概要
トヨタ自動車が展開している高級車ブランド。2016年現在世界65か国で展開を行っている。
沿革
レクサスブランド設立の背景には、当時の北米市場での高級車事情が深く関係している。
北米の高級車市場は、キャデラックやリンカーンといった老舗ブランドの寡占状態にあり、たとえ品質が悪くともブランドの名の下に許容されていた。しかし、メーカー側の横柄な態度に対し次第に不満を募らせる顧客が増え、富裕層の中にも威圧的な旧来の高級車を避ける傾向が見られるようになった。その上、当時の若年層にとって旧来の高級車は「古臭いクルマ」としか映らなかった。
事前の市場調査で、当時の北米の高級車事情を把握したトヨタは、伝統や威厳に依存していた旧来の保守的な高級車の概念を否定し、極めて「機能的」であり「高品質」な顧客の希望に耐えうるブランドの設立を決断した。
それが今日のレクサスである。
つまり「パッと見のクオリティの高さ」と「信頼性」と言う、トヨタ車の得意分野を武器に殴り込んだ、トヨタ車として王道ど真ん中の高級車ブランドというわけである。
もっともそれ故、後年の日本凱旋導入で「クソ高いのにトヨタブランド車と何が違うの?」と言われたり米国やTopGearでも「(質はいいが、トヨタブランド共々)退屈」と言われ、後に米国で若者ウケの悪さに苦慮する(→サイオンの項目を参照)ことになるのだが・・・
当時、自動車業界では「日本車は丈夫だが、所詮は安物の大衆車」という認識が強く、日本車が高級車市場に参入する余地はないとされていた。しかしトヨタは約5年間という長い開発期間を経て、1989年にレクサスブランドを発足、初代LS、ESの製造・販売を開始した。
展開を開始するや否や、トヨタの目論見は見事に的中しLS、ESは一躍大ヒット商品となった。特にLSの高品質は、メルセデス・ベンツやBMWなどのドイツの高級車メーカーにも大きな衝撃を与えたと言われ、後にフォルクスワーゲンなどの大衆車メーカーが高級車市場に参入するきっかけを作った。
その後、北米を中心に順調に実績を残し、2015年のグローバル販売台数は約65万2,000台と、3年連続で過去最高実績を更新した。高級車ブランドとしては世界第4位である。
また主要市場である北米における2015年の高級車のブランド別販売台数はBMWに次ぐ2位であり、米誌のコンシューマー・レポートの調査によるブランド別の信頼度順位では1位を獲得した。
日本国内での展開
当初、日本国内でのブランド展開の予定はなく、レクサスとして販売されている車種はトヨタブランドの別名称で販売されていた。その後、2005年から日本国内展開を開始した。しかし、当初の日本国内での販売は芳しくなかった。
その理由は、
- 高級車市場におけるドイツ車信仰が依然として根強いこと。例えばメルセデスCクラスよりレクサスISの方が高かったことから、「所詮はトヨタ車なのに」という抵抗感があった。
- アフターサービス拠点の少なさ。「何かあったら最悪全国津々浦々にあるトヨタブランドディーラーで・・・」と考える人も少なくはないだろう。だが、「国産全メーカー対応」を謳っているにもかかわらず、(レクサス店を運営していない)トヨタ店が「レクサスお断り」と明言する事態まで存在するのだ。
- 原則値引きなしのワンプライス販売
- 直接顧客先に出向いて営業を行わない販売方法
- 原則タクシー用での販売拒否
- 日本市場では、トヨタブランドで発売されたレクサス車がウィンダム、アルテッツァ、ソアラ、セルシオなどとして既に地位を確立しており、LS、ISなどの車名は「わかりにくい」と不評だった
などから、「レクサスというブランドであっても、所詮はトヨタ車」という見方が特に根強く、展開初期の販売不振も手伝って、「レクサスの日本投入は失敗」と評価されることもあった。
しかしその後、
- モータースポーツへの積極的な関与・・・スーパーGTのGT500クラスの参戦をトヨタからレクサス名義へ変更した。
- 国産車初の4000万円級スーパーカー、LFAの開発・販売・
- スピンドルグリルによる強烈な個性の打ち出しとトヨタブランドとの差別化
- 仮想カンパニー「レクサス・インターナショナル」創設・・・トヨタブランドと独立した判断を迅速に下せるようにした。
- ブランド専用車の発売・・・トヨタブランド車の設計をベースとするレクサス車だけでなく、レクサス独自の設計を持つ車両(LS、RC、LCなど)も多く発売した。
