概要
『アームズラリー』、『端ノ向フ』などを手掛けた塚原重義による長編アニメーション。淡きマドロの活劇浪漫にして、スチームパンク風レトロフューチャー和風ファンタジー。
2018年冬に第一回クラウドファンディングを実施し、これによって得た資金をもとにパイロットフィルムが制作され、2020年に一般公開された。
2020年春から夏まで第二回クラウドファンディングが実施された。
2021年8月に本編の冒頭15分が「序章」としてシネ・リーブル池袋で公開され、舞台挨拶にて本編制作決定の旨が発表された。
2023年6月8日、全編完成した旨が公式アカウントから発表された。7月17日にはテアトル新宿およびシネ・リーブル梅田にて初の試写会が行われ、また同30日・8月1日にはモントリオールで開催されたファンタジア国際映画祭にも出品されている。
一般公開は「序章」上映会での監督舞台挨拶では「2024年のパリ五輪までに公開されると思います」と言及されていたが、2023年12月に2024年4月の劇場公開が決定、2024年4月12日に公開された。制作はチームOneOne、配給は東京テアトル。
2018年にYouTubeでからくり人形の赤フクと白キチが本作について語る短編動画「でくの座」が公開されている。
あらすじ
『いいかい坊や、それ以上は行くんじゃナイヨ。クラガリを永遠に彷徨う事になるからネ』
大帝都北部、城北工業地帯の突端・扇町のそのまた端っこ、サクラ小路に探偵社をかまえる我らが主人公「荘太郎」は、自堕落な日々を過ごしていた。
一方そのころ大帝都各地で人々が集団で突如失踪する奇怪な事件が横行。あるよんどころのない事情から荘太郎はこの事件をめぐって地下世界「クラガリ」を探索することとなった。
そこで彼が出会ったのは、謎の少女「タンネ」と彼女が率いる装甲列車のクセモノたち。そして待ち構えるは泣く子も黙る地下ギャング「福面党」と、暗闇にうごめく不可解なナニカ。
はたして、奈落の軌道の最果てに待つものとは―――。
『いいかい嬢チャン、あれに附いてくでナイヨ。アケガタを二度と拝めなくなるからネ』
キャラクター
大辻探偵社周辺
荘太郎
CV:神田伯山
大辻荘太郎。本作の主人公にして、扇町サクラ小路に探偵社を構える青年。
先代である父・荘八の遺産を切り売りしながら自堕落な日々を送っていたが、とある理由から地下世界「クラガリ」へ足を踏み入れることになった。
呑気で昼行燈な性格だが、暗い過去も秘めている様子。
サキ
CV:芹澤優
ミウラサキ。天涯孤独な情報屋の少女。探偵社に居ついており荘太郎の助手代わりになっている。
荘太郎が引き受けた依頼に協力するためにクラガリに乗り込むが行方不明になってしまい、やがて荘太郎のもとに「福面党」から脅迫状が届く。
稲荷坂
CV:坂本頼光
稲荷坂半次郎。大帝都東部の零細新聞社「尾具新報」のベテラン探訪記者で、荘太郎の両親とも親しかった古くからの飲み仲間。荘太郎に「集団失踪の調査」という依頼を持ち掛ける。
初出は「端ノ向フ」。
真鍋
CV:越後屋コースケ
元大学教授の富豪の老人。飼っていたオウムチコの捜索を荘太郎に依頼していたが、礼金も払わずオウムも引き取らないまま音信不通となっている。
ソコレ四六三
タンネ
CV:黒沢ともよ
滝ノ川丹祢。我らがヒロインタンネ嬢。列車長として装甲列車「ソコレ四六三号」を率いる謎の銀髪赤目の少女。
狐狸の類とも称される飄々とした得体のしれない雰囲気で、クラガリで出会った荘太郎にある警告をする。
指揮班長
CV:佐藤せつじ
甲斐允。タンネと行動を共にする「ソコレ四六三号」の指揮班長。国防軍の軍曹。
ある事情からクセモノぞろいのソコレに島流しされた身だが、その状況を愉しむ豪快な人物。
モデルは『独立愚連隊』などの主演として有名な俳優・故佐藤允。
トメオミ
CV:西山野園美
タンネと行動を共にする身辺警護役。「その道」を出自と語り、常に臨戦態勢を貫く寡黙な人物。
松
CV:狩野翔
ソコレの先頭車両である前方警戒車に務める一等兵。博打好きの陽気な性格で、いつも陰気な相棒の竹と丁半で勝負している。
クラガリ関係者
御多福
CV:野沢由香里
御多福のおトミ。福面党の首領であるお多福のお面を付けた肥満体の女性。
彼女に睨まれたら最後、クラガリでは生きていけないと恐れられている。
天福ノ早虎
CV:川原慶久
福面党の隊長格として采配を振るう男。右目に眼帯を着け、無精髭を生やしたいかにもやくざ者の風体。
腹心の部下二人とともに「クラメルカガリ」にも登場する。
でくの座
大帝都の各所でからくり人形の芝居を開催している覆面の女性。フクロウの「赤フク」と犬張子の「白キチ」のコンビを演じている。
山樫
CV:狩野翔
大帝都東部・箕河洲の高架下に店を構える覆面の骨董商。荘太郎の父とも付き合いがあった様子。
「よろず骨董山樫」シリーズからのゲスト出演。
コヅチ
CV:夏巳りか
ソコレ四六三に協力するクラガリの老舗「匣屋(くしげや)」の孫娘。補給列車を率いてソコレに物資を届ける。
怪活動弁士
CV:坂本頼光
狂言回しとして登場する仮面の怪人物。大帝都東部・大川端では都市怪異譚「大帝都七怪人」の一人に数えられている。
初出は「端ノ向フ」。
用語
クラガリ
「大帝都」の地下空間、およびそこで形成された裏社会の呼び名。暗渠、廃坑道、地下鉄の未成線といった空間に人が住み着いてスラム化し、警察力の介入も困難な無法地帯と化している。
タンネ曰く、一般に知られている領域は「クラガリの縁のほとり、『クラベリ』」にすぎないらしいが……
福面党
クラガリの城北一帯を縄張りとする地下ギャング。亀ヶ池地下貯水槽跡に形成された歓楽街「ミズノチマタ」に本拠を構える。
倒福紋をシンボルとし、構成員は福助人形を模した被り物と羽織を身に着けているのが特徴。
ソコレ四六三
交通兵団第四六三号装甲列車。鬼の的を射る部隊章の意匠から「鬼の四六三」の異名を持つ。交通兵団の中でも鼻つまみ者の寄せ集めと称されており、その蛮勇からクラガリで広く恐れられている。
満鉄型軽装甲列車とAB10形を改造した複合機関車で構成された6両編成。最後尾の後方警戒車には装脚戦車「ウノハナ号」を搭載する。
イタチに近い洞穴性の獣。クラガリでは伝書動物として利用され、使役者は「クダ遣い」と呼ばれる。
眞泥幻術団
数年に一度、どこからともなく城北に訪れて音無川ドック跡地に興行を開くサーカス。一輪車の華麗なパフォーマンスが演目の目玉。
関連動画
- ティザーPV「始動編」
2017年11月のイベントで初公開された特報映像。第1回クラウドファンディング直前の2018年9月にYouTubeで公開された。
- パイロットフィルム
2020年春に公開されたパイロットフィルム。
- 紹介口上PV
2020年夏に公開されたパイロットフィルムを編集し坂本頼光による口上を加えたPV。
- 序章本予告
2021年夏に公開された序章の予告編。ファンタジア国際映画祭向けに英語字幕版も制作された。
- 特報
2023年12月に公開された特報映像。
- 本予告
2024年2月に公開された予告編。
- 主題歌
「内緒の唄」
作詞・作編曲:小春
- ミ號一三七二計画特報
本作の初期の構想と思しき短編映像。
関連イラスト
関連タグ
クラメルカガリ:成田良悟シナリオ原案のスピンオフ作品で同日公開。同時上映ではないので注意。
独立愚連隊:ソコレ四六三隊員のモチーフに取り入れられており、挿入歌に灰田勝彦の『燦めく星座』を使用するなどオマージュも見られる。
北区(東京23区):扇町=王子など作中舞台の主なモデルとなった一帯。