装甲列車
そうこうれっしゃ
軍事的な輸送列車と鉄道の防御がこの種の列車の始まりであるとされる。
敵の攻撃に対抗するため列車に装甲を施したり、敵を撃退するため車両の重武装化を行ったりしたものであり、それに伴い機関車の改造(装甲化や大馬力化など)が施されたものである。
これらにより敵の攻撃を恐れず輸送を行ったり、周辺地域の防護を行ったりする存在である。
この種の車両は過去においては南北戦争や第一次世界大戦等で盛んに使用された、「装甲化された機関車」+「装甲化された貨車」+「対空砲などの武装を搭載した車両」という編成を用いた。ロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道など軽便鉄道でも使用されたケースがある。
しかし、第二次世界大戦以降はこの種の車両は廃れてしまった。主な理由としては以下の点が挙げられる。
- 軌間が合わない
欧米では基本的に国際標準軌(1435mm/4フィート8.5インチ)が採用されているが、ロシアやインドではこれよりも広い広軌、東南アジアではこれよりも狭い狭軌(1000mmの通称メートルゲージ)が主流であった。特に東部戦線におけるドイツ軍は軌間の違いによって鉄道による物資輸送ができなくなり補給に苦しんだといわれる。
- 破壊工作
当然ながら装甲を施した列車は重く、それに耐えられるほどの頑丈な線路が必要になる。
しかし敵に線路および鉄道施設が利用されるのを防ぐため、撤退の際に破壊工作を行うことがあった。
仮に設備の修理、あるいは新規の作成ができたとしてもレジスタンスなどのゲリラ勢力による破壊工作で無力化されることがあった。
- その他の輸送技術の発達
そして民間の輸送インフラ同様に自動車や航空機の発達も脅威となった。線路がなければ走行すらできない鉄道車両に対し、機動力に優れる自動車や航空機は圧倒的に優位であり、逆にそれらの格好の攻撃対象になった。
特に航空機の発達は、この種の車両に対し不利となる要素をもたらし、爆撃機や攻撃機の格好の的となり、また線路も爆撃により使用できなくなるなどの影響があった。
ロシア連邦軍には、未だ「鉄道軍」と呼ばれる兵科が存在しており、少数ながら装甲列車が使用されている。これはロシアは広い国土を持ち、国内輸送においては大量輸送が可能な鉄道が優位な状況となるためであると推測される。
1999~2009年の第二次チェチェン紛争や2022年のウクライナ侵攻で使用している。
またアフリカにおいてはゲリラや暴徒に対するため軽武装のこの種の車両や装甲車をレール上で運用できるようにしたものを用いている事例も存在するらしい。
前述のように現実世界では殆ど実用性が失われた兵器であるが、創作の世界では活き活きと活躍している。現実と文明の発達が異なっていたり、「野盗などが鉄道を狙う」可能性がある世界観ならばこの種の車両が登場させられることから、活躍の機会も多いと言えよう。
特にスチームパンク的な世界観ならば移動要塞的な活躍も期待できる。
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