概要
正式名称は『妙法蓮華経』(みょうほうれんげきょう)。単に『法華』(ほっけ)とも言う大乗仏教の経典の1つ。
日本では平安時代以降、天台宗に帰依した藤原氏などの貴族による写経が流行り、一般に広まった。八部・二十八章(二十八品)構成で、釈迦入滅直前の最後の教えを伝える最も優れたものとして、天台・華厳・法華宗などで重んじられる。天台宗から分かれた浄土宗・浄土真宗は法華経自体からは離れていったが、法華経の平等主義の影響を強く受けている。
世界的にはあまり広まらず日中のみで広まり、中国天台宗もその後衰退してしまったため、最終的に日本でのみ広まり続けたという特異な経典。これにより、「仏法西還」のような思想も生まれた。
中国および日本などの中国経由で仏教が伝わった地域では「六訳三存三欠」(法華経は6回漢文に訳され、うち3つが失われ、残りの3つが後世に伝わった)と言われているが、多くの宗派で法華経と見做されているのは鳩摩羅什訳のものであり、一般に正式名称とされる妙法蓮華経も元々は鳩摩羅什訳版のタイトルである。どういうわけか、サンスクリット語版と内容の順番がまるっきり違うらしい。
内容は、思想的な話にはあまり深入りせず「このお経を広めたり読んだりすると救われる」ということが大半を占めるという、ある意味情報化時代を先取りしたかのような独特な内容となっている。その心意気はアニメや漫画のファンの布教活動に通じるものがあり、日本でだけ広まった理由かもしれない。
余談
- 日本では、中世期に神道系・仏教系・陰陽道系を問わず水神・龍神の属性を持つ女神を法華経の『提婆達多品』(だいばだったぼん、鳩摩羅什の妙法蓮華経では第十二章)で「悟りを開き仏となり南方無垢世界の教主となった娑伽羅竜王の八歳の娘」の姉妹と見做す考えが広まった。