概要
イギリスはアキュラシー・インターナショナル(Accuracy International)社(AI社)の開発したボルトアクション式狙撃銃、Precision Marksman(PM)。
そのイギリス軍採用モデルの名称。
元々は競技用銃の為、一体の素材で作られた多くの狙撃銃のストックと違いアルミのフレームにポリマーの外装を被せた構造となっており、バレルはフレームに接続されたレシーバーのみと繋がったフルフローティング構造となっている。
マガジンはM700等で見られる内蔵型マガジンではなく、取り外し可能な箱型マガジンを採用している。
こういったボルトアクションライフルは銃身交換時にはボルトとの隙間をきっちりと調整しなければならないのだが、銃本体を固定するバイスと銃身を回すための工具さえあれば銃身を簡単に交換が出来る構造になっており、銃身交換の際の調整はほぼ不要か最低限で済む。
バイポッド(二脚)はフレーム先端にロッド状のバイポッド・マウント(スピゴットと呼ばれている)を取り付けることにより装着可能で、先端部下部にはハリスバイポッドの金具が取り付けられ、金具の後方には汎用のバイポッド金具用のスロットも搭載されている。
バイポッド・マウントはナイトビジョンといったアクセサリ用レールの取り付け部としても利用されており、B&T社がマウントベースを取り付け可能なスピゴットを販売しており、ドイツ軍のG22等では専用のマウントを装着しているのを見ることが出来る。
スコープマウントレールは空気銃や猟銃でも使われているダブテール規格の11mm幅を採用、現在主流となっているユニバーサル、ピカティニー等の20mm幅に対応する為にレールに被せる変換アダプタが用意されている。
イギリス軍に採用された際にSchmidt&Bender社の6x42スコープ(6倍率対物レンズ径42mm)が共に採用され、スコープはL1A1 telescopic sightと呼ばれている。
L96A1のその後
L96A1(PM)をベースにスウェーデン軍のトライアルに対応するためにArctic Warfare(AW)が開発された。
AWは極地戦闘用を意味しており、寒冷地での使用を想定した構造となっている。
低温環境では機関部等に入り込んだ僅かな水分が凍結して操作不能となってしまう事があるが、精密狙撃用ライフルでは隙間を大きくすることが出来ないため、細かい溝を多く彫る等により薄く張った氷を砕いて操作できるような改良が加えられた。
凍結対策以外にも強度向上のために内部のフレームの形状を変更、スリングスイベルの数を減らす、チークピース(頬あて)が調整式になるなど、様々改良が施されている。
AWへの改良後にL118A1の名で改めて制式化されている。スコープはSchmidt&Bender 社のMK II 3-12x50スコープ(3倍率から12倍率のズーム対物レンズ径50㎜)がL17A1として共に採用されている。(L96A1は順次L115系(最新はL115A3)に順次入れ替わる事となる)。
知名度の違いからか、ゲーム等に登場するものやエアソフトガン等では殆どの物がPMではなくAWがL96A1の名前で呼ばれている。
短銃身黒色ストックのAWポリス(AWP)、サプレッサー内蔵バレルを装備したAWサプレッスド(AWS)、
折りたたみ可能なストックのAWフォールディング(AWF)、マグナムライフル弾を使用したAWマグナム(AWM)、更に強力なマグナムライフ弾を使用するAWスーパーマグナム(AWSM)、対物ライフルと同じ大口径のAW50、等の様々なバリエーションがあった。
各国での採用状況
イギリス軍ではPMをL96A1、AWをL118A1、.338Lapua Magnum仕様のAWSMがL115A1として制式化されている。
スウェーデン軍ではAWをPSG-90の名で、オーストラリア軍ではAWをSR-98の名で採用。
ドイツ軍は.300Win Magnum仕様のAWMをG22の名で、AW50をG24の名で採用している。
他にも多くの国が採用している。
また、AICSストックがアメリカ陸軍でM24A3、海軍ではMK.13 Mod5以降で採用されている。
現在
AI社は2005年に一度破産したものの社員が買い取った事で無事再建。
AWシリーズは口径別に分類が変更され、7.62mmx51モデルは「AE」、旧AWM及び旧AWSMは「AW」、12.7mmx99モデルは「AW50」へとなった。
更には新型のAXシリーズであるAX338やAX50を開発・製造、従来のストックもAXストックと一部部品を共通化したMark III、ATシリーズを開発するなど、変化も見られる。
現在は構造と口径による分類に再度変更され、AX(.308口径のAX308及び.338口径のAXMC)、AT(AXからアタッチメント付バレルジャケット等を省いた軽量型)、AE(.308口径のみ)、AX50(旧AW50)の三種類に纏められている。
AEは低価格向けとなっており、旧AWの構造を受け継いでいるものの、レシーバー部を角型からM700のように丸棒削りだしの丸型に変更、レールを後付化、寒冷地向けの加工を省略する等により値段を抑えていたが、現在は廃盤となっている。
M700に使用可能なAICSストックもAXとATの二種類用意されており、こちらはM700のアクションを使用するのであれば基本的に口径は問わない。
AX及びATのマガジンはAW及びAEで使用されていたシングルスタックマガジンではなくダブルスタック・ダブルフィードマガジン(弾がジグザクに並んだ複列に装填され、装填部分で絞られず複列のまま交互に装填されるマガジン)となっており、幅などが異なることから共用は出来ない。
ATではグリップ部とストック部のパネルを交換する事でピストルグリップから従来のサムホールタイプのグリップへの交換が可能。射手の好みだけでなくピストルグリップ規制への対応も可能となる。
AXはアメリカ特殊作戦軍のMSR(モジュラー・スナイパー・ライフル)プロジェクトに合わせて開発されたもので、サーマルジャケットとアクセサリープラットフォームを兼ねた八角形断面のバレルジャケット、銃身やボルト等の最低限の部品交換で.338LapuaMag・.300WinMag・.308Winに対応するマルチキャリバー化、折り畳みストックといった特徴がある。
AX及びATは銃身はネジを一本抜くだけで交換可能で、銃本体を固定するバイスすら不要となり、現地での交換すら可能となっている。
バレルジャケットは上側のみがジャケット先端まで届く長いレールとなっており、それ以外の七面はKeyModと呼ばれるNoveske社とVltor社が共同開発した汎用アタッチメントが採用されており、レールを介さずライトやスリングアタッチメント、バイポッドマウント等の様々なアクセサリーを取り付けること可能で、対応したレールを取り付ける事で既存の20mmレールに対応したアクセサリーの取り付けも可能。
銃身長次第では分解によりスーツケースサイズに収まるのも特徴。
データ(L96A1+L1A1)
全長 | 1,158mm |
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銃身長 | 657mm |
重量 | 6,550g |
口径 | 7.62mmNATO弾 |
装弾数 | 10発 |
エアソフトガン
M700等の多くのボルトアクションとは異なるデザインから人気があり、マルゼン、タナカワークス、東京マルイ等、多くのメーカーがエアソフトガン化をしているが、殆どがAWをL96A1として販売しており、アサヒファイアアームズのコッキング式のみがPMを再現している。
また、多くの製品がコッキング式の都合上シリンダー内にピストンが配置されており、ピストン容量を稼ぐために実銃の薬室より銃口側に薬室があり(銃身の途中に薬室がある)、合わせてマガジン位置も異なっていたが、タナカワークスがガス式で実銃同様のマガジン位置を再現しており、東京マルイは前方へとBB弾を運ぶ機構を付ける事で実銃と同じマガジン位置を再現している。アサヒファイアアームズは本来の位置にダミーマガジンを、前方にBB弾用のマガジンを配置している。