概要
正式名称Designated Marksman Rifle(略称DMR)。
マークスマン(選抜射手)と、呼ばれる兵員が使用するためのライフル。
「マークスマン」とは元から射撃の名手を指す言葉であり、本来「Designated marksman」と呼ばれる(「選抜射手」は「marksman」の直訳)。
選抜射手とは
一般的なアサルトライフルの最大有効射程はせいぜい600mが、西側のスタンダードである。
5.56mmNATO弾の特性を考えると、殺傷力を100%発揮できる有効射程はせいぜい200m~300mまで、光学照準器等を加味しても500m位といった所。
そのため自然と、一般的な歩兵の交戦可能距離もこの程度、ということになる。
だが一方、歩兵が携行可能な武器で、これを上回る射程を持つ武器は多く存在する。
軍用狙撃銃以外にも、民間用の猟銃で1km以上の射程が得られるものは珍しくなく、迫撃砲、対戦車ロケット、対地ミサイル、大口径機関銃なども厄介。
もし歩兵が小口径のアサルトライフルや分隊支援火器しか持っていない場合、自身らより射程の長い武器を持ち出された場合、命令系統が独立している狙撃班や砲兵部隊、航空部隊に支援を要請するしかない。
しかし無線機越しでは意思疎通にも限界があるし、彼らには他にも色々と仕事があるため、毎回毎回手伝ってくれるとは限らない。
常に分隊に随伴し、分隊長の一存で活用できる長距離交戦能力が欲しい。
そうした要求に応えたのが、選抜射手である。
アサルトライフル用の訓練を受ける歩兵の中から、特に射撃の腕に秀でたものが選抜される、という形式をとることが多い。
歩兵と同じ訓練を受けているため、歩兵分隊と行動を共にし、また意思疎通も楽にとることができる。
そしてその選抜射手に支給されるのが、マークスマンライフルである。
求められる性能
国によって要求性能が異なるため、アサルトライフル同様一概に語れる武器ではないのだが、おおむね以下のような特徴を持つ。
まず必要なのは、遠距離の敵を確実に殺傷する射程。
一方で、スナイパーライフルほど遠距離に特化してしまうのもまずい。
選抜射手はあくまで歩兵、最前線で活動する以上は不意の遭遇戦は避けられない。
分隊の仲間がアサルトライフルや分隊支援火器によって近距離での戦闘に対処してくれるとしても、選抜射手も足手まといにならない程度には活動できなければならない。
そこで遠距離に振り切ってしまうこともないよう、発射機構は基本的にボルトアクションではなくセミオート。
中にはフルオートでの発射機能を有する銃もある。
もう一つ重要なのが補給の利便性。
狙撃兵よりも数がずっと多くなる選抜射手のために専用の弾薬を用意すると、兵站に負担がかかってしまうので、アサルトライフルや軽機関銃と弾薬を共用できるのが望ましい。
これらの事情は国ごとに異なるため、設計思想も国によって多彩である。
SR-25のように専用設計だったり、M14のように旧型小銃の改修品だったり、あるいは64式狙撃銃のようにアサルトライフルに遠距離用の照準器を乗せただけだったり、SVDのように射程が短めのセミオート狙撃銃がこの位置に納まったり、G8やM27IARのように精度が高く単射ができる軽機関銃に高倍率の光学照準器を載せたり、と姿かたちも開発経緯も国によって様々。