概要
天台大師・智顗を第三祖と位置付ける、中国発の仏教宗派。根本経典は「法華経」。
智顗の主著である『法華玄義』『法華文句』『摩訶止観』は天台三大部や法華三大部と呼ばれ、教学の基礎をなす。
智顗は第三祖という扱いで、第二祖は彼の師である慧思、初祖はその師である慧文とされる。
或いは彼らが影響を受けたインドの仏僧である龍樹(ナーガールジュナ)を初祖とする場合もあるが、宗派を確立させたのが智顗であるため、基本的には彼が天台宗の事実上の開祖、とみなされている。
朝鮮、ベトナム、日本にも伝来し、それぞれの仏教界に大きな影響を与えている。
日本
伝教大師・最澄が唐の国より持ち帰った。同時期の僧侶として弘法大師・空海がおり、注釈書『理趣経釈』にまつわるエピソードは有名である。
顕教経典である『法華経』を根本とするが、これのみに依らず最澄が持ち帰った多くの経典(『阿弥陀経』『大日経』など)すらも内包し依る教えであり、同時に密教を納める宗派。
「朝題目、夕念仏」と呼ばれる総合性が大きな特徴。この言葉にあるように朝(午前)には法華経の下で「南無妙法蓮華経」を唱え、夕方(午後)には阿弥陀経の下で「南無阿弥陀仏」を唱える。
空海が伝える真言宗の密教が東密と呼ばれるのに対し、天台宗の密教は台密という。
特に台密においては、上述の延暦寺を本山とする「山門派」と、滋賀県大津市の長等山園城寺(三井寺)を本山とする「寺門派」に分かれている。
日本の天台宗は中国にあった時と異なり、密教の他にも禅や戒、念仏を導入し、仏教の幅広い法門を包括するスタイルをとっている。つまり真面目にやろうと思うとやる事が多いため、よほど効率良く信仰(修行)を組み立てないと日常生活を圧迫しやすい。つまり日常を生きる庶民には敷居が高くなりやすい。
このことから、後の比叡山からは、法華の日蓮、念仏の法然と親鸞、禅の栄西といった日本仏教史における各宗派の開祖が出ることとなった。