- レクサス特有の手厚いサービスの展開・・・5年・10万キロ保証、レクサスラウンジの開放、レクサスオーナーデスク(車内で通信してデスクを呼び出せば、近くのオススメ店や駐車場などを案内してくれる)など
などのブランド力向上のための努力が功を奏し、2015年には日本国内販売台数は約48,000台と2005年の国内展開開始以来過去最高を更新した。
なお、2022年現在レクサスのラインナップにワゴンは一台もない(アルテッツァジータをISスポーツクロスとして販売したのみ)。
デザイン
レクサスはブランド独自のデザイン基本理念として、「L-finesse(エルフィネス)」というキーワードを掲げている。「L」は「Leading edge=先鋭」、「finesse」は「人間の感性や巧みの技の精妙」を意味し、先端技術と日本的美意識の融和を意識しシンプルでありながら深みのあるデザインを目指すというものである。
この理念は展開初期からレクサスのデザイン方針として順守された。
しかし、この「L-finesse」という理念はあまりにも抽象的であり、「いちいち説明してもらわなければ理解できず、わかりづらい」という批判があった他、それまでのレクサスのデザインには「高級車らしい押し出し感が弱い」「特徴がなく退屈」「トヨタブランド車との違いが分かりにくい」などの評価がついて回った。この退屈と評されるデザインが、かつての日本での販売不振の一因になっていた。
これらの反省点を踏まえ、BMWの「キドニーグリル」やアウディの「シングルフレームグリル」のように個性的かつ一目でブランドが分かるような全車種共通のデザインアイコンを導入する方針への転換が図られた。
そこで、HSなどの一部の車種で採用されていた、逆台形のアッパーグリルと台形のロアグリルを繋げた「スピンドル形状」(スピンドルとは紡績機の糸を巻き取る軸(紡錘)の意)のフロントマスクをベースとし、さらに存在感を強めたデザインにリファインされた「スピンドルグリル」が2012年発売の4代目GSから採用され、以後に発売・マイナーチェンジされる他車種にも順次展開されるようになった。その後、グリルレス化が可能な電気自動車のRZ以降はこのデザインコンセプトを発展させた「スピンドルボディ」というデザインアイコンを採用するようになっている(5代目RX、2代目LMにも採用)。
なお、トヨタの源流は繊維産業にあるのだが、そのこととこのグリルデザインについて、トヨタは関係性を否定している。
『F』
LFAを頂点とする、レクサス専用のスポーツシリーズの総称。トヨタがモータースポーツ部門の拠点としている、富士スピードウェイに由来する。
ライトチューンの『F SPORT』をエントリーモデルとし、レクサス車をベースに新設計した『F』、そして頂点に限定生産のLFAを据えている。
『F SPORT』はLX、GX、LM、LC、SC以外のほとんどのレクサス車に用意されているが、『F』はIS F、RC F、GS Fの3車種が発売されたに留まる。
これまでにレクサスが開発したクーペ及び『F』以上のスポーツカーはすべて自然吸気エンジン+FRでターボエンジンやMR/4WDモデルは無く、基本的にはサーキットでの速さよりも官能性や走る楽しさを重視している。
この点ライバルのNSXやGT-Rが、ターボ+4WDで武装しているのとは対照的である。
なおこのピラミッドの形式は、2017年創設のトヨタのスポーツブランド『GR』でも踏襲されている(ライトチューンの『GR SPORT』、専用設計・サーキットモデルの『GR』、限定生産の『GRMN』。2019年のスープラ登場以降は構造が変わり、『GR SPORT』はGR以外が開発した車種のライトチューン、その上にGRが直接開発に関与した『GRグローバルモデル』、その中から限定生産のフルチューンが『GRMN』になっている)。
余談であるがトヨタブランド車において「F」または「F●」というグレード名がついた場合、本項目とは真逆に最廉価グレードとなるケースが間々見受けられる。(例:カリーナED、プレミオ、ヴィッツ/プラッツ(以上「F」)、トレノ(FZ)など)
発売された主な車種
セダン・ハッチバック
4代目LS
4代目GS
初代IS
2代目IS
CTリア
SUV
3代目LX前期型
- GX(初代・2代目ランドクルーザープラド、3代目ランドクルーザー250)
クロスオーバーSUV
クーペ
初代SC
2代目SC
RC F
ミニバン
- LM(アルファードロイヤルラウンジ・特装車扱い)