概要
羽衣伝説を下敷きにしたSF短編。
全編が歌舞伎の舞台を正面から写した背景で描かれ、1ページに4コマのみ。そのセットから捌けたキャラクターは描写されず台詞のみになる。漫画記号も控えめであり、手塚の愛した演劇を再現したような構成で進む。
あらすじ
平安時代の日本。漁師の男が松の枝にかかった美しいウス衣を見つけ、返してほしいと訴えた持ち主の女と三年の約束で夫婦となる──だが女は羽衣伝説の天女ではなく、1500年後の世界から来た未来人だった。
登場人物
ズク─漁師の男。物語後半で人手に渡ってしまった妻のウス衣を取り返ししに行くが……
おとき─未来に起きた苛烈な戦争の戦火を火の鳥の力で逃れてきた未来人。ズクと夫婦になり、一子(娘)をもうける。その正体は未完に終わったCOM版望郷編の時子。
まぼろしのCOM掲載版
雑誌掲載版では二人の子がおときの放射線障害によって奇形を持って産まれ、母親の手によって殺されそうになる、という展開となっていた。
手塚治虫の反戦の信念から創造されたストーリーではあるものの、やはりデリケートな問題であるとして本人により改稿されたため単行本では手にかけた理由をタイムパラドックスへの懸念としている。
その後のおとき=時子や子供の物語がCOMにて望郷編として連載されたが、雑誌休刊によって未完となった。単行本版では舞台の幕が閉じた後、おときと娘の上演に用いられた人形が真っ暗な背景の中で無造作に転がっている一枚絵が描かれる形で完結しており、暗く、死の匂いが強いともとれるエンディングである。
関連タグ
COM版羽衣編 → COM版望郷編(未完)