日産リーフ
りーふ
既存の車種の派生車種ではない(=専用設計の)普通車サイズの量販電気自動車として、2010年に初代モデルのZE0型が発売された。2012年にマイナーチェンジが行われ(AZE0型)、より小型化した上でバッテリー容量を増やして航続距離を延ばす改良がされた。
まだ充電インフラが十分整っていなかった時代の電気自動車としては堅調な売り上げを見せ、2014年に世界累計販売10万台、2015年に20万台を達成した。
2017年にフルモデルチェンジされ、2代目モデルのZE1型が登場。2019年には大容量バッテリー版の「リーフe+」も発売された。
新鋭テスラやEV転向してくる欧州メーカー・格安をウリにする中国メーカーたちの猛威に晒されながらも2019年に世界累計販売40万台、2023年に65万台を突破した。
日産が2016年から量産化しているシリーズ式ハイブリッドシステム『e-POWER』には、バッテリー・モーター・回生ブレーキの制御などにおいてリーフの開発で培われたノウハウがふんだんに使われている。その意味では本車は市場での存在感こそ大きく無いものの、試金石として現在の日産の電動車両の基礎を作った偉大な車でもある。
メカニズム
動力源のモーターの特性から、無変速システムのFFレイアウトである。
電池にはリチウムイオン二次電池を使用。
満充電時の走行距離/バッテリー容量は(JC08モードによるカタログ値にはなるが)それぞれ
- 200km/24kWh(ZE0)
- 280km/30kWh(AZE0)
- 400km/40kWh(ZE1)
- 570km/62kWh(ZE1(e+))
となってる。
また出力は/トルクはそれぞれ
- 109PS/280Nm(ZE0)
- 109PS/254Nm(AZE0)
- 150Ps/320Nm(ZE1)
- 210PS/340Nm(ZE1(e+))
である。
なお初代、2代目ともにNISMO仕様が設定されている。数値上の出力スペックはベースと変わらないが、出力制御を変えることでパワー感を演出している。
操作機器系統
トヨタの2代目以降のプリウスのセレクトレバーと操作が類似しているが、レンジの入れ方やボタンの位置が異なる。
パーキングブレーキは初代前期と2代目が電動式で、初代後期型のみ足踏み式。
電動ブレーキの故障時の非常措置として、専用の車載工具で解除ができるようになっている。
その他
2011年、日産は当時まだ普及していなかった電気自動車の可能性を示すため、SUPER GTやFIA-GT1世界選手権に参戦していたエンジニアたちの力を結集し、EVレーシングカーの『LEAF NISMO RC』を開発した(RCは「レースコンペティション」の略)。
初代リーフがデザインモチーフだが、モノコックがフルカーボンの後輪駆動であるなど、中身は全くの別設計となっている。ただしモーター・バッテリー・インバーターといったEVとしての駆動に関わる部分は量産ベース(ZE0型)である。
車両重量は市販車より500kg以上軽い986kgで、バッテリーなどの重量物はリアミッドシップに集中させている。最大出力は107馬力、最大トルクは270Nmを発生。0-100km/hは6.85秒、最高速は150km/h、筑波サーキットのラップタイムは1分7秒16※と"レーシングカー"としては正直言って物足りないスペックで、当時のEV技術のレベルが見て取れるものであった。
運転特性はリアヘビーなせいでRRに近い挙動であり、回頭性は高いものの、オーバーステアが発生して滑り出すと抑えるのは困難だったという。
※ライトチューンの2012年式ZN6型トヨタ86が同程度のタイムである。
2011年ル・マン24時間レースやグッドウッドではデモンストレーション走行を行った。
2013年ル・マン24時間に参戦したZEOD RCは、このリーフRCの開発で得た知見を活用して開発されている。
2018年11月30日、日産のレース部門であるNISMOが新型のリーフRCを開発した。こちらは2代目リーフがデザインモチーフだが、4WDとなっているのが最大の違いである。重量は1,220kgとかなり重くなったが、最大出力/トルクも326馬力/640Nm(6~7リッターエンジン相当)と大幅に増大したため、0-100km/hは3.4秒、最高速は220km/hに進化。ドライバーが「危険すぎる」というほどのビッグトルクになり、袖ヶ浦フォレストレースウェイではコースレコードとなる1分8秒18を記録するなど、今度は"レーシングカー"を名乗っても差し支えないレベルに達している。
なおどちらも特定のレースのレギュレーションを想定した設計というわけではなく、本格的なレース参戦などは行われていない。
またいずれも発表時の開発者コメントで「ワンメイクレースを開催したい」としていたが、実現せずに終わっている。
初代・2代目といずれも6台ずつ製造され、日本や欧米各国でデモランでのPRやセーフティカーとしての運用がされた。