概要
天界、仙界に住まうとされる天女と地上の人間の交流を描いた伝説。
日本以外にも神仙思想のある東アジア一帯には似たような話が伝わっており、一説には宇宙人(天女)が地球に来ていたのではないかなどという解釈もある。
非常に大雑把なあらすじ
- ある日、空から天女が下りて来て、水浴びをしようとした。羽衣を木の枝にかけて裸になった天女は水浴びを楽しむ。
- しかしそこに地上人の男が現れ、美しい羽衣を見つけて持って行ってしまう。
- 水浴びを終えた天女は服を着るが羽衣が無い事に気付く。あれがないと空に帰れないと探し回り、男と出会う。
- 天女は返すよう頼むが男は「そんなわけねーだろw」と信じてもらえない。
と、ここまでの前振りはだいたいどこの説話でも同じだが、以下2パターン存在する。
パターン① その場で解決する
男に信じてもらうために天女は天界の舞を見せる。
男はその美しさに心奪われ、改心して羽衣を返す。
こうして天女は空に帰って行くのでした、めでたしめでたし。
一番オーソドックスな話の展開であり、『ドラえもん』の「しずちゃんのはごろも」という回がこのパターンを踏襲している。
パターン② 天女が男と夫婦になる
あんまりしつこく返せ返せと天女が言ってくるので、男は羽衣を隠してしまう。
そのうちに二人は仲良くなって、天に帰るのを諦めた天女は男と結婚する。
そして二人は幸せな夫婦となったのだが、そのうち天女が羽衣を見つけてしまった。
男は天女の気持ちを汲んで羽衣を返し、天女は空に帰って行った。
日本昔話恒例の異類婚姻譚パターン。天女が実は渡り鳥(ハクチョウなど)の化身というのもベタ。『火の鳥 羽衣編』はこれに該当する。同作では天女の正体は未来人であり、タイムパラドックスを防ぐために未来の羽衣を取り返そうとした話になっている。
また、一部地域では男も付いていくとか二人の間にできた子まで一緒に天に昇るというハッピーエンドパターンも。変わり種では「天女の父親である神様が『人間などと結ばれてはイカン』と怒鳴り込んできたため、男が艱難辛苦を乗り越え、神様に認められて結ばれる」という、なんかこれもどこかで聞いたようなパターンになっていることもある。
更に、天界へ帰っていく天女が男に「私に会いたければ、千足の草鞋を地中に埋めてくれ」と言ったので、そこから伸びた竹を伝って天界に行くも、天女の父親の策略によって天の川が出来てしまい、これが七夕の由来につながるという話もある。
パターン③ 地上にとどまり続ける
結局天女は羽衣を奪還できず放浪する。
そこで老夫婦の家で世話になり、酒造技術を伝える。
それに目がくらんだ老夫婦は天女を追い出したため、また旅に出た天女は別の村で暮らすようになり、土着神トヨウケビメとなる。
かなりマイナーなパターン。話としても盛り上がりに欠ける為絵本などで選ばれることは少ない。
『パーマン』の「パー子羽衣伝説」はこれに近いが、同作に登場する老人は態度は悪いが善人で義理堅かったので、パー子(天女)の正体が星野スミレだと知っても他人に口を滑らす可能性が低いということでバードマンから見逃され、「地球人には素晴らしい心を持つ人もいるんだなあ」と感心されるほどであった。