概要
四輪車の駆動方式。四輪駆動。四輪車両の前輪、後輪の両方を駆動する(総輪駆動(AWD))。読み方は「よんだぶりゅでぃー」。
主にオフロードでの走破性を求められるSUV、建設現場や農林業で用いられるトラック(ピックアップトラック、軽トラックを含む)、強大なエンジンのトルクを路面に伝える必要があるハイパワー・ハイスピード志向のスポーツカーなどに採用される。2WDに比べて機構を追加する必要があるため車両重量が重く、さらに駆動損失も増えるため燃費が悪い傾向にある。またオフロードでは効果を発揮する四輪駆動だが、機構によっては舗装道での路面追従性や乗り心地に悪影響を与えることもある。
日本車では多くの乗用車に4WDのグレードが設定されている(いわゆる「生活四駆」)。これは日本の北海道や日本海側の豪雪地帯では、凍結した坂道や積雪路でスタックしにくいとして四輪駆動車の需要が大きいためである。もっとも、除雪の行き届いた圧雪路や平坦な凍結路であればスタッドレスタイヤを履いた前輪駆動車でも十分であり、日本の雪国でも(後輪駆動のタクシーやバスを含め)多くの2WD車が走っている。
欧州車ではクロスオーバーSUVでも2WD限定の車種が多くなってきたが、日本車やアメ車では「最低地上高が高く、雪道で走りやすい」車としてクロスオーバー車を求めるニーズも大きいことから、2WD専用のクロスオーバー車は少ない。雪国以外でも「SUVは4WDに限る」「2WDじゃ格好がつかない」という信仰が根強いことも一因である。
また、全国規模で車両の移管を行うことがある日本のレンタカーでは、雪国以外でも4WD車が使われていることがある。
種類
4WDを採用している自動車を駆動方式で分けると、大きく分けて次の3タイプに分けられる。
- 通常は2WDで走行し、必要なときだけドライバーが手動で4WDに切り替える「パートタイム」方式
- 走行している間は常に4輪を駆動する「フルタイム」方式
- 前輪が滑った時に駆動力を補うため後輪を動かす「スタンバイ」方式
パートタイム4WDはもっとも古典的な様式である。オフロードでは威力を発揮する駆動方式であるが、乾燥した舗装路では前後輪の回転差を吸収できず、ギクシャクとした動きになりタイヤや駆動系を痛める上、挙動の不安定さから転倒などの事故を引き起こす原因にもなる(タイトコーナーブレーキング現象)ので、オンロードでは2WDに切り替えなくてはいけない。オフロードでも前後輪を対角線に結んだ2輪が空転してしまうと駆動力を失う(対角スタック)という欠点があるが、最近の乗用モデル(もはやジムニーとハイラックスくらいしかないが)ではブレーキとエンジン出力を自動的にコントロールすることでタイヤのトラクションを回復させる「ブレーキLSDトラクションコントロール」が付いている。
フルタイム4WDは、前後輪の回転差を吸収するセンターデフを設け、タイトコーナーブレーキング現象を解消している。状況によっては全車軸と後車軸を直結することもでき、舗装路/砂利道/雪道/凍結路/泥濘地...などなどいかなる路面状況も苦にしない駆動形式であるが、駆動損失の大きさのため燃費も最も悪い。
スタンバイ方式4WDは、どこかのタイヤが滑ってから駆動力が四輪に伝達されるので走破性はそれほど高くないが、フルタイム方式に比べてコストや燃費面での不利は少なく、日本の一般的な乗用車(クロスオーバーSUV含む)に設定される4WDシステムの主流である。それでも機構を追加する必要があるため、車両価格は大衆車レベルでも2WDより10~20万円ほど高く設定される。
このほか、近年は路面状況に応じて前後輪のトルクをコンピュータ制御で変動させる4WDシステム(アクティブトルクスプリット式)を採用する車種が増加している。
上記はいずれも単一の動力源から動力伝達機構で駆動力を分岐させる駆動方式であるが、前後にエンジンを搭載して前後輪を駆動する動力分散型の「ツインエンジン車」も改造車両などで見かけられる。市販車のツインエンジン車としてはシトロエン・2CV 4x4サハラがほとんど唯一の存在である。前後のエンジンを関連させているのはスロットルのみで、前後のエンジンを別々に駆動でき、吸排気系や燃料タンクもそれぞれ別のものを搭載している。走破性は卓越したものがあったが、コスト高となり、通常の2CVの約2倍の値段であった。
エンジン時代には主流になりえなかった動力分散型4WDだが、近年、ハイブリッドカーを中心に、メインの駆動輪(主に前輪)とは別にサブの駆動輪(主に後輪)にモーターを積む電動4WDの採用が広がっている。モーターはトルク配分の自由度が大きいためスタンバイ式のように後輪が滑ったときにトルク配分したり、アクティブトルクスプリット式のようにトルク変動させることもできる。
歴史
この種の自動車は早くも19世紀には登場しているが、日本で量産されたのは日本陸軍が軍用車として運用した九五式小型乗用車(くろがね四起)が最初である。
現在の隆盛はアメリカ陸軍が運用したジープに端を発し、第二次世界大戦後、各国で同様の機構を用い不整地走行に重点を置いた、現在SUVと言われる車種(ランドローバー、ランドクルーザー等)が各国で開発され民間にも受け入れられた。
その後1972年に富士重工業が「レオーネエステートバン4WD」を発売、前輪駆動の乗用車にパートタイム4WD機構を追加することでオフロードとオンロードの走行性能を一定水準で両立させることに成功し、今日クロスオーバーSUVと言われるジャンルの先駆けとなった。1980年代にはアウディが独自開発のセンターデフを搭載したフルタイム4WD車「クワトロ」で「曲がりにくい」という4WDの課題を解決、WRCでの活躍が印象付けられ、以降四輪駆動の乗用車が一般化することとなった。