ウズメ「残念だったわね、女には武器があるのよ。あんた達には絶対に出来ない武器がね。いずれ必ずその武器は、あんた達を滅ぼすことになるわよ」
概要
後述の漫画少年版を原作に、『COM』1967年1月号から11月号まで掲載された。
弥生時代末期の日本を舞台に、古事記と魏志倭人伝を組み合わせた話になっている。内容は当時歴史学会で波紋を呼んでいた騎馬民族征服王朝説(注:現在の学説では完全に否定されている)を取り入れている。また邪馬台国については九州(北九州)説を採用しているのが推測される。
1978年に東宝との合作という形で実写映画化され、以後ラジオドラマ、TVアニメ版でも第1話として放送された(アニメでは全4話)。
あらすじ
時は3世紀中盤、弥生時代末期。九州の小国クマソ国では、美しい娘ヒナクが病に倒れていた。ヒナクの夫である猟師ウラジはヒナクを助けるべく火の鳥の生き血を奪おうとするも、返り討ちにされて死亡。ヒナクも余命いくばくもない窮地に立たされていた。しかし、浜辺に流れ着いた他国の医者・グズリの治療により、ヒナクは無事に息を吹き返す。やがてヒナクはグズリと恋仲となり、ヒナクの弟であるナギもそれを祝福していた。
だがグズリは隣国ヤマタイ国の差し向けたスパイであった。グズリとヒナクの結婚式にクマソ中が浮かれる中、ヤマタイ国の将軍猿田彦は手勢を率いて強襲。大虐殺によりヒナクを除くクマソ国民は虐殺され、ナギは単身立ち向かうも猿田彦に捕らえられてしまう。しかし、その弓術を見込んだ猿田彦はナギをヤマタイに連れ帰ることを決め、ナギは護送される。
ヤマタイ国の女王ヒミコは不老長生の火の鳥の生き血を求め、クマソを前線基地にしようとしていたのだ。猿田彦はナギの手で火の鳥を仕留めさせようと目論み、ナギに戦術を叩き込む。ナギは猿田彦に教えを乞うフリをしてヒミコの暗殺計画を練る。
一方、海の彼方からは第三勢力「高天原一族」が密かに侵略の魔手を伸ばしていた…。
登場人物
以下演は特撮映画版、CVはTVアニメ版
主要人物
主人公。優れた弓矢の腕を持つクマソの少年。
ヤマタイ国の将軍。ヒミコに忠誠を誓い、クマソ国を滅亡させた張本人。ナギの卑弥呼暗殺が失敗したことにより、ヒミコから暗殺の首謀者とされて蜂の室に閉じ込められたため、鼻が巨大化した。
ヤマタイ国
ヤマタイ国の女王。ヒステリックな老女。
火の鳥の生き血を求めて専横を重ねている。
弟の名前からも分かる通り天照大神が裏モチーフ。
ヒミコの弟。老害と化した姉を見下し、命令を聞こうともしない。
猿田彦の処刑を諫言したため狂気に駆られた姉に両目を潰され、「この国は滅ぶ」と言い残して国外追放となる。
クマソ国
猿田彦の部下で医者。素性を隠して漂流民のふりをしてクマソに忍び込み、結婚式の最中に合図を出しクマソ国に手勢を進行させる。
ヒナクへの愛情は本物だったため、猿田彦に懇願して助命を乞い、クマソを再建させるべく主に夜に頑張る。
- ヒナク(演:大原麗子、CV:玉川紗己子)
ナギの姉(実姉か義姉かは不明)。破傷風で明日を知れぬ命だったがグズリに救われた。
クマソ滅亡後はグズリを憎悪していたが、命を懸けて自分を救ったグズリの愛を受け、クマソを再建させようとする。
ヤマタイ国を追い払うべく火の鳥が起こした地殻変動により子供3人を失い、やがて狂気に駆られていく。
ヒナクの先夫。村一番の狩人だったが、妻を助けるために火の鳥に挑んで焼死。
グズリとヒナクが最初に産んだ子。岸壁の中で家族や動物たちと共に閉じ込められていたが、まだ見ぬ世界を見るべく岸壁を踏破し、やがて熊襲一族の始祖となる。そして物語は『ヤマト編』へと続いていく。
- カマムシ(演:加藤武、CV:飯塚昭三)
クマソ国王。石頭で粗暴な性格。猿田彦を迎え撃つも戦死。
マツロ国
マツロ国一の天才弓士。射矢に矢を当てるほどの腕を見込まれてヒミコに仕えるが、当人は火の鳥を討つという名誉にしか興味がないニヒルな男。
マツロ国の踊り子。非常に美人であるが、厚化粧でブスのふりをして凌辱を免れた。
猿田彦の助命を乞い、彼と夫婦になる。最終的なこの物語の勝者とも言えるが、それは同時に何千年も続く猿田一族の悲哀の始まりでもあった。
ちなみに漫画少年版だと最初から美人。
高天原一族
大陸から来た馬賊高天原一族の長。文武に優れた冷酷な支配者で、逆らう者は全て虐殺する。己が国を作るためヤマタイ国へ侵攻をかけた。中途にあったマツロ国も粉砕した。火の鳥には何ら興味を示さないリアリスト。大人の事情ゆえかアニメでは単に「族長」としか呼ばれない。最終的にヤマタイ国を乗っ取り(傀儡の女王をまずはたてる事をほのめかしている)、「ヤマト王朝」の始祖になることが示唆されている。
- イサハヤ
ニニギが飼っている金色の鳶。戯れにニニギがナギに嗾けるも、返り討ちにされ溺死。
アニメでは流石にちょっとモチーフがあまりにもわかりやすかったからか、或いは尺の都合かカットされた。
漫画少年版
『火の鳥』の真の初出であり、『漫画少年』(学童社)1954年7月号から1955年5月号まで掲載されている。
基本的な話の流れはCOM版と大差がないが、ナギに妹イザ・ナミがいること、命を落としそうなのがナギの父になっていること(結局間に合わず村人に食われる)、ナギたちが火の鳥の血を飲み不老不死になることなど、設定は大きく異なる。
天岩戸にヒミコが逃げ込む所で雑誌は廃刊になり、未完となる。
『漫画少年』版でのフレンドリーでコミカルな火の鳥像は続編の『火の鳥 エジプト・ギリシャ・ローマ編』にも受け継がれる。また火の鳥の取り巻き的な立ち位置である兎のポポ、亀のノロ、猿のヨタは『エジプト編』にそのまま続投となった(ヨタは地中海沿岸に猿が生息していないので狐にされたが)。
関連項目
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