諸元
全長 | 1276mm |
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銃身長 | 797mm |
重量 | 4450g |
口径 | 6.5mm |
使用弾薬 | 三八式実包 |
装弾数 | 5発 |
概要
九七式狙撃銃は三八式歩兵銃を改造して狙撃銃とした6.5mm口径の狙撃銃である。
製造された三八式歩兵銃の中で射撃試験の結果が特に優秀な個体を選び、機関部や銃床等を念入りに仕上げた上で狙撃眼鏡を取り付けて配備された。
後継に7.7mm九九式実包を使用する九九式狙撃銃が開発された。
三八式歩兵銃との相違点
九七式狙撃銃はあくまで狙撃銃として専用に製造されたものでは無く、完成前の三八式歩兵銃の中から選抜したものであった。本銃は射撃試験において優秀な成績を収めた個体を狙撃銃として機関部や銃床の取り付け部等を念入りに仕上げられ、菊の御紋章と「九七式」の刻印が打刻された。
- 単脚(モノポッド)
照準を容易にする為の単脚が装着された個体があった。後に開発された九九式小銃や九九式狙撃銃のものとは形状が異なるため流用はできない。
- 槓桿(ボルトハンドル)
槓桿は下向きに曲がった専用のものが使用された。
当然、三八式歩兵銃として製造されて射撃試験を受けた時とは違うものだが、精度を損ねず確実に操作できるよう調整されていた。
- 九七式狙撃眼鏡
狙撃眼鏡は倍率2.5倍の九七式狙撃眼鏡を装着した。
狙撃眼鏡は東京第一造兵廠の他、日本光学、東京光学、榎本光学、富岡光学、東京芝浦電気(マツダ銘)、高千穂光学等の会社で製造された。
狙撃眼鏡のレティクルは縦線が傾いた独特なもので、銃身の特性に合わせたものであった。
三八式実包は初速が速く弾道の安定性が極めて優秀であったが、三八式歩兵銃や九七式狙撃銃は銃身の施条が極めて急なため、飛距離が伸びるにつれて銃弾が右に流れる傾向がある為である。
狙撃眼鏡は工具を使わずに容易に脱着ができた。
装着場所は、左側に大きくオフセットしほぼ機関部の横と言っても過言では無い位置に取り付けられた。
これは銃弾を装填する際に挿弾子を真上から差し込むので、それを避けるためであるが、同じく真上からの装填が必要なM1Dなどと比較しても大きくオフセットされている。
このため、本銃をそのまま構えて狙撃眼鏡を覗くと頬が銃床に僅かに触れるのみであったり、或いは全く触れなかったりと精密射撃には不適当であった。
精密射撃において頬付けの良し悪しは、実射性能に大きく影響する要素であり、またM1Dの様な頬当てが支給されたという記録もなく、この点に限って言えば優れた狙撃銃とは言い難い。
狙撃眼鏡は射手による調整は不可能で、射手は距離や環境に応じてレティクル上の目盛りのみで修正しなければならなかった。しかしながら、鏡胴の気密性は極めて良好で製造から70年以上経過した現在でも光学系に問題がない個体は多い。
ベースとなった三八式歩兵銃の照星と照門は残され、狙撃眼鏡の故障時やごく近距離の射撃時は通常型と同じように扱うことができた。
- 銃床(ストック)
銃床は、特に念入りにフィッティングが施された。
しかしながら、機関部と銃身先端部の2箇所で固定していること、銃身そのものが細い事等から、連続射撃による銃身の変形や湿度変化で曲がる銃床の影響を受けやすい。但し、これは同時期の狙撃銃全てに言えることで九七式狙撃銃に限った問題ではない。
- 減装弾
九七式狙撃銃の射手には三八式実包の装薬を1割ほど減らした減装弾が支給された。
これは、十一年式軽機関銃、九六式軽機関銃の物と同じものであった。
発射炎や発砲音、反動の軽減を目的としていたが、戦後に減装弾を再現した人によれば効果は極めて限定的であったという。
無論、通常の三八式実包も使用できた。
三八式改狙撃銃
いちど三八式歩兵銃として完成した物の中から、射撃試験を行い特に優秀な個体を狙撃銃として改造したもの。概ね九七式狙撃銃に準じたものである。
既に三八式歩兵銃として完成した銃を改造したものであるため、原則として単脚は付かず、刻印は三八式のままである。