概要
サンスクリット語名は「ヴァイローチャナ・ブッダ」。
漢字表記では「盧舎那仏」「舎那仏」ともいう。宇宙そのものを象徴する仏であり、
その光は全界を照らし、自身から分身・化身たる化仏たちを生み出し遣わす。
華厳経においては釈迦如来によってそのはたらきが解き明かされる、という関係である。
密教においては、同じ起源を持つ「マハー・ヴァイローチャナ・ブッダ(大日如来)」が説かれる。
大日如来は毘盧遮那仏と異なり、自ら積極的に説法を行う。
大日如来が説いたとされる経典の一つである『大日経』では毘盧遮那仏という表記も現れており「金剛界大日如来心咒」と「毘盧遮那仏咒」は同じ文面である。
元来は同じ尊格であるが、経典における描写の違い、顕教と密教の違いから、毘盧遮那仏と大日如来は日本においては別個で扱われてきた。
語義
ヴァイローチャナとは「遍く照らす者」という意味であり、近縁の語として「ヴィローチャナ」がある。この名を持つアスラや異名として持つ太陽神がいる。
仏陀と太陽を結びつける解釈は華厳経や密教に始まるものではなく、歴史上のゴータマ・シッダールタが属した王族も「スーリヤヴァンシャ(太陽の末裔、日種)」と呼ばれる系統であった。
法華経においても釈迦は「ナーラーディティヤ(人間の太陽)」と呼ばれ「慧日大聖尊」と漢訳されている。
仏の智慧が衆生を感化する様を太陽が下界を照らす様になぞらえたのだろう。
仏像としての作例
『華厳経』を根本聖典とする華厳宗が少数派であることもあり、「毘盧遮那仏の像」としての作例はあまり多くない。
印相(手と指の形)は右手が施無畏印、左手が与願印であり、この組み合わせは「施無畏与願印」というが釈迦如来など他の仏陀の像でも見られる特徴である。
化仏が多数デザインされた光背も同様である。