日本版NSC(国家安全保障会議、こっかあんぜんほしょうかいぎ)〈National Security Council of Japan〉
この組織は内閣に置かれる行政組織であり、日本国における安全保障に関する意思決定を行う組織である。正式名称は国家安全保障会議であるが、後述するモデルの米国NSCにちなんで日本版NSCとも呼ばれる。
モデルは米国のNSC(national security council和訳すれば国家安全保障会議)である。冷戦時代の米国では、ソ連との対立は経済や文化にまで至る広範囲のものとなり、外交の状況に応じた軍事行動、軍事行動に応じた外交が臨機応変に求められるようになった。こうして外交、軍事、経済、文化政策等を安全保障という名で一体として意思決定しあるいは省庁の調整を行うNSCが生れた。この目的から大統領、副大統領、国務長官、国防長官、財務長官等を中心に必要に応じて他高官も参加して意思決定を行っている。
日本でもこの組織以前に設置されていた「国防会議(安全保障会議)」は昭和31年に設置され、それを編成しなおした「安全保障会議」は昭和61年に成立したが、名称が一致しない、緊急時の定めがないなど問題も存在した。この組織はそれを受けて平成25年12月に正式に設置された(設置の提案自体は平成18年ごろから存在したものの、提案者の病気や政治情勢などにより設置にいたらなかった)日本の安全保障会議であり、事務局は首相官邸に置かれる。
現在の日本における国家安全保障会議では首相を議長として4大臣会議(構成員は下記)が普段から開催され、必要に応じて9大臣会議に拡大して開催される。この会議では外交に限らず防衛、経済、インフラ、治安などに至る対外政策全般の基本方針を決定し、各省庁が実行することになる。
利点としては従来の省庁間対立と縦割り行政を乗り越えた機動的な意思決定と政策実行を行うことが期待される。一方で、首相が独裁的な政策を実施しようとすればその手足ともなりうる強大な権限を持った会議でもある。有権者にはこれまで以上に注意深く政府の動静をチェックする責任が求められているともいえよう。
構成員
〈司令塔〉(4大臣会議)
9大臣会議
その他
- 国家安全保障局:国家安全保障会議の事務局にあたる。各省庁の利害を越えた観点から会議の支援を行うのが狙い。
- 事態対処専門委員会:緊急事態に際して会議を補佐する為に関係行政機関の職員が委員として任命される。
- 内閣情報調査室:トップの内閣情報官が事態対処専門委員会委員となり、情報機関として会議への情報提供を行っている。
- 自衛隊:統合幕僚長など自衛官が会議に陪席して専門家としての意見を述べることができるが、文民統制の観点から採決権等の意思決定には参加できない(これは米国も同様)。