新井素子
あらいもとこ
両祖父、両親が講談社に勤めており、幼少期から多数の本に囲まれて育った。
高校2年生のころ、第一回「奇想天外SF新人賞」に応募した『あたしの中の……』が佳作入選。作家デビューを果たす。
(新井自身もファンだった)審査員の星新一が絶賛し、最優秀賞にも推されたほどであったが、その当時としてはかなり斬新であった文体から他の審査員には反対されたため佳作となったというエピソードがある。なお、全くの偶然ではあるが、星と新井の父は東京大学農学部の同級生でもあった。
特に初期は、星新一などに影響されたスタンダードな'70年代型SFが多く、題材は身近なもの、事柄に起因されるスタイルである。
むしろ特徴的であるのは、徹底した口語体を採用した文体である。当時の中高生の話し言葉を元にした一人称のそれはかなり野心的であり、多くの作家や作品に影響を与えた。そのため以後の中高生向け小説――所謂ライトノベル――の方向性の一つを確立したためライトノベルの元祖といわれることも多い。少なくとも、氷室冴子、久美沙織、笹本祐一、火浦功等と並ぶ勃興期のライトノベルの牽引役の1人で有ることは間違いないといえる。
SFやジュブナイルの印象が強いが、エッセイも多数執筆しているほか、コメディからサイコホラーまで幅広いジャンルを手がける。
大のぬいぐるみ愛好者としても知られる。2015年時点で4000体以上(本人は「4000を超えたあたりから数えていないので、4が5か6になっているかも」と言及している)ぬいぐるみを所有しており、動物ものを中心にキャラクターものやバクテリアのような変わったものまで多数コレクションしている。ぬいぐるみのことは「ぬい(ヌイ)」と表現しており、それぞれ名前を付けているという。
私生活では25歳の時に大学時代の同期生と結婚。自身の体験を元にした小説『結婚物語』はテレビドラマにもなっている。また、不妊治療に取り組んでいた時期があり、自作においても「産むこと」についてモチーフとしたものが多数見受けられる。