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概要編集

日本国有鉄道高森線を引き継いだ第三セクターの鉄道会社である。1986年4月1日開業。熊本県阿蘇郡南阿蘇村にあるJR豊肥本線立野駅から熊本県阿蘇郡高森町の高森駅までの17.7kmの路線、高森線を営業している。


定期運行の普通列車はすべて立野~高森間の通し運転でワンマン運転を実施。1時間あたり1本程度運行。また、3月から11月までの土日祝日にトロッコ列車「ゆうすげ号」を運転。


高森線は阿蘇カルデラの南部を走り、車窓からは阿蘇山と外輪山を一望できるローカル線である。元々は立野駅から高森・高千穂を経由して延岡駅に至る路線の一部として建設されたもので、立野〜高森駅間は高森線、高千穂〜延岡間は高千穂線(後の高千穂鉄道)として営業していた。その後1973年に高森〜高千穂間の工事が始まったが、高森トンネルの掘削中に出水事故が発生。1980年になって同区間の工事は中止となった。なお、出水事故を起こしたトンネルは後に高森町によって"高森湧水トンネル公園"として整備され、現在は町を代表する観光地の1つとなっている。


熊本地震被災と復旧編集

2016年に発生した平成28年熊本地震では震源域に近いこともあり、激震による土砂崩れで線路の一部が土砂で埋まったほか、鉄橋の梁や橋脚、トンネルの坑道が歪み変形するなどの甚大な被害を受け、全線で運休。


完全復旧には第一白川橋梁の架け替えや立野橋梁の補修、犀角山トンネルの撤去等で60億~70億円に上る復旧資金が必要と見積もられ、また仮に資金が確保できても現場は急峻なカルデラの谷や深い山の中という地形であり、長期の難工事が予想&復旧までには5年近くかかると見込まれた。とりあえず被害の少なかった中松駅~高森駅間、7.1kmは同年7月31日に運転を再開した。


東日本大震災時の鉄道復旧における経験から、赤字の鉄道事業者が大規模な災害で被災した場合に実質的に国が復旧費のほとんどを負担して、鉄道事業者の負担をなくす新制度が成立しており、南阿蘇鉄道はこの特例を適用して再建する事となった。

2018年3月に不通区間の本格的な復旧工事に着工、2023年7月15日に全線再開と同時に、第三セクター転換前に行われていた豊肥本線の乗り入れも朝の2往復で開始した(立野駅~肥後大津駅間)。


主な車両たち編集

普通列車編集

  • MT-2000形(MT-2000A形)

三セク転換時に3両が導入された新潟鉄工製のいわゆるNDCシリーズの最初期のタイプ。車内はセミクロスシート。

経年に伴い変速機や台車交換2軸駆動化などの更新工事を受け、形式もMT-2000A形に変更された。下回りこそ更新されているものの地震災害により走行距離が減少したこともあり、不本意な理由ながらも1980年代に製造されたNDCシリーズ初期車が約40年間活躍していた。

MT-2003AはMT-4000形の導入に伴い2024年2月に廃車となった。


  • MT-3000形

MT-3001・MT-3010の2両。前車は1993年、後者は1998年に製造された。

足回りこそ共通であるが車体形状が大きく異なっており、MT-3001は非貫通のデザイン(秋田内陸縦貫鉄道AN-8900形や高千穂鉄道TR-300形を両運転台にしたような形)に対して、MT-3010はレトロ調の貫通型箱型車体となった。

MT-3001はセミクロスであったがロングシート化、MT-3010はクロスシート車である。

MT-3001はMT-4000形の導入に伴い2024年2月に廃車となった。


  • MT-4000形

JR豊肥本線への乗り入れに対応した、MT-2000A形及びMT-3001代替用の新造車。

新潟トランシス製のNDCシリーズで、2023年に運行開始した。車内はロングシート。


MT-4001・MT-4002の2両が2023年より、MT-4003・MT-4004の2両が2024年よりそれぞれ営業入り。

導入にあたり事前の公式発表はなく、更に製造から搬入までの目撃情報が皆無だった(試運転開始は2022年12月)ため、その秘匿性は鉄道ファンの間で話題となった。


客車列車編集

  • DB16形

トロッコ列車の牽引機である北陸重機製小型DL2両が在籍。基本的に客車を挟んだプッシュプルで運用する。

なおDB16形の導入前は、DB10形という元国鉄の貨車移動機が車籍登録されて運用されていたが、性能不足や経年などの問題もあり2006年にDB16形と交代。引退したDB10形は平成筑豊鉄道(門司港レトロ観光線)へ売却された。


  • トラ700形・TORA200形

トロッコ列車に使用される客車。元々はトラ700形2両の編成であったが、DLの更新による牽引力増加に伴いTORA200形が増備され現在は3両で運行されている。


小ネタ編集

駅名編集

「南阿蘇水の生まれる里白水高原」

みなみあそ みずのうまれるさと はくすいこうげん


読み仮名が22文字あり、開業当時は鹿島臨海鉄道「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前」駅と並んで日本一長い名であった。あまりに駅名が長いため、案内やきっぷなどでは「白水高原」駅と省略されて表記されている。

(※2024年現在は富山地方鉄道富山軌道線呉羽線の「トヨタモビリティ富山 Gスクエア五福前(五福末広町)停留場」が読み仮名32文字で最大)


見晴台駅の自販機編集

熊本地震の復興支援も兼ねて、2016〜2017年に見晴台駅や沿線で「午後の紅茶」のCMが撮影された。出演は上白石萌歌井之脇海など。CM撮影時は見晴台駅ホームに自動販売機が設置されたが、駅が名所になったことから後に一般販売用の自販機が置かれた。


未成駅編集

実はこの南阿蘇鉄道には、高森〜高千穂間の未成線区間以外にも、実現しなかった未成駅が存在する。

その名は「小池水源駅(仮称)」。2009年に開業予定で中松〜阿蘇白川間に存在する。現地の写真や映像ではあともう少しで開業しかけた駅という感じである。開業に至らなかった理由は諸説あるが、特に有力とされている説は、

  • 駅の建設予定地の勾配が基準値を大幅にオーバーしていた。
  • 近くのビール園が閉園したから。

の2つである。

仮にここが開業していれば、仮称どおり小池水源の最寄り駅となり、駅周辺には住宅地が存在するので、観光や地域の足として有力となるかもしれない。


このほかに全線運転再開時に見晴台〜高森間の高森湧水トンネル公園付近(高森線延伸時には現在の高森湧水トンネル公園の入口付近に高森駅を移転する計画だった)と立野~長陽間の立野ダム付近に新駅を建設する計画があったがいずれも見送られている。


ONEPIECE編集

熊本市出身の漫画家・尾田栄一郎氏が寄贈した災害復興用寄付金を元にした「ONE PIECE熊本復興プロジェクト」により、「麦わらの一味」のフランキー像が高森駅前に設置されている。

また、2016年11月27日から2017年3月5日までMT-2000A形1両にONEPIECEのラッピングを施し土、日、祝日に3往復運行し、ルフィによる車内アナウンスが行われた。

2023年(令和5年)7月22日からは、南阿蘇鉄道の全線運転再開を記念してMT-3010の内外装を「サウザンドサニー号」をモチーフに装飾した「サニー号トレイン」として運行している。

運行当初は木曜日から日曜日までと祝日に立野~高森間を1日3往復運行だったが、2024年改正により金曜日から日曜日までと祝日に単行で立野~高森間を1日1往復(全席自由席・予約不要)、土曜日・日曜日と祝日にトロッコ列車と併結して立野~高森間を1日1往復(全席指定席・要予約)運行している。



駅一覧編集

駅名乗り換え路線備考
立野JR九州豊肥本線
長陽
加勢
阿蘇下田城温泉を併設している
南阿蘇水の生まれる里白水高原
中松
阿蘇白川
南阿蘇白川水源
見晴台
高森2023年4月に完成した新駅舎に本社が入居する

関連項目編集

鉄道 第三セクター(第3セクター) 高森線 熊本県 気動車(ディーゼルカー)

2000形 3000形 3010形 4000形


外部リンク編集

南阿蘇鉄道

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