概要
仏教(密教)の仏様。梵名はマハー・ヴァイローチャナ。毘盧遮那仏(ビルシャナ)とも。
身近な例を挙げれば、「奈良の大仏」の別名。しばしば太陽神と習合し、中世の日本では天照大神と同一視されるに至った。
信仰
宇宙の真理を体現する象徴的な法身の仏であり、大日経などの密教経典の説き手とされる。
不動明王を化身、あるいは使者とする。それにとどまらず全ての仏菩薩の本体とも言われている。こうした壮大な教義のせいで超越神・ブラフマン的なものと誤解されることも
あるが、誤りである。密教の伝統によれば大日如来もまた一切皆空に外れる存在ではない。
大日経や金剛頂経といった所謂「中期密教」と呼ばれる時期の経典に登場し重んじられる仏であるが、さらに時代を経て発達した「後期密教」において本初仏として信仰される法身普賢、金剛薩埵、持金剛仏とも深い繋がりを持つ。
以上のように密教の仏であるが、密教系宗派から禅宗や浄土宗に改宗した寺院にも引き続き大日如来を本尊とする寺院が複数存在する(静岡県の修禅寺、京都府の延寿寺など)。
いっぽう、日蓮が大日如来を釈迦が比喩で説いた架空の存在としたため、日蓮系寺院では大日如来は祀られない。
日蓮宗寺院である経栄山題経寺(柴又帝釈天)では境内に大日如来像が安置されているが、富士山山頂にあったが破壊された大日寺の像を廃仏毀釈から守るために避難させた、という背景があり、かなりのレアケースである。
像容
仏像として造型される場合、如来では珍しく菩薩のように装飾を多くつけた形をとる。(ただし、金剛峰寺にある作例のように簡素なデザインもある)如来の中でも際立った立場をあらわすものとも言われる。
大日経の世界観を図像化した胎蔵界曼荼羅の本尊としての大日如来と、金剛頂経の世界観を図像化した金剛界曼荼羅の本尊としての大日如来は手で結ぶ印が異なり、真言も違う。
金剛界大日如来の印は左手の人差し指を立て、それを右手で握り混むような「智拳印」。
胎蔵界大日如来の印はねかせた左手の上に同じようにした右手を乗せる「法界定印」。
金剛界と胎蔵界の大日如来は同じ場所に並べて祀られることもある。不動明王と愛染明王を脇侍とする大日三尊形式でも祀られる。
化身とされる神仏・人物
すべての神仏の根本ともされるが、その中でも特筆すべき例をあげる。
不動明王:大日如来の化身にして使者とされ、「大日大聖不動明王」とも呼ばれる。
天照大神:当初は十一面観音と同一視されていたが、やがて大日如来の垂迹とみなされるようになった。東大寺の縁起では聖武天皇に対し毘盧遮那仏と同体だと語ったともされる。
浅間大菩薩:富士山にまつわる山岳信仰「富士信仰」の神。木花咲耶姫と同一視される。
於竹:江戸時代初頭の女性。大日如来の化身である生き仏とみなされた。
起源についての説
インド神話に登場するアスラ神族のヴィローシャナやその息子マハーバリ、ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーを起源とする説がある。
名前の解説
その名は光明が遍く広く照らすという意味であり、
それに尊称である偉大なを意味する「マハー」と付く。