概要
「Go Toキャンペーン」は、新型コロナウイルス感染収束後に日本国内の人の流れを創り出し、地域の再活性化につなげることを目的として、観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業などを対象に、補助金の支出により需要喚起を目指すキャンペーン施策。
本来もっと後に開始されるはずだったのだが前倒しで2020年7月22日より開始が予定されている。
第一次補正予算にて事業総額1兆6,794億円が計上されており、旅行商品を最大半額相当補助する「Go To Travelキャンペーン」や、飲食代を2割相当補助する「Go To Eatキャンペーン」、イベントなどのエンターテインメントを2割相当補助する「Go To Eventキャンペーン」などが実施される。
上記の各キャンペーン名は英文法的には誤っており、本来なら「Go Travel」とか「Go Eat」でよい。強いて英文法的に矛盾がない表現として解釈するなら「Travel」や「Eat」という名前の場所に行こうという意味になる。
諸問題
2020年7月上旬~中旬にかけて再び新型コロナウイルスの感染者が増えていることもあり、更に感染者を増やしてしまうのではと中止を訴える声が上がっている。実際、gotoキャンペーンの開始前日から連日日本の感染者は最多を更新しており、東京を除いても各地で感染者数が過去最多を更新するなど感染が広まってしまっているため今からでもやめないと取り返しのつかない惨事になるのではと中止を訴える声はさらに強まっている。各地方の都道府県知事も感染拡大を懸念するコメントを述べていたり、地方の医療は都市部より整っていないことを理由に「都民来ないで」という地方在住民の声もある。
また、令和2年7月豪雨で被害にあっている地方の復興を先にすべきではという声、このタイミングでのキャンペーン開始に疑問を抱く人も多い。そのほか、1兆6,794億円も使う必要があるのかといった声や、このお金をコロナウイルス関連の医療や上記の豪雨災害にまわすべきという意見も。
旅行会社や宿泊施設、お土産屋などの観光業からは、お客さんに来て貰わないと店が潰れるなど、収入や生活の危機に陥っているため実施を望む声も出ているが、その開始時期から、裏に電通やパソナが関わっているのではといった中抜きを疑う声もある(電通、パソナは2020年東京オリンピックで莫大な収入が入るはずだったが、ご存じの通りコロナウイルスの影響で中止、延期になったため収入がない)。
Twitter上では上記を含む様々な問題点から中止、延期を訴える反対ツイートが非常に多く。
GoToキャンペーンを皮肉って『GoToトラブルキャンペーン』『GoTohellキャンペーン』『電通が強盗キャンペーン』などと言われている(なお、GoToトラブルはデーブ・スペクター氏やTBS番組ひるおびでも皮肉られた)。
政府は感染防止をして基準をクリアした所をキャンペーンの対象にするとしている。ただ防止基準はキャンペーンの5日前に発表するということで、各旅行会社宿泊施設は対応に苦慮している。ところが後述の東京除外により1日前に発表がずれ込み現場は当然混乱に陥った。
参加事業者への説明会が行われたが、説明して欲しい部分が資料にないなど政府上層と現場のズレが露呈している。沖縄の説明会に関しては事業者側の質問に何一つ答えられないという事態も発生している。
東京都の感染者数増加で7月16日に東京都はキャンペーン対象外となったが、政府はこれについて何も都庁に連絡していない。また国交省にも連絡がなかった。
これにより都民の旅行キャンセルが相次いだ。政府は当初、発生したキャンセル料は保証しない方針だったが後にキャンセル料を全額保証する方向に方針転換した。保証範囲はキャンペーン発表の7月10日~17日。二転三転するキャンペーン内容に関係省庁の末端や現場に負担やしわ寄せが起きているのは言うまでもない。
東京都の除外は都民と東京都(都内の商業施設)を目的地とした物のみで途中東京を通過するだけならば問題ない。結果都内の旅行会社はキャンペーンの恩恵はほぼ0%になってしまった(都内の旅行会社でもツアー出発点が他県ならキャンペーンの対象にはなる)。
開始後
2020年7月22日開始当日。どうすれば割引されるのか分からないという疑問を持つ人も多い。
これに関しては4連休開けに各旅行会社で最初からキャンペーンが含まれるツアーパックを販売し始めたためある程度改善された。
7月22日に開始されたがキャンペーンの事務所の開設が8月という設置の遅れが発生している。
各リサーチ会社ではキャンペーンのアンケートを取っているがキャンペーンを利用し旅行に行きたいと回答したのは全体の18%という低い結果が出ており残りの割合も約50%が(今のコロナの状況では)行きたくないと回答されている。
別の調査ではキャンペーン利用者が0.9%と1%すら越えていない結果を出した。
8月、政府はお盆の帰省については控えるようにと発言。ただし「政府としては、一律の自粛を求めるものではない」とも発言した。
そして8月22日、懸念通り感染者が宿泊していたことが10件判明した。この件による他人への感染は無かったものの、一歩間違えば感染拡大のみならず宿泊施設への大きな痛手となっていた可能性もある。
8月26日漸く「GoToイート」が開始され参加事業者の募集をおこなった。
同日参加旅行会社数は全体の6割ほどキャンペーン利用者は420万人と報じられた。
同年9月下旬、これまで除外されてきた東京が10月1日から対象に含まれることになった。
ただ、感染がおさまっているとは言えない状況下なので、都民・他県民双方から賛否両論ではある。
また10月中旬から「GoToイベント」が開始される。
10月に入ってからは「イート」が本格スタートしたのもあって利用者が増え、概ね好評。
「錬金術」というポイント差額を狙った安値一品注文が問題視されGoToイートの見直しがされる事が決定した。
第3波
11月に入ってから観光地として人気である北海道を中心に感染が急拡大し、全国の感染者が過去最多を更新した。その原因がGoToキャンペーンであるとしてキャンペーンに対する批判が再燃している。
また、感染が拡大すれば北海道などの感染拡大地域をキャンペーン対象からの除外を検討するように新型コロナ感染症対策分科会が提言している。
そして11月24日政府のキャンペーン見直しが入り感染拡大地域(大阪・北海道)を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する事になった(東京は高齢者のみ自粛に)。
キャンペーン事態を休止または中止しろと言った批判もあるが、下記にあるように経済崩壊を招きかねないため政府与党としても「医療か、経済か」といった難しい判断を迫られていると思われる。
12月14日苦しい医療現場や各地の要望を受け大阪、北海道に続き東京と名古屋もキャンペーンを停止とし、さらに2020年12月28日から2021年1月11日まで全国一斉停止する事になった。
キャンセル料に関しては2020年12月24日までは無料で補償される。
2021年1月、1都3県への緊急事態宣言の発出によりキャンペーン停止も延長される事になった。
その後、再開時に備え予算が追加された。
第4波
三度目となる緊急事態宣言が出される中2021年4月26日奈良県でGoToイートのプレミアム付き食事券を追加販売し各所から批判、特に医療関係者から苦言が飛んだ。翌27日緊急事態宣言が解除されるまで券の販売を停止すると奈良県は発表する事態となった。
第5波
第5波が収まり、新たな政権になった10月。停止したキャンペーンの再開を検討している事が明らかになった。これは政府が一方的に発言しているわけではなく観光地や飲食業界から再開を望む声が出ているのが背景にある。
ただし、いきなりの再開はせず「感染状況を勘案し、再開のタイミングなどを検討する」と政府は述べている。
2021年10月18日GoToトラベルの再開について平日をメインに再開する可能性が出された。
これは土日の観光地での人の密集を避けたり、感染対策で席数を減らしている店に対しての配慮だと思われる。事実、以前のキャンペーンでは休日に人が押し掛けたり、平日はガラガラだったりといったことが相次いだ。
また一律半額支援の結果。高い宿、大きい宿に利用が集中し小さい宿はそれほど恩恵がなかった点を反省し次回は小さい宿を利用して貰うため割引率を宿によって変える案も出た。
旅行サイトなどは『あとから割引』と銘打って、GoToを適用できるよう準備を始めているところもあるという。
11月11日、GoToトラベルを2022年1月中旬から2月の再開を検討するとの見方が出た。おそらくではあるがその頃にはコロナ用の飲み薬の承認や3回目のワクチン接種が始まる為と見られる。ただし「第6波と重なってしまうのでは?」という不安の声もある。
第7波
長らく一時停止していたキャンペーンだが2022年10月26日からGoToイートの食事券の販売と利用が再開した。
海外
海外ではこのキャンペーンについて「正気か」「マジか」といったニュアンスの反応が出た。感染者増は海外にもある程度報道されているので当然の反応である。
※特に明言の無い場合2020年の内容。
タイ
1日一万円分ほどの保証をし国内旅行を推進。そもそもタイでは2ヶ月間感染者を出しておらず、国内の経済活動には問題がない。
だが、観光地では格差が起きておりタイの国民に人気の観光地では潤っているが、外国人に人気の観光都市パタヤでは元々外国人観光客が9割以上を占めていたため店が軒並シャッターを下ろし、閉店している店も相次いでいるという。
ベトナム
30~45%から最大70%の国内旅行代金の保証をしている。元から外国人向けの観光が17%を下回っており、更に3ヶ月間感染者を出していなかった。が、久々に感染が発生、ダナンに非常事態を宣言し観光客8万人を直ちに避難させた。
オーストラリア
州の権限が大きいため感染者が多い地域の移動を規制。キャンペーンのような物はしていないが国内の経済活動を積極的に動かそうとしている。
スペイン
国民の声もあり観光業を含む経済活動を再開。が、その二週間後に各リゾート地で感染者急増。結果的に失敗の烙印を押されている。
中国
ウイルスの発祥国だが感染がおさまり。海外旅行は不可能だが国内旅行は賑わっている。更に国内のほとんどの観光地の施設の入場料を国が負担し経済を活性化している。
そして、人気の旅行先はなんと武漢である(おそらくだがウイルスに打ち勝ったアピールも含まれていると思われる)。
一方で
確かに問題・課題の多いキャンペーンではある。
しかして新型コロナによって経済が壊滅的打撃を受けている中、活性化の為には実行しなければならないという面も確かに存在する。
これは観光地の問題だけではない、人の流れが止まった為に各地の消費が無くなったために農業などの一次産業も打撃を受けている。
公共交通や航空業界も苦しい立場に追い込まれ、これらが動かない為に工業も需要が無くなり仕事が激減してしまっている。
今はまだ実感あるいは被害を受けている範囲がそこまで広くないというだけで、このままでは将来的に日本の全国民の生活が苦しくなるか破綻するのは眼に見えている。
勿論、このキャンペーンによって感染者が増えて医療機関が逼迫する危険性はある。
しかし、やりようによっては何とかなるかもしれない医療と、このままでは確実に壊滅する日本経済のどちらを取るかという問題に後者を救うという判断そのものは間違ってはいない。
新型コロナを恐れるあまり、新型コロナの犠牲者よりも生活が立ち行かなくなった事による犯罪や自殺者の方が増えるなどとなっては本末転倒でもある。
そして2020年のGDP予測が27.9%と過去最大のマイナス成長を叩き出し
自殺者は五か月連続で増加、その数は2000人を超えコロナ感染による死亡者を超えてしまった。
実際にこのキャンペーンが行われた経済効果として波及効果も含めると3.7兆円の経済効果があったと言われているように、必ずしもマイナスなものであったとは言い切れない側面もある。
これは我々の生活そのものに直結する問題である。
当然のことながら単なる否定は旅行会社や飲食業界の人々を傷つける事になってしまう。
決して否定批難のみならず、どれだけの経済効果などがあったのかなども踏まえて建設的な議論や考えを持つようにしたい。