概要
トラックとバンがあり、550cc時代から登場したバンの豪華版はミニキャブブラボーの名がついていた。独立車種としてのブラボーは1999年に消滅したが、2011年に上級グレードの名称として復活。
また、軽自動車の商標の中では5番目に古い8代・58年(2024年現在、OEM版含む)の歴史がある。
乗用1BOXモデルはブラボー(ミニキャブ4代目・5代目に相当)、タウンボックス(6代目に相当)の名で販売されていた。後にタウンボックスは廃止され、グレード名称としてブラボーの名が復活する。
2011年には本車をベースにした商用電気自動車「ミニキャブMiEV」が発売、2023年に「ミニキャブEV」と車名を変更している。
このほか、日産自動車向けに6代目モデルが「クリッパー」、タウンボックスも「クリッパーリオ」として(どちらも2013年に供給終了)、2023年にEVモデルが「クリッパーEV」の名称でOEM供給されている(後述)。
前身は三菱・レオ(オート三輪)。三菱・360(のちのミニカ)と共に三菱自動車が初めて製造したオート三輪である三菱・みずしまの直流を汲み継いだブランドである。
なお軽トラに関しては同じ三菱自動車繋がりという事で「農道のランエボ」の異名で呼ばれる事もある(農道のポルシェや農道のフェラーリ(農道のNSX)と異なり機構的には繋がりは無いが)。
本稿では主に三菱自動車で生産された車種について述べる。
歴史
初代(トラック:1966年-1971年、バン:1968年-1976年)
1966年、新登場。当初はトラックのみの設定であった(一方開きと三方開きの二種類)。
1968年、バンを追加。
1971年、バンをマイナーチェンジ。同時に名称を「ミニキャブEL(エル)バン」に変更。「EL」の頭文字は不明。
1974年、「ミニキャブELバン」のまま、現行の黄色ナンバーに対応すべくナンバープレート架台を大型化し、番号灯を増設。
2代目(1971年-1976年)
1971年、トラックのみフルモデル チェンジ。名称は「ミニキャブEL(エル)」となる。ただし、バンは先代モデルをマイナーチェンジし、継続販売。ダンプモデルは「セルフドロッパー」を名乗る。
1972年、マイナーチェンジで水冷2サイクルエンジンに換装。「ミニキャブW」に名称変更。ヘッドランプが角型から丸型となる(同時にフロントの車種エンブレムがMinicabからWに変更された)。ヒーターが排気式から温水式に変更され、同時にディーラー(メーカー)オプションで吊り下げ式クーラーを装着できるようになった。「W」は水冷式である「Water-Coold」の頭文字。ステッカーは銀地に赤のスリーダイヤマーク、さらにその横に青地白抜き文字で「ミニキャブW」のロゴが付く。
1973年、マイナーチェンジ。フロントグリルのデザインを変更。給油キャップが鍵穴付きとなる。またスーパーデラックスはホイールキャップのデザインが変更され、後述の「ミニキャブ5」にも引き継がれる。ヘッドランプの直径が少し大きくなった。同時に「ミニキャブW」のステッカーデザインが変更され、黒地に銀のスリーダイヤマーク、さらに銀地に橙色文字で「ミニキャブW」のロゴというふうになった(フォントは変わらず)。
1974年、「ミニキャブW」のまま、現行の黄色ナンバーに対応すべくナンバープレート架台を大型化し、番号灯を増設。スーパーデラックスはシートベルトが2席とも3点式化され、安全性を向上。スタンダードはもともと2点式だが、ディーラー(メーカー)オプションで3点式へ変更することもできた。同時に「ミニキャブW」ステッカーの貼り付け位置が、それまでの後退灯上部から可倒式リアゲートパネル(正面から見て右下)に変更された。
3代目(1976年-1984年)
1976年、フルモデルチェンジ。エンジンをこれまでの2サイクル359cc(2G10)から4サイクル471cc(2G22)に換装し、名称を「ミニキャブ5(ファイブ)」に変更。この型のみ南米等海外にも「L100」と名を変えて輸出された(ちなみにL200はフォルテ、L300はデリカ)。
1977年、マイナーチェンジ。ボディサイズを拡大し、エンジンを546cc(2G23)にアップ。名称は「ミニキャブ・ワイド55」となる。
1979年、マイナーチェンジ。フロントグリルの形状変更が行われたほか、営農ミニキャブ(現・JAミニキャブ)を追加。
1981年、2度目のマイナーチェンジ。名称を「ミニキャブ」に戻す。同時にバンの上級仕様「エステート」と4WDを追加。
1982年、一部改良。フロントグリルに従来の"MM"に代わり、"MMC"のエンブレムが付く(日本仕様のみ)。
4代目(1984年-1991年)
1984年6月、フルモデルチェンジ。これまでの吊り下げ式クーラーに代わって、エアコンがオプション設定されるようになった。
1987年6月、マイナーチェンジ。エンジンはこれまでの546cc(G23B型(バルカンII))2気筒から548cc(3G81型(サイクロン))3気筒に変更。同時にスーパーチャージャーを追加。スーパーチャージャー搭載グレードに限りタコメーターが標準装備。
1988年2月、トラックの2WD車に5速MTとトリップメーターを標準装備したハイルーフモデルの「GL」を追加(ただしタイヤとホイールは10インチ)。これに伴い日本仕様にスリーダイヤのエンブレムが復活した。
1989年、バンの上級版「エステート」を「ミニキャブブラボー」に改名。
1990年2月、マイナーチェンジ。新規格化でエンジンを657ccに拡大(3G83型・サイクロン)。ただし、スーパーチャージャーは548cc・3G81型サイクロンエンジンのまま。
5代目(1991年-1999年)
1991年2月、フルモデルチェンジ。10インチホイール装着車を除き3気筒SOHC12バルブシングルキャブレターエンジン(3G83型)および12インチフロントディスクブレーキを搭載する。
1992年1月、一部改良。電気類の防水の改善。
1993年1月、一部改良。10インチタイヤ&10インチホイール装着車を除き全て5速MT化。
1994年2月、最初のマイナーチェンジ。ヘッドランプがSAE規格の角型2灯式に。計器類に関しては最上級グレード(トラック・TL / バン・CL)専用装備のトリップメーターが廃止され、それ以降全グレードがオドメーターのみの装備となる。
1996年1月、2度目のマイナーチェンジ。ヘッドランプがブラボーの後期型と共通の異形レンズのハロゲンバルブ式に(ただしパネルバンを除く)。トラック、バンに関わらず最上級グレードには3気筒SOHC12バルブECIマルチエンジンが搭載され、トラックの4WD車全てに防水アンダーカバーが標準装備される。
1996年5月、トラックおよびバンにそれぞれ誕生30周年を記念した特別仕様車「V30 SPECIAL EDITION」を発売。
1997年12月、一部改良。ダンプ、パネルバンを除き全て3気筒SOHC12バルブECIマルチエンジンおよび異形ヘッドランプ化。これに伴い2WD全車が12インチタイヤ&12インチホイールおよびフロントディスクブレーキ化された。
1998年2月、トラック、およびバンの各2WD車に12インチタイヤ&12インチホイールとフロントディスクブレーキ等を標準装備した廉価グレードの「V」を発売。ただし組み合わされるエンジン、およびトランスミッションは3気筒SOHC6バルブシングルキャブレター&4速MTに格下げとなり、更にヘッドランプがSAE規格の角型2灯式に格下げとなる。
名古屋鉄道では、この型のミニキャブトラックを鉄道用車輪に改造した保線用モーターカーが使われている。
6代目(ガソリンモデル 1999年-2013年)
1999年2月、フルモデルチェンジ。前軸を前進させクラッシャブルゾーンを確保した形状となるが、エンジン搭載位置は運転席下のため構造上はセミキャブオーバーとなる。軽トラック及び軽1BOX、NA車初の4ATがラインナップされた。ミニキャブバンをベースに乗用グレードのタウンボックスが登場した。テールランプはトラックが平行四辺形であるのに対し、バンは丸型2灯式となっており、さらにブレーキランプとポジションランプが別々に点滅する。
台湾ではホイールベースを延長し、約1200ccの4気筒SOHC16バルブエンジン(4A32型・76馬力)を搭載したモデルが中華菱利の名で販売されていた。
2000年12月、大規模なマイナーチェンジを敢行。特にトラックはキャビン内部の形状が若干見直されている。
2003年8月、日産自動車へクリッパーとしてOEM供給が開始される。
2004年10月、バンに運転席、助手席エアバッグ標準装備。また、トラックの4ATモデル(TL)がラインナップから外れる。
2005年12月、一部改良。全グレードにトリップメーターやヘッドランプレベライザー等を標準装備。日産クリッパーも同時に一部改良。
2006年5月30日、誕生40周年を記念した特別仕様車を発売。
2006年12月、一部改良。サイドミラーをピボットタイプ(縦長)に統一、40周年記念特別仕様車の装備をグレード化などの仕様変更。また、トラックにリブラグタイヤとリヤ強化サスペンションなどを採用した農業仕様「みのり」を追加する。
2007年10月、燃料としてガソリンと圧縮天然ガス (CNG) を併用できる特装車「ミニキャブ バイフューエル」を発売。ガソリンとCNGの併用で840km(公称値)の航続距離を確保できるとしている。
2007年12月、マイナーチェンジ。フロントグリルのデザインを一新したほか、インストパネルを2トーンカラーに変更、後席に3点式ELRシートベルトを追加、液晶トリップメーターがA・B2区間対応になるなどの改良を施した。また、追加装備「ラグジュアリーパッケージ」の内容を変更して「エクシードパッケージ」に変更した。
2008年12月、一部改良。一部グレードを除いてハイマウントストップランプやエアコン、パワステの標準装備化、標準装備オーディオの変更を実施。
2009年10月、パーソナルユースにも向く専用ボディカラー「ブラックマイカ」を採用すると共に、メッキフロントグリル、光輝タイプヘッドライトハウジングを特別装備し、見栄えを向上させた特別仕様車「黒トラ」「黒バン」発売。「黒トラ」は「Vタイプ(エアコン付)」、「黒バン」は「CD(ハイルーフ)」をそれぞれベースにし、AM/FMラジオ(デジタル時計付・スピーカー内蔵)を標準装備化、「黒トラ」にはさらにパワーステアリングも標準装備化された。
2009年12月、一部改良(2010年1月販売開始)。フロントグリルデザインをボディ同色に変更(トラックの「エクシードパッケージ」はメッキ仕様、バンは「CD」・「CJ」が対象)。インパネとメーター、ステアリングホイール(トラックは運転席SRSエアバッグ装備車が対象)を新デザインに変更すると共に、メーターに半ドア警告灯を追加、インパネ両側にカップホルダーを新設し、ラジオをAMのみからAM/FMに変更した(バンは「CS」・「CD」が対象)。トラックでは「パネルバン」にハイマウントストップランプとラゲッジルームランプを、「楽床ダンプ」にパワーステアリングをそれぞれ追加した。「Vタイプエアコン付車」は廃止となり、マニュアルエアコンはパワーステアリングとのセットオプションとなった。バンでは一部グレードにオプションカラーの「ミスティックバイオレッドパール」を追加した。なお、特別仕様車の「黒バン」・「黒トラ」は販売を継続する。 また、ミニキャブバンとミニキャブトラックに燃料をLPガスを使用する特装車「ミニキャブMPI-LPG」を設定。LPGだけを使用する方式ながら約500kmの航続距離を持つと同時に、LPG車初の75%減超低公害車☆☆☆☆をクリアする。(2012年現在も市販中)
2010年8月、一部改良。エンジンのフリクション低減等の改良を行い、燃費を向上。バンの2WD車は「平成22年度燃費基準+10%」を達成した。また、トラックの運転席・助手席のシートバック側面部とバンの運転席・助手席・後席の表面をそれぞれニットに変更した。さらに、5年目以降の車検入庫時に保証延長点検(24ヶ月定期点検相当)を受けることを条件に適用される「最長10年10万km特別保証延長」の対象車種となった。同時にトラック「VX-SE」をベースに、クールシルバーメタリックの専用ボディカラー、光輝タイプのヘッドランプ、メッキフロントグリル、ボディ同色ドアミラーを装備した特別仕様車「銀トラ」を、バン「CDハイルーフ」およびダブルキャブ「CL」をベースに、エアロパーツ等を装備した特別仕様車「ROAR Complete」をそれぞれ発売。これと引き換えに特別仕様車の「黒バン」・「黒トラ」はそれぞれ廃止された。
2011年11月、一部改良。全グレードでフロント周り・リア周りを刷新するとともに、フロアコンソールに備えられていたカップホルダーが廃止され、さまざまな用途に対応するシンプルなボックス形状に変更された。バンでは、ハイルーフ車はリアゲートもデザインが変更され、ハイマウントストップランプをLED化。また、「CL」ではメッキフロントグリル、ボディカラー同色ドアミラーを採用し、前席ヘッドレストを大型化(ヘッドレストの大型化は「CD」「CL」、トラックにも適用)。ボディカラーには新色の「チタニウムグレーメタリック」を追加した。なお、「CD」・「CL」は従来からの装備はそのままに車両本体価格を引き下げたため、「CS」を廃止した。日産向けのOEM車クリッパーは、「NV100クリッパー」(バン)「NT100クリッパー」(トラック)に車名が変更された。
そして、この改良を機にタウンボックス及び日産向けのOEM車クリッパーリオは廃止され代替機種として、乗用・レジャー用の充実グレード「ブラボー」を追加。本グレードでは「CL」と同じメッキフロントグリルとボディカラー同色ドアミラーに加え、ボディカラー同色ドアハンドル、フルホイールカバーを装備してスタイリッシュな外観とするとともに、AM/FMラジオ付CDプレーヤー+2スピーカー、タコメーター、ABS、UVカットガラス(フロントドア)などを装備し機能も充実。シートは生地をファブリック素材に変更し、座面に厚みを持たせて座り心地を高めたヘッドレスト別体式となり、後席はセパレートシート化。さらに、タウンボックスにもラインナップされていた「3気筒SOHC12バルブ・インタークーラーターボエンジン」車も追加され、ステアリングホイールやセンターパネルにシルバーのアクセントを加え、外観にはマフラーカッターがついた。
2013年にガソリン車の自社生産(及び日産へのOEM供給)を終了し、日産共々スズキからOEM供給を受けることとなり、エブリイ及びキャリイの姉妹車となった(同時に乗用仕様の「タウンボックス」(日産向けは「NV100クリッパーリオ」が復活した)。
ミニキャブMiEV/EV(2011年-)
6代目のバン「CD」をベースに開発された電気自動車。i-MiEVの技術を活用しており、2011年12月8日に販売を開始した。搭載されるバッテリーは一充電あたりの走行距離が異なる2種類が設定され、10.5kWh(約100km)と16.0kWh(約150km)が用意される。ガソリン車に比べて車両重量が200kg重くなり、スペアタイヤは車内に移設、運転席の計器はi-MiEVに準じた形状になる。
2010年10月、プロトタイプ車をヤマト運輸に貸与して配送車としての実証実験を開始。
2011年4月、ミニキャブMiEVの予約受付を開始。
2011年5月、人とくるまのテクノロジー展に出展。実証運行に参加したヤマト運輸が100台を発注。[4]
2011年11月、公式発表(12月8日販売開始)。グレード体系は「CD 10.5kWh」と「CD 16.0kWh」の2グレードで、いずれのグレードにも、2シーターと4シーターが設定される。また、「CD 10.5kWh」はハイルーフのみだが、「CD 16.0kWh」には標準ルーフとハイルーフが設定される(「CD 16.0kWh」は乗員人数で価格が異なるが、ルーフタイプについては標準ルーフ・ハイルーフともに同一価格である)。
2012年12月にMiEVトラックを発表(2013年1月17日に販売開始)
2016年、燃費偽装の発覚で一時発売が中止となった。
2017年、バンの標準ルーフモデルが廃止となり、全車ハイルーフとなる。さらには販売不振でトラックが販売終了となった。
2020年にグレード体系の見直しを図り、全車16.0kwhのみの2シーターと4シーターの2グレード展開となる。
2021年には一部法人向けを除き販売を中断していた(一般向けは販売終了)…が、2022年に一部改良したうえで一般向け販売を再開した。
2023年11月には大幅なマイナーチェンジを敢行し「ミニキャブEV」と車名を変更。MiEVの名称を継承しなかった理由は「MiEV=EV」が浸透しなかったことと「eKクロスEV」の登場によるもの。内外装については大きな変化がないが、フロントバンパーの変更とスペアタイヤをタイヤ応急修理セット変更した点にとどまり(スペアタイヤはメーカーオプション扱い)、バッテリー容量をこれまでの16kwhから20kWhに増大し、モーターとインバーターを一体化し航続距離が向上した新世代のEVシステム「YA1」型を搭載し、新たに自動ブレーキ機能やオートマチックハイビーム等の「e-Assist」が装備された。
更に2024年1月には日産から「クリッパーEV」(NV100はつかない)として発売を発表(販売は2月より)、約10年ぶりに日産へのOEM供給を再開することとなり、ミニキャブベースのクリッパーが復活することとなった。そのクリッパーEVにはミニキャブEVにはないスライドドア・リアクォーターの窓が4シーターと同じガラスの2シーターモデルが設定されている(ミニキャブEVの2シーターモデルはスライドドア・リヤクオーターの窓は鋼板パネルとなり、クリッパーEVでも同じグレードがルートバンとして設定されている)。ちなみに、クリッパーEV発売から間もなくエブリイ・キャリイベースのガソリンモデルも仕様変更に伴い、車名が「クリッパー(バン・トラック)」へと回帰することとなった。
車名の由来
車は小さいが、広い荷台をもつキャブオーバーという意味で命名。
関連動画
6代目「黒トラ」タイアップ曲「黒トラ魂」
関連項目
高海志満(ラブライブ!サンシャイン!!) - 第2期3話で、6代目トラック(U61T)の日産向けモデルであるU71Tクリッパー(※)中期型に乗っている描写がある。
※日産向けOEMモデルは数字2桁のうち1つ目が繰り上がるのが通例である。
ダイハツ・ハイゼット - ミニキャブ、クリッパーの競合車種。なお6代目バン後期のテールランプは10代目カーゴ(S321V・331V系)のテールランプが使われている。