ウェルロッド(Welrod)は、第二次世界大戦中にイギリスで開発された特殊作戦向けの拳銃。
大きな消音器が付いたボルトアクション式の拳銃で、主にイギリス軍の特殊部隊やイギリス、アメリカ等の連合国側の諜報機関に供給された。
概要
デザインは、直径1.24in(約3.2cm)の鉄パイプの様な消音器が全体を覆い、後部にマガジンを兼ねたグリップが付くというデザインで、主要な部品はプレス加工で作られている。
グリップは脱着可能で取り外す事で更にコンパクトにする事が出来た。
メカニズムは、ボルトアクション式でコッキングはメイン画像の様に一番後ろの部分のノブを捻って後ろに引くというものであった。
また、製造メーカーや運用者を示す刻印は一切打刻されずシリアルナンバーのみが暗号で打たれていた。
バリエーションと装弾数
9×19mm弾を使用する「Mark.Ⅰ」と32口径ACP弾を使用する「Mark.Ⅱ」の二種類が存在した。
装弾数は「Mark.Ⅰ」が5発、「Mark.Ⅱ」が6発だった。
消音性能
発射した銃弾が音速を超えない様に、銃身が極めて短くなっている。
また、大柄な消音器を備え、作動音が小さく密閉構造としやすいボルトアクション式であるため、9×19mm弾を使う「Mark.Ⅰ」で70dB程度である。
これは、騒がしい事務所、或いは一般的な電話機の呼出音と同程度と一見それほど静かにならないように感じるが、9×19mm弾を一般的な拳銃から発砲すると130dB(電車が走る鉄橋の直下程度)となるので、これと比較すると充分に静かである。
つまり、70dB程度であれば攻撃を受けた当事者以外では「離れた場所の銃声」として認識されたため問題は無いとされた。
銃口には標的の人物に押し当てて銃声を漏らさない様にするためといわれる凹みが存在した。
また、32口径の「Mark.Ⅱ」は条件次第では50dBを下回るとも言われており、一般的に創作作品でイメージされる「消音拳銃」に近い性能であろう。
製造数
製造数はおよそ2,800丁。主に第二次世界大戦中に枢軸国占領地域で使用されたが、1982年に勃発したフォークランド紛争でも使用されたという情報もある。
その後
2014年にスイスのB&T社から、よく似た設計・コンセプトの「VP9」という銃が発表された。
此方は「救命が絶望的な患畜や手負いの有害獣をなるべく静かに絶命させる」事を目的に開発されている。
メーカーとしては獣医師やハンター、警官による動物の安楽死が目的で、特殊作戦や非正規戦を目的とはしておらず、あくまでも「猟銃」に近い扱い…としている。