概要
正式名は「リトルテイルブロンクス構想(以下「LTB構想」)」。
サイバーコネクトツー(旧社名サイバーコネクト/以下「CC2」)による世界観構想で、大地が空に浮き、機械文明と自然が共存し、謎に満ちた超古代文明の遺跡が点在する世界「浮遊大陸」を舞台に「イヌヒト」と「ネコヒト」と呼ばれる二種族のケモノ(獣人)たちが様々な物語を繰り広げる。
ケモノをメインに据えた世界観企画であり、第一段の『テイルコンチェルト』と第二段の『まもるくん』の二作の間は人間は存在しない設定でケモノオンリーを貫いて来たが、第三段の『ソラトロボ』で後述の制作秘話で語られるとある事情により人間キャラを登場させないといけなくなり、少数ではあるものの『ソラトロボ』以降の作品で人間キャラが登場する様になった。
CC2と共に生まれたシリーズではあるが、ケモノを全面に推している故か、CC2のもう一つの代表作である.hackシリーズに比べて本シリーズはややマイナーな部類に位置している。
しかし、LTB構想を立ち上げたCC2社長松山洋氏を始めとした制作陣のケモノ愛と熱意、世界観設定の凝り方はすごく、刺さる人には刺さるため国内外で根強い人気を持っている。
ちなみに「リトルテイルブロンクス」という名称は本シリーズの共通世界観企画の名前であり、舞台となる浮島世界の名前ではないので注意。
世界観設定
- 浮遊大陸
空に浮遊する島々からなる世界。
人一人住めるくらいの小さな島やオーストラリア大陸並みの巨大な島など大小様々な浮島が存在し、そこにイヌヒトとネコヒトの二つの種族が文明と国を興し、生活している。
生態系はこの世界独自のモノが形成されており、人より巨大な虫や空中を泳ぐ魚、音を鳴らす草や人も襲う食肉植物などが存在する。
空中に浮いているため活火山は存在しないが、かつて火山だった場所がある他、自然界で生まれるエネルギー結晶体「クリステル」が水に触れて化学反応を起こしてできた温泉は存在する。
世界各地には数千年前に存在したとされる超古代文明の遺跡が点在しており、そこから現代の技術では造れないオーバーテクノロジーの遺物「発掘部品」が出土されている。
『テイルコンチェルト』では眼下に果てしなく広がる海面が見えていたが、『ソラトロボ』からはプラズマを放つ雲海により浮遊大陸と地上が分断されているという設定が加えられたため、それに伴いテイルコンチェルトの舞台であるプレーリー王国の島々の下にある海は海水で満たされた巨大な浮島という設定になった。
浮遊大陸の主要種族の一つであるイヌ科動物の特徴を持った人類。
『テイルコンチェルト』では「犬ヒト(新約設定資料集ではイヌヒトと表記されている)」、『まもるくん』では「ケン族」と呼称されている。
機械の扱いに長け、ロボや飛行船を始めとした航空機など、様々な機械や乗り物を開発している。組織性と忠誠心が高く社会構成力に長けている。一方でオカルトや神秘の類に関心が薄い者が多い。
浮遊大陸の主要種族の一つであるネコ科動物の特徴を持った人類。
『テイルコンチェルト』では「猫ヒト(新約設定資料集ではネコヒトと表記されている)」、『まもるくん』では「ビョウ族」と呼称されている。
強靭で筋力に優れた肉体、または身軽で俊敏性に優れた肉体を持ち、個人主義、好戦的、神秘に関心が高い者が多い。
『ソラトロボ』から「呪術」と呼ばれる魔法の様な力を行使できる素質があるという設定が加えられ、『戦場のフーガ』ではその呪術が子供であれど機械兵器に匹敵することもある。
ちなみにイヌヒトとネコヒトとの間に子を成す事が可能であり、その場合産まれて来る子供はハーフではなくイヌヒトかネコヒトのどちらかとなる。
- ロボ
浮遊大陸の機械文明が生み出した人が乗って操縦するロボット。
兵器として運用される以外に仕事の相棒として民間でも使用されている。
一部例外は存在するが、パイロットが外に露出する露天タイプのコックピットで機体サイズは2m以上、10m未満であるのがこの世界のロボのお決まり要素である。機体形状は人型以外に車輪走行型や四足・多脚型、頭部の有無、カッコいい系からユニーク系と形は様々。
動力は『テイルコンチェルト』では「蒸気機関」、『ソラトロボ』ではクリステルを燃料とした「クリステルドライブ」が用いられている。
- 航空機
浮遊大陸での生活において必要可決である乗り物。
バルーンで浮力を得てプロペラで推進する飛行船と飛空艇が一般的に普及する航空機だが、他にも離着陸用の滑走路が必要になるがバルーンを使わずプロペラのみで飛ぶ飛行機や高価だがジェットエンジンで飛ぶ高速飛空艇なども存在する。
ほぼシリーズ全作品に登場する古代文明の最終戦争で生み出された超兵器群。
山の様な巨体を持ち、単体でも今の世界を滅ぼせる程の強大な力を有する。
古代文明を滅ぼした危険な兵器として世界各地に封印されているが、その力を我が物にしようと目論む悪党達によって復活させられる事があり、復活したティタノマキナを止めるために主人公が立ち向かうのがLTB構想シリーズではお馴染みの展開みたいになっている。
『ソラトロボ』から登場した浮遊大陸の世界では異質とも言える人間の姿を持った者達で、超人的な肉体と特殊能力を持つ。
『リトルテイルストーリー』に「ヒト」と呼ばれる人間の姿を持つ種族が登場するが、彼らハイブリッドとの関連は不明。
タイトル一覧
テイルコンチェルト
1998年にPlayStation向けソフトとして発売されたサイバーコネクトツー(当時社名サイバーコネクト)の処女作にしてシリーズ第一作目となる3Dアクションゲーム。販売元はバンダイ、海外での販売元はATLUS。
警察官の主人公・ワッフルが幼馴染である少女・アリシア率いる空賊・黒猫団を逮捕するためプレーリー王国を駆け回るのだが、やがてそれが国を巻き込む大事件へと発展していく。
かつては『テイルコンチェルト2』という次回作が企画されていたが、後述の制作秘話で語られる事情によりお蔵入りとなってしまった。
「ソラトロボファンブック」にて『ソラトロボ』のキャラと共演する両作品の後日談に当たる小説『Kadens~終結旋律~』が掲載。掲載書籍は電子書籍化されている。
防災キャラクター・まもるくん
サイバーコネクトツーがデザインした福岡県の防災・消防・安全イメージキャラクター。
日本に似た国・ニポン国に住む子供消防団員の少年まもるくんが活躍する。
福岡県の安心・安全まちづくりのホームページにて防犯シミュレーションをプレイする事ができ、選択肢に正解してクリアすると壁紙がダウンロードできる。
ソラトロボ〜それからCODAへ〜
2010年に発売されたゲーム作品としてはテイルコンチェルト以来12年ぶりとなるニンテンドーDS向けアクションRPG。販売元はバンダイナムコゲームス、海外での販売元は任天堂。
主人公であるハンター・レッドが謎の少女・エルとの出会いをきっかけにシェパルド共和国を大きく揺るがし、そして浮遊大陸の起源へと迫る壮大な冒険を繰り広げる。
10年に渡る構想と一千枚以上の設定原画から形作られているため『テイルコンチェルト』『まもるくん』以上に世界観の作り込みに力が入っており、LTB構想の世界観設定は本作でほぼ固まったと言える。
物語・世界観・キャラ紹介、そしてネタ的な内容が入ったCMを100種制作・放送され、ギネス世界記録に登録された。
ゲーム以外に小説作品としてゲーム本編から8年前を舞台とした外伝『レッドデータ・チルドレン〜ソラトロボ外伝~』が月刊ドラゴンマガジンにて2010年9月号から2011年1月号にかけて連載された。しかし、連載が終了して今現在(2024年時点)に至るまで未単行本化・ファンブック等の書籍未収録であり、掲載雑誌の電子書籍化もされていないため今読む事はかなり難しい状況にある。
また、ファンブックや設定資料集にはサイドストーリーや本編の後日談に当たる小説が掲載されており、こちらは『レッドデータ・チルドレン』と違い掲載されている書籍が電子書籍化がされているため今でも購入して読む事ができる。
ストレルカ・ストーリーズ
CC2 15周年記念プロジェクトとして発表された作品。
国際世論の反対を押し切り建造した人工クリステル発電所の爆発事故により不穏な空気漂う国を舞台にロケット技師だった育て親の遺志を継いだ主人公ストレルカが宇宙ロケット開発に奮闘する。
・・・と言った構想だったが、諸事情によりプロジェクト凍結となっている。
ゲームなのか映像作品なのかは現時点では不明。
リトルテイルストーリー
スマホアプリ用ゲームとしてリリースされたRPG。発売元はバンダイナムコゲームス。
レトリバー王国を舞台にイヌヒトとネコヒト達がパーティを組み、仲間と協力してモンスターと戦い、冒険する。後に第三の種族として人間の姿をした種族・ヒトが追加される。
2014年3月にサービス開始、同年10月にサービス終了。
戦場のフーガ
「復讐」をテーマとした作品制作企画「復讐三部作」の一つとして開発され、2021年にPlayStation 4、PlayStation 5、Nintendo Switch、Xbox、steam向けに発売されたドラマティックシミュレーションRPG。シリーズ初の自社パブリッシングタイトルであり、開発・販売はCC2が行っている。
平和な国であるガスコに突如侵攻して来た軍事国家ベルマン帝国の軍隊に連れ去られた村の人々を助け出すため、主人公・マルト達12人の子供たちが古代の巨大戦車タラニスに乗り、ベルマン軍に立ち向かう。
ファミ通.COMにて足立たかふみ氏による公式コミカライズ『戦場のフーガ〜鋼鉄のメロディ〜』が連載。ゲーム版とほぼ同じストーリーで進むが、所々異なる展開や次回作に繋がる要素が盛り込まれている。
戦場のフーガ2
2023年5月にリリースされた『戦場のフーガ』の続編作品。LTB構想シリーズでは初のナンバリングタイトル。
前作の戦いから1年後、子供たちは平和な日々を送っていたが、ある日タラニスが謎の暴走を起こし、子供たちの何人かを乗せて動き出してしまう。残されたマルト達はタラニスを追うためかつて敵として戦った巨大戦車タラスクスに乗り、新たな戦いの旅へと出立する。
『鋼鉄のメロディ』では第29話から第二部として本作に当たる物語がスタート。第一部同様、ゲーム版とは少し異なる展開、次回作に繋がる要素が盛り込まれている。
戦場のフーガ3
『戦場のフーガ』シリーズの完結編となる『戦場のフーガ2』の続編。
制作秘話
CC2の社長松山洋氏はむかしTVアニメ・名探偵ホームズを視た際にケモノに惚れ、「ケモノはメジャーになる!」と意気込んで自社の処女作にしてLTB構想シリーズ第一作目となる『ティルコンチェルト』を作ったとのこと。
『テイルコンチェルト』発売後、ケモノオンリーのその世界観やキャラ達に魅了された国内外のケモナー達に受けたものの、「ケモノ」という要素で万人受けするにはハードルが高いために『テイルコンチェルト』の売り上げはワールドワイドで15万本と大ヒットには至らなかった。
ケモノ・ロボ・浮遊大陸の3要素は万人受けさせるにはハードルが高い(ケモノはニッチ層向け、ロボはターゲットが男子に絞られる、浮遊大陸は当時その世界観でヒットしたゲームが無かった)とバンダイに指摘されるも松山氏は再チャレンジのために『テイルコンチェルト』の次回作『テイルコンチェルト2』の企画を練り、バンダイに強く提案したが「大ヒットしなかったゲームの続編は要らない。」と言われてしまい、『テイルコンチェルト2』はお蔵入りとなってしまった。
それでも松山氏はLTB構想の新作を作りたいが故に10年の歳月を掛けて構想を練り続け、ニンテンドーDS向けゲームの募集の際にLTB構想新作となる『ソラトロボ(発表当初のタイトルは『ソラロボ』)』の企画をバンダイに持ち込むも一度断られてしまうのだか、諦めなかった松山氏はソラトロボの資料を持って任天堂へ突撃、OKを出して貰えるよう直談判した。その事がバンダイにバレて注意を食らったものの、バンダイからOKを勝ち取る事に成功、『ソラトロボ』が開発され、発売に至った。
しかし、そのOKを貰う際にバンダイの担当者から「ケモノだけじゃ感情移入しづらくて厳しい。」「人間は一人も出せないの?」と迫られたため、松山氏はOKを貰うために「(人間は)いるよ。」と言い、苦肉の策という形でLTB構想の世界観に“人間”を登場させる事となる。
その様な経緯により“LTB構想世界における人間キャラ”の設定が練られ、その結果、ハイブリッド等の人間キャラが誕生した他、『ソラトロボ』の主人公であるレッドに人間の姿へ変身する能力が付く事となった。
これ等の情報の発表後、『テイルコンチェルト』の様なケモノオンリーのゲームを望んでいた一部のケモナー達から「人間を登場させるのは蛇足。」「ケモノを人間にするな。」等の批評、反響が寄せられ、賛否が分かれてしまった。
結果的にはバンダイの提案通りケモノゲーム故に限られた層にしか受けなかったために販売数はワールドワイドで大体10万本と良いとは言えないモノであったが、作り込まれた世界観と物語の完成度などから『ソラトロボ』自体の評価は決して悪いモノではなく制作陣の熱気が伝わった作品となった。
(電ファミニコゲーマーのインタビューとソラトロボ完全設定資料集のスタッフコメントを参考にしつつ要約)
その後、15周年記念作品として発表された『ストレルカ・ストーリーズ』は諸事情により開発計画は凍結、LTB構想シリーズのコンシューマーゲームは『ソラトロボ』発売から約10年後に自社パブリックにて開発された『戦場のフーガ』のリリースまで待つこととなってしまった。
インディーズ制作となった『戦場のフーガ』は様々な試行錯誤や制作中のトラブルがあったが、完成・リリースに至り、現時点(2024年)で『戦場のフーガ2』を含め全世界累計ダウンロード数は40万を突破、国内外の多くのプレイヤー達に楽しまれている。
現在、『戦場のフーガ』シリーズ完結作『戦場のフーガ3』が鋭意制作中であり、フーガ3の進捗、そしてLTB構想シリーズの今後の展開に期待したい。
余談
現時点で現行ハードで遊べる作品である『戦場のフーガ』と『戦場のフーガ2』をプレイし、もしかしたら過去作に興味を示す新規の方々がいるかもしれない。
しかし、コンシューマーゲーム作品の過去作である『テイルコンチェルト』と『ソラトロボ』は10〜20年以上前の作品であるためソフトと対応するゲーム機は既に生産が終了しており、現行ゲーム機・プラットホームに対応したリメイク・リマスター作品は無く、ダウンロード販売・サブスクリプション配信もされていないため、実際に遊ぶには中古ショップでソフト(人によっては対応ゲーム機を含めて)を探さないといけない。
『ソラトロボ』に関してはサイドストーリーとなるDLクエストが有り、現在配信が終了しているためソフト単体でストーリーを保管する事はできない。
両作品を実際にプレイするにはハードルが高い状況となっているが、YouTubeやニコニコ動画で両作品の実況動画やプレイ動画が投稿されており、その動画投稿者の中には上記のDLクエストも含めて『ソラトロボ』をプレイしている者もいる。
ソフト、ゲーム機を入手してプレイ環境を整える事は難しいけど両作品の内容を知りたいという人たちは実況・プレイ動画の視聴という方法で両作品に触れるのも一つの手である。
関連タグ
???:『ソラトロボ』以降の世界観設定の核心部分に繋がる単語。
関連作品
名探偵ホームズ:本シリーズ第一作の『テイルコンチェルト』が誕生する切っ掛けとなったミステリー小説シャーロック・ホームズを原作としたTVアニメ。通称「犬ホームズ」。
ロックマンDASH:『テイルコンチェルト』制作の際、インスパイアしたゲーム。
天空の城ラピュタ:浮遊大陸や板状蛇腹腕を持つロボ、結晶石のオマージュ元が登場する作品。
巨神兵:ティタノマキナの元ネタに当たる風の谷のナウシカに登場する巨人型超兵器。
二次創作作品・タグ
pixivユーザーのずる氏が「テイルコンチェルトの続編」というコンセプトで描いたリトルテイルブロンクスの世界観を用いた二次創作。
軍事国家「シュナウザー帝国」を舞台に超能力を秘める5つの指輪を巡り虎ヒト(ネコヒトの亜種)の青年で公安9課所属のジムと同じく9課所属のイヌヒトの女性アイリ、その他公安9課の仲間たちが活躍する、という内容。
『ソラトロボ』が登場する前に描かれた作品のため現在のリトルテイルブロンクスとは異なる独自設定が多く、種族関連ではイヌヒトとネコヒト以外に虎ヒト、獅子ヒト、兎ヒト、豚ヒト、海ヒト(ペンギンを始めとした海洋生物型種族)、機械ヒト(機械生命体)、虫ヒト(虫スーツを着た人間)などが存在する。
また、魔獣戦記譚とマカロニ・カプリッチオという同作者による派生作品が存在する。
『ソラトロボ』を題材にした二つの交流企画。
両企画とも新規のイラストの投稿が止まって過疎化しており、企画主を含めた投稿者のアカウント削除等により全盛期に比べ投稿イラスト数が減ってしまっている。