライフル版1911と言えるほど多数のサード・パーティ・パーツメーカーを生んでいる。
ある程度の市販の工作機械さえあれば、家のガレージでも機関部を製造できるほど設計が単純である為、個人製作によるアクションも多数存在しており、
レミントン純正でない部品の寄せ集めで、レミントン製と同型同寸ながら、
更にランクの高いライフルを仕上げることも容易となっている
レミントンの特許が失効しているため、ほぼ同寸法の部品と構造を持つ銃が
ストックメーカーのマクミランやH-Sプレシジョン等から発売されており
一時期はコルトやベレッタまでもOEMにて販売ラインナップに加えていた。
M700用として設計された引き金機構のカスタムパーツであるジュエル・トリガーは
中小メーカー製ながらM700以外にもサヴェージやウィンチェスター製
ボルトアクションに流用されるほど人気が高く、M700パーツを流用するための
ブラケットアダプター分野でもちょっとした市場を形成している。
不遇の名器?
上記の通り優秀なライフル銃であり、フィクションでも狙撃銃が描かれるときは大体コレに準ずる形状の物が出るという間違うことなき名器であるのだが、実は上記の長所が市場での不人気の原因となっていたりする。
まずはコストパフォーマンス。安い割によく当たるのがウリなのだが、言い換えればより高価だが高性能な物がいくらでもあるということになり、扱いに慣れてきたら買い替えてしまうハンターも結構居る。
そして拡張性の高さだが、体に馴染んだ銃床で複数種の弾薬を使える方が都合がいい職業狙撃手や、自分で弄るのが好きな人でなければ(特に裕福なハンターなら)扱う弾薬に合わせた銃を複数揃える方が手っ取り早いと考えがちで、やはり敬遠される理由になっている。