『南無大師遍照金剛』(大師宝号)
概要
平安時代初頭において、空海(弘法大師)によってに開かれた日本の仏教宗派。
『真言陀羅尼宗(しんごんだらにしゅう)』『曼荼羅宗(まんだらしゅう)』『秘密宗(ひみつしゅう)』とも呼ばれる。
当時、政治と宗教が密接に成り過ぎて僧侶による朝廷内で汚職や権限の乱用が発生し、仏教の権限が失墜を始めていた状況を憂いていた空海が、大陸の唐国における長安に渡り、青龍寺の密教僧である恵果から学んだ密教を基盤としている。
後年(空海入定後)においては、密教の徒弟の考えや空海が生前「自らが仏の世界へと入定したのちには弥勒菩薩に仕えて(日本の)衆生を導く」と宣言した事から大師信仰(弘法大師信仰)も大きな特徴としている。
共に大陸へ渡った最澄によって開かれた宗派である天台宗が、『法華経学』『密教』『戒律』『禅』を兼ねて修行するのに対し、空海は著作『秘密曼荼羅十住心論』『秘蔵宝鑰』において、当時に伝来していた仏教各派の教学にそれぞれ評価しつつ、真言宗を最上位に置くことによって十段階の思想体系の中に組み込み、顕教(秘密にせず明らかに説かれた教え、密教の反対語)と比べ、密教(真言密教)の優位性や、顕教の思想・経典も真言密教に摂包されていることを説いた。
最澄の天台密教が『台密』と称されるのに対し、空海の真言密教は東寺を基盤としているため『東密』と称される。
日本における総本山(根本道場、と称される)は、京都西九条の東寺。空海の在地としての本山道場として和歌山県高野町の高野山金剛峯寺。そして空海の出身地たる屏風浦(発祥地)として香川県善通寺市の善通寺を構える。この3大寺院をして弘法大師(真言宗)三大霊場と称する。また、これら三つの寺は、それぞれを総本山と置いている真言宗門内各派の総本山として併存する。また、これに他の真言宗諸派の総本山・大本山・別格本山を加えた十八箇寺で「真言宗各派総大本山会」(各山会)を形成する。
大日如来に対する絶対に近い信仰から、多神教である仏教の宗派でありながら一神教要素が窺える。
余談
同人サークル上海アリス幻樂団のZUN氏が手がけたゲームシリーズ東方Projectに登場するキャラクター聖白蓮が住職を務めている寺院『命蓮寺』は、設定では宗派は真言宗らしい。