概要
企業や家庭で使用した後の排水や、雨水・雪解け水を集めて処理場に送るための配管設備。都市の衛生を守るために欠かせない。
臭い・暗い・汚いのいわゆる3Kのイメージがつきまとう。
また網目状に張り巡らされていることより、映画やゲームでは秘密の通路やダンジョンとしても頻繁に登場する。
下水道は収集方法によって、汚水と雨水を同じ管路で集めてまとめて処理する「合流式」と別々に集め雨水はそのまま、汚水は浄化処理して放流する「分流式」がある。
日本の下水道
運営は各自治体によって賄われている。「民間活力の活用」が叫ばれる近年では、下水道の運営を外資系企業に一括委託しているケースもあるが、下水道法の規定で自治体が民間に施設を売却することはできない。
日本では江戸時代の大坂に設置された「太閤下水」が最初の下水道と言われる。
戦前は上水道の整備すら十分でなかったことと人間の糞尿を肥料(下肥)として用いていたので下水道の整備が遅れたが、1922年(大正11年)に初の下水処理場の三河島汚水処分場が稼働を開始。以降大都市圏で徐々に整備が進められ、高度経済成長期に一気に整備が進んだ。が、この時期に水洗便所が普及したのに下肥の利用が廃れ、下水道整備が追いつかず水質汚染が深刻な問題となった。その後は中小都市や一部の農村地帯でも整備が進んでいる。
日本の下水道普及率は79.3%だが普及の度合いは地域によって極端に差があり、東京23区をはじめ普及率がほぼ100%の地域も多い一方、徳島県の普及率は18.1%に過ぎない。下水道法第11条の3の規定では、公共下水道が整備され下水が処理できる区域になった日から3年以内に汲み取り便所を水洗便所に改造し、下水道へ接続しなければならない。
海外の下水道
下水道自体は古くからあり、紀元前5000年頃 メソポタミアの都市国家群の遺跡で排水溝が、紀元前3000年頃~紀元前2000年頃 モヘンジョダロ遺跡で水洗便所と排水溝でつながった「地下浸透桝」や沈殿池を備える「下水道設備」が見つかっている。
紀元前600年頃にはローマで築造されている。
1370年にフランス・パリに本格的な下水道が築造され、後に1740年頃に環状大下水道が完成しヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』(1862年)の舞台になったり、1832年に市全体に整備される際に電話ケーブルや圧縮空気管、交通信号ケーブルなども収めた「共同溝」を初めて築造された。(参考)
1914年にはイギリスに活性汚泥法(微生物を用いた下水の近代的処理方法)の最初の処理場ができている